AppleがiOS 17.4のベータ版でPWAのサポートを削除していることが明らかに

Appleは長年にわたり、ウェブサイトをiPhoneのホーム画面に追加することでウェブアプリとして使用できる「プログレッシブウェブアプリ」(PWA)と呼ばれる機能を導入していました。しかし、iOS 17.4のベータ版において、PWAのサポートが削除されていることが報告されています。
Did Apple just break Web Apps in iOS 17.4 Beta (EU)? - Open Web Advocacy
https://open-web-advocacy.org/blog/did-apple-just-break-web-apps-in-ios17.4-beta-eu/

iOS 17.4 seems to remove web app support in the EU
https://9to5mac.com/2024/02/08/ios-17-4-web-app-eu/
iOS 17.4 Nerfs Web Apps in the EU - MacRumors
https://www.macrumors.com/2024/02/08/ios-17-4-nerfs-web-apps-in-the-eu/
PWAとは、モバイルアプリでは一般的な機能である「ホーム画面へのアイコンの表示」や「オフラインでの利用」「プッシュ通知の送信」をウェブアプリでも行えるようにする技術。ウェブアプリはApp Storeなどのアプリストアを介さずにブラウザ経由で配布することができるのが特徴です。Appleでは2008年にPWAサポートを開始しています。
Appleはこれまで、iOS 16.4において、PWAがアイコンバッジ付きのプッシュ通知を送信できるようにするなど、ウェブアプリに対するサポートを強化してきました。
しかし、2024年2月に公開されたiOS 17.4のベータ版において、PWAのサポートが削除されていることが報告されています。
開発者のマキシミリアーノ・フィルトマン氏によると、以前のバージョンではApple純正ブラウザのSafariを用いることでPWAをインストールすることが可能でしたが、iOS 17.4のベータ版では、どのブラウザにもPWAをインストールすることが不可能になっているとのこと。フィルトマン氏は「PWAは完全に無効化されているようです」と述べています。
???? Finally, iOS treats all browsers equally when it comes to PWAs. Previously, only Safari was able to install and run PWA apps. With iOS 17.4 beta in the EU, no browser can install PWA apps, even Safari. It seems PWAs have been disabled entirely.
Oh yes, when you set a… pic.twitter.com/E3Ej9juAEO— Mysk ???????????????? (@mysk_co) February 1, 2024

フィルトマン氏は当初、PWAサポートの無効化についてバグだと考えていました。しかし、その後公開されたiOS 17.4のベータ2において、「PWAは今後デフォルトのブラウザで開かれるようになります」とのダイアログが表示されたことから、PWAサポートの無効化がバグではないことが明らかになったとしています。
It seems it wasn’t a bug ????
????Apple may remove PWA support for European users, a feature launched by Steve Jobs in 2008.
????It also means no Web Push.
⚠️Installed PWAs may lose their storage and will render a dialog saying “it will open from your default browser from now on” https://t.co/HySAd4lOJC— Maximiliano Firtman (@firt) February 8, 2024

PWAサポートの削除によって、事実上、PWAは単なるウェブサイトへのショートカットとして扱われるようになるほか、これまでPWAに保存した全てのデータがiOSのアップデートに伴い自動的に削除され、ウェブサイトがユーザーにプッシュ通知を送信することができなくなります。
なお、これらの変更は全てヨーロッパのユーザーにのみ適用されています。その理由について複数の海外メディアが「ヨーロッパのデジタル市場法(DMA)が要因」と推測しています。
AppleはDMAによるゲートキーパー指名を受けたことから、2024年1月にEU圏におけるApp Store外でのiOSアプリを行う「サイドローディング」を認めています。
Appleがデジタル市場法を受けてEUでのサイドローディングとApp Store外決済を認めるも厳しい条件や新しい手数料が追加される - GIGAZINE

また、DMAで定められた要件の1つに「開発者に対し、独自のエンジンを用いてウェブブラウザを作成できるようにしなければならない」という規定があります。一方で記事作成時点でiOSで利用可能な全てのウェブブラウザは、Appleのレンダリングエンジン「WebKit」を利用したもののみです。
その結果、iOS 17.4では、EU圏内において代替エンジンを用いたウェブブラウザのリリースを開発者に許可するだけでなく、ユーザーに対しデフォルトのウェブブラウザをどれにするか尋ねることができるようになりました。しかし、PWAもSafariとWebKitに基づいて開発されていることから、Appleでは「WebKitへの依存が進む」との批判を避けるために、EU圏内においてPWAの削除に踏み切ったと考えられています。

なお、海外メディアのMacRumorsによると、iOS 17.4はSIMカードに記録されたキャリア情報を利用して、EUのユーザーのみにPWA削除を行っている兆候が見られるとのこと。そのため、EU以外の地域でのPWAは影響を受けない見込みです。
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