2024年の首位奪還を目指すIntelが社運を賭けている「2つの最先端技術」とは?

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先進的なチップ製造でTSMCとSamsungに後れを取っているIntelは、2024年末にリリース予定のデスクトップおよびラップトップ向けチップ「Arrow Lake」で大胆な巻き返しを狙っています。Intelの先端チップを支える次期プロセスノード「Intel 20A」に投入されると見られている2つの革新的技術「RibbonFET」と「PowerVia」について、アメリカの電気電子学会の技術誌・IEEE Spectrumが解説しました。
In 2024, Intel Hopes to Leapfrog Its Chipmaking Competitors - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/intel-20a
Intelは長年にわたり半導体産業を主導してきたチップ製造の雄ですが、2018年に10nmプロセスノードへの移行の後れが表面化してチップ製造計画に狂いが生じたのを皮切りに、2020年には7nmプロセスノードでつまずいて「Intel 4」としての再出発を余儀なくされるなど、試練が続いています。
挽回を狙うIntelが力を注いでいるのが、現行の「FinFET」に取って代わるトランジスタ・アーキテクチャの「RibbonFET」です。従来のFinFET技術は、チャネルとゲートが接する面を1面から3面に増やすことで低消費電力と論理回路密度の向上を実現してきましたが、微細化に伴って電流制御能力の限界に達しつつあります。

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一方、RibbonFETではゲートが完全にチャネルを包むため、制御性が大幅に向上します。Intelによると、RibbonFETがIntel 20Aに導入された場合、エネルギー効率が最大15%改善するとのこと。次期プロセスノードであるIntel 20Aの「A」はオングストロームから取られており、従来の命名規則における「nm(ナノメートル)」のような特定の測定値に縛られないことを意味しています。

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IEEE Spectrumがさらに劇的な技術と位置づけているのが、「PowerVia」と呼ばれる新機軸の電力供給方式です。PowerViaは、一般的には裏面電力供給技術と呼ばれるもので、その名前の通り基板の裏面に電源配線を通す技術に分類されます。従来の基板上では、片面のみに配置された電源配線と信号配線がリソースを奪い合っていましたが、これを分離することで性能は6%向上するとのこと。
Intelは、片面に必要な要素を詰め込んだ従来のウエハーをピザになぞらえて、「もうピザ作りはしない」と宣言しています。
Intelが「ムーアの法則」を再出発させる裏面電力供給技術「PowerVia」のテストに成功、Intelは「ライバルの2年先を行く」「ピザ作りをやめる」とアピール - GIGAZINE

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RibbonFETとPowerViaを小出しにしてこれ以上後れを取ることを避けるため、この2つの技術は同時に投入される予定です。通常、こうした技術の開発計画は10年単位で進められますが、RibbonFETとPowerViaの実現が近づくにつれて、Intelは2つのタイムラインが交差することに気づいたとのこと。そこで、一方の技術がもう一方の技術を待つ時間が生まれるのを避けるため、Intelは2つの技術を車の両輪と位置づけることを決定しました。
Intelは2024年前半にはIntel 20Aの製造準備が整うとしています。対するTSMCは、2025年初頭に2nmプロセスによる次期N2ナノシートの生産を開始しつつ、2026年までに裏面電力供給技術を搭載するN2Pチップの生産に着手する予定です。一方、Samsungは2022年に既に3nmノードのナノシートトランジスタを導入していますが、裏面電力供給技術の実装時期については明らかにしていません。
半導体技術に特化した技術コンサルタント企業・TechInsightsのダン・ハッチソン氏は、すべての半導体企業が裏面電力供給技術の採用を目指すと見ており、もしIntelが最初にそれを実現させれば再び半導体分野で首位に返り咲くことも可能だと考えています。
ハッチソン氏は「かつてはIntelが保守的な企業だった一方、TSMCは積極的にリスクを取ってはしばしば狙いを外す企業でした。今は状況が逆転しています。一度に2つの大きな技術革新を行おうとするのは非常にリスキーな動きであり、過去にはそれで大失敗が起きたこともあります」と話しました。

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