テスラのオートパイロット搭載車両がすべてリコール対象に、リコール対象の車両は200万台超に

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現地時間の2023年12月12日、アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)が電気自動車メーカー・テスラのオートパイロット機能搭載車両がリコール対象となったことを発表しました。NHTSAはオートパイロットに対して安全面の懸念を指摘し、テスラはこれを認めた形となります。なお、リコール対象となる車両は200万台超にもおよぶ模様です。
Part 573 Safety Recall Report
(PDFファイル)https://static.nhtsa.gov/odi/rcl/2023/RCLRPT-23V838-8276.PDF

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Tesla recalls every car with Autopilot as feds say it’s too easily misused | Ars Technica
https://arstechnica.com/cars/2023/12/more-than-2-million-teslas-are-being-recalled-due-to-unsafe-autopilot/

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Tesla recalls nearly all vehicles sold in US to update software | AP News
https://apnews.com/article/tesla-autopilot-recall-driver-monitoring-system-8060508627a34e6af889feca46eb3002
テスラのオートパイロットは、周囲の交通状況に応じて車両の速度や車線内のハンドル操作をアシストするという機能です。オートパイロット機能を使っての走行中、車両が「車道に停まっている緊急車両」に衝突するなどの事故が相次いだため、NHTSAは2021年8月からテスラ車を対象とした調査を開始していました。
テスラの「オートパイロット機能」の正式調査をアメリカ政府機関が開始、停車中の緊急車両に衝突する事故が相次いだ件で - GIGAZINE

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NHTSAは先進運転支援システム(ADAS)の安全性またはその欠点に関するデータを発表しており、このデータによると2021年7月から2022年5月15日までに報告されたADAS搭載車両による衝突事故367件のうち、およそ4分の3(273件)がテスラ車によるものであったことが明らかになっています。
自動運転車の交通事故件数ナンバー1はテスラ、2位がホンダで3位はスバル - GIGAZINE

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今回リコール対象となったのは、オートパイロット機能の中のオートステアリングコンポーネントです。テスラは一時、オートステアリングによって「衝突事故が40%減少した」と主張していましたが、この統計データを第三者機関が分析したところ、完全に誤りであったことが明らかになっています。その後もNHTSAの欠陥調査局がオートステアリングについて調査を続けた結果、オートステアリングの利用者の「注意不足」が明らかになっています。欠陥調査局はテスラのオートパイロットについて「予測可能な悪用につながる」と指摘しており、テスラはこれを認めてリコールを行うこととなりました。
なお、テスラのオートパイロット機能を使うとドライバーの脇見運転が増えることが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究でも明らかになっています。
テスラの「オートパイロット」をオンにすると脇見運転はどれくらい増えるのか? - GIGAZINE

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オートパイロットに関する特に大きな問題は、自動車メーカーからのメッセージが混在しているという点です。テスラのウェブサイト上では「現在、オートパイロット機能はドライバーの積極的な監視が必要であり、車両を自動運転するためのものではない」と記載されていますが、テスラのイーロン・マスクCEOはメディアのインタビューの中で「オートパイロット機能は自動運転である」といった趣旨の発言を繰り返し行っています。また、テスラのウェブサイト上にはオートパイロット機能が自動運転できると主張する動画が掲載されています。また、マスク氏がオートパイロット機能を使って監視なしで車両を自動運転しているという指摘もあるそうです。
テスラがオートパイロット機能を発表して以降、ゼネラルモーターズは「Super Cruise」、フォードは「Bluecruise」、BMWは「Driving Assistance Professional」という類似機能をリリースし、自動車メーカーも自動運転システム市場に参入しています。しかし、これらのメーカーの自動運転システムはより厳密に制御された運用設計領域を持ち合わせており、高速道路でのみ利用可能になるようアクセス制限が課されており、車両がアクセス許可領域にいるか否かをGPSで判断したり、カメラを用いてドライバーの視線を追跡して「ドライバーが前方の道路を注視しているか否か」を認識したりするそうです。
これに対して、テスラはステアリングコラムにトルクセンサーを搭載することで「ドライバーがステアリングを握っているか」を認識するのみでした。そのため、ステアリングにおもりをぶら下げるだけで簡単にシステムをだますことが可能です。また、テスラはバックミラーに組み込まれた広角カメラを使ってドライバーが運転席に座っているかどうかを認識していると主張していますが、これは巨大なクマのぬいぐるみで簡単にだませることが明らかになっています。
We taught a bear how to drive a Tesla! ???????????? ???? pic.twitter.com/xp2b5B6vrp— Dan O'Dowd (@RealDanODowd) August 3, 2023

オートパイロット機能の安全性の欠如は、ソフトウェアアップデートでの修正が可能とみられています。それでもリコールでユーザーに注意を促すことが重要であり、NHTSAのリコールプロセスにとってソフトウェアアップデートで修正できるか否かは重要ではないそうです。
なお、NHTSAはテスラの提案する修正案が実際に問題解決につながるか否かを今後も調査していくそうです。ただし、これには「ステアリングホイールから手を離さずにユーザーが車道に注意を払うようになること」なども含まれます。

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