HPのプリンターがサードパーティーの非純正インクをファームウェアアップデートでブロックした件で訴訟が提起される

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by Justin Baeder
インクジェットプリンターを使う人にとって悩みの種となっているのが、「純正インクの価格が高すぎる」という点であり、コストを抑えるためにサードパーティーのインクを使っている人も多いはず。そんなサードパーティーの非純正インクを、HPがプリンターのファームウェアアップデートでブロックした件について、ファームウェアアップデートの無効化と損害賠償を求める(PDFファイル)訴訟が提起されました。
HP sued (again) for blocking third-party ink from printers, accused of monopoly | Ars Technica
https://arstechnica.com/gadgets/2024/01/hp-sued-again-for-blocking-third-party-ink-from-printers-accused-of-monopoly/

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2022年末から2023年初頭にかけて、「HPのプリンターがファームウェアアップデートされ、『非純正のインクは使えない』というメッセージが表示されて使えなくなった」という報告が相次ぎました。
HPのプリンターがファームウェアアップデートにより非正規インクをブロック、回避方法は? - GIGAZINE

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実際にユーザーの画面に表示されたメッセージの一例が以下。HPのプリンターはインクカートリッジのチップで純正品か非純正品かを識別しており、純正品のインクでないと動作しないとのこと。
HP have updated their printers to outright ban ‘non-HP’ ink! They no longer shows the “can’t guarantee quality” message, but instead cancels your print completely until you inset a HP ink cartridge. After contacting HP, they advised “this is due to the recent ‘update’ of all printers”
byu/grhhull inassholedesign
HPのプリンターが非純正のインクカートリッジを検出するシステムは「Dynamic Security(ダイナミックセキュリティ)」と呼ばれ、HPは「顧客体験の質を守り、印刷システムの完全性を維持し、知的財産を保護するために採用している」と説明しています。ところが、純正のインクカートリッジは非純正品よりも大幅に高額なため、ユーザーからは不満の声が上がっていました。
そして2023年1月5日、「ダイナミックセキュリティはHPがユーザーを囲い込み、交換用インクカートリッジの『独占』を進めるものだ」として、11人の原告による訴訟がアメリカ・イリノイ州北部地区の連邦地方裁判所に提出されました。訴訟では、HPブランド以外のインク使用を妨げるファームウェアのアップデートを無効化することや、500万ドル(約7億3000万円)の損害賠償と陪審員による裁判が要求されています。
原告らは、HPがプリンターの機能に影響を及ぼすファームウェアアップデートを配信したのは誤りであり、「アップデートを受け入れるとプリンターの機能が損なわれる可能性がある」とユーザーに通知しなかったと主張。「HPの交換用インクカートリッジ購入を避けるために新たなプリンターを購入することは、現実的あるいは合理的ではありません。そのため、消費者はいったんプリンターを購入すると、ダイナミックセキュリティのファームウェアアップデートにより、HPのインクを購入するように強制されるのです」と述べています。
HPはインクカートリッジのサブスクリプションプランである「Instant Ink」を展開しており、プリンターの購入者から継続的な収益を得るモデルを構築しています。また、訴訟ではHPがダイナミックセキュリティを展開したのと同じ2022年後半から2023年前半にかけて、インクの価格が上昇していたことも指摘されています。実際にテクノロジー系メディアのArs Technicaが価格調査ツールのCamelcamelcamelを使用して調べたところ、確かに2022年後半から2023年前半にかけて一部のHP製インクの価格が上昇していたとのことです。
原告側弁護士のペギー・ウェッジワース氏はArs Technicaに対し、「HPは連邦および州の独占禁止法に違反して、交換用インクカートリッジのアフターマーケットを事実上独占しています。これにより、HPプリンターの所有者は純正ブランドのインクのみを高値で購入し、非純正品の交換用インクカートリッジのメリットを失うことを余儀なくされました」と主張しました。

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社会のデジタル化が進む中で印刷のニーズは減少していますが、HPにとってインクカートリッジは依然として重要なビジネスです。HPは2023年度の会計報告で、総売上高の32%、non-GAAPベースの営業利益15億ドル(約2200億円)のうち57%を印刷事業が占めていると報告しています。HPは他の消費者向けサブスクリプションサービスと共に、Instant Inkを主要な成長分野に挙げています。
その一方で、プリンターのファームウェアアップデートを通じて純正インクカートリッジの使用を強制するHPのシステムは、2016年にダイナミックセキュリティが登場して以降、たびたび訴訟の対象となってきました。たとえば、2019年にはダイナミックセキュリティを巡る訴訟で150万ドル(当時のレートで約1億6000万円)を支払って和解しているほか、2022年にはヨーロッパの消費者団体が起こした訴訟で135万ドル(当時のレートで約2億1000万円)の和解金支払いに応じました。
また、「HP製の複合機においてインクが少なくなると、インクを使わない書類のスキャンやファックスすらできなくなることをユーザーに明示しないことは不当だ」という訴訟にもHPは直面しています。
HPが「プリンターがインク切れを起こすとスキャンやファックス機能まで使えなくなるのは不当」との訴訟に直面 - GIGAZINE

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