ヤマハ、ブランド発信拠点となる「Yamaha Sound Crossing Shibuya」を11月15日にオープン

ヤマハは、2024年7月にまちびらきが行われた東京都渋谷区の大規模複合施設「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」内のSAKURAサイドに、若者に向けたブランド発信拠点であり研究開発のサテライト施設としても活用することがアナウンスされている「Yamaha Sound Crossing Shibuya」(ヤマハサウンドクロッシング渋谷、以下YSC渋谷)を2024年11月15日にオープンする。それに先立ち、プレス向けの内覧会が実施された。本稿ではその模様をお届けする。

YSC渋谷は、ミュージシャンやクリエイターと共創し、音楽のトレンド創出やイノベーションを推進するのを目的に設営される。一般客が自由に利用できるブランド体験施設「LAB(ラボ)」(SAKURAサイド3階)と、研究開発のサテライト施設「LOUNGE(ラウンジ)」(SAKURAタワー8階、一般非公開)の二つで構成されており、アーティストやクリエイターに向けた情報発信を行うとともに、日本の音楽を牽引するミュージシャンなどと連携する開発拠点と一般向けの体験型スペースを設けることで、10代から20代の若者に向けたブランディングを強化していく。

YSC渋谷は、ヤマハが1975年に開設したスタジオ「エピキュラス」のほぼ跡地に設営されている。「エピキュラス」は1995年に目黒へと移転。跡地は「エレクトーンシティ渋谷」として改装され、エレクトーンの聖地として活用された。エレクトーンシティ渋谷には音声合成技術「ボーカロイド」の開発拠点を置いていたこともあったそうだ。YSC渋谷のコンセプトとして“Sound Crossing”を掲げているが、これには「偶発的なイノベーションが起こる、音・音楽を通したつながりが生まれる場所」という意味を持たせている。内覧会では、コーポレート・マーケティング部部長である吉川剛志氏から、YSC渋谷は店舗でもショールームでもなく、ブランド発信拠点であるという説明があった。首都編では銀座と横浜みなとみらいにもブランド発信拠点を設けているが、YSC渋谷は、渋谷の象徴であるスクランブル交差点のように、音と音、技術と技術、人と人、さまざまな要素が交じり合って境界を超え、新しい何かが生まれる場所になることを願い、この言葉をコンセプトと施設名に掲げたととのことで、先進性にフォーカスし、最新トレンドを取り込み若年層にアピールしていくという。

SAKURAサイド3階の「LAB」は、音楽を表現・発信することに関心を持つ若者や、アマチュアミュージシャンなどの一般客を対象に、テクノロジーに特化した音楽の現在と未来を発信するフロアとなっている。最新楽器や機材、技術が体験できるほか、ワークショップや、8階に設けた「LOUNGE」や自治体などとのコラボ企画などを通じて、来館者の創造性やアイデアを刺激し、新しい音楽が生み出される場所になることを目指していく。また、来館者とのコミュニケーションを通じたマーケティング活動も展開していくとのことだ。

「LAB」は「EXPERIENCE(エクスペリエンス)」「STUDIO(スタジオ)」「STAGE(ステージ)」「CAFE(カフェ)」の4つのエリアで構成されている。「EXPERIENCE」はバンドやステージパフォーマンス向けの楽器を中心とした、最新楽器や音響機器、配信機器を展示し、体験機会を提供し、音楽制作機器や配信機器についてのワークショップも定期的に開催する予定となっている。楽器・音楽制作に知悉したスタッフが常駐し、気軽に相談に応じてくれる。「STUDIO」は配信機器などの設備を揃え、ヤマハの先端テクノロジーを用いて、楽器・音楽・音響情報を世界に向けてインタラクティブに発信するスペースとなっている。内覧会では、生演奏をデジタル技術で再現する「Real Sound Viewing」のデモが行われた。「STAGE」は楽器や音響機器などを完備した、ライブやイベントを開催するスペース。フレキシブルな会場づくりが可能な開閉式で、小規模なライブのほかにも、「EXPERIENCE」エリアや後述の「CAFE」と連結して使用することもできる。内覧会では、バイオリンとドラムのデュオ“Resonance”によるパフォーマンスが披露された。「CAFE」では、スペシャルティコーヒー専門店「Scrop COFFEE ROASTERS」が監修した「渋谷×音楽」をテーマとしたオリジナルコーヒーや、創業100年を誇る佐々木製茶(静岡県掛川市)による深蒸し茶を使用した抹茶ラテやほうじ茶ラテなどのオリジナルメニューを提供する。また、YSC渋谷限定のクラフトビールや「葡萄ミルクティーINゼリー」なども用意。さらに、飲食をしながらライブや配信動画を楽しめるモニターも配備する。

先端技術の体験や実験を行う研究開発のサテライト施設「LOUNGE」は一般非公開となっているが、ミュージシャンやアーティスト、クリエイターらを招いてリレーションを深め、共創活動を推進するほか、新製品のエバリュエーションやプレゼンテーション、新製品発表会など多目的に活用される。フロア内は「MUSICIAN'S SALON」をテーマに、創造性を刺激するような、遊びや楽しさのある空間設計が成されている。IT企業やスタートアップ企業が集まり、デジタルイノベーションの震源地でもある渋谷の立地を生かし、異業種企業やメディアとの交流拠点としても活用し、浜松市の本社や横浜市に開設した「首都圏R&D拠点」と連携することで、音楽や楽器の研究開発を促進していく。研究開発統括部先進技術開発部の新価値グループリーダーである森隆志氏は、価値の源泉が機能や性能から体験へとシフトしていっていることを指摘し、人と技術が一緒になって新たなクリエイティビティを生み出していきたいと語っていた。続いて登壇したヤマハミュージックジャパンの代表取締役社長である松岡祐治氏は、渋谷が音楽にとって重要な街であることを改めて強調し、プロダクトマーケティングを推進し、アーティストとのリレーションをより一層強めていくと述べた。

ラウンジは天井に施した音叉マークがゲストを迎えてくれるリラックス空間。音楽や楽器の過去・現在・未来を感じて創造のヒントにしてもらえるように、名機と評されている歴代の製品や、最新の製品・技術を展示している。ここにはUKの楽曲"ALASKA"のイントロで知られるアナログシンセサイザー「CS-80」や、坂本龍一が「LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999」で使用した、1999年にデザインされた「Opera Piano」などが置かれていた。「プロアーティストの仕事部屋」をイメージした応接室は、音出しをしながら、各部屋をつないで会議やレコーディング、ラフセッションができる「DANTE」によるデジタルネットワークを整備。防音室は、商品企画開発や次世代素材・機能のエバリュエーションなどの研究開発に活用される。内覧会当日は、DANTEネットワークを利用して構築されたスタジオでレコーディングからTDまでのデモが行われた。一般的なレコーディングスタジオにはコントロールルームに巨大なコンソールが設置されているものだが、ここではDAWを中心としたシステムが組まれている。プロジェクトスタジオとバジェットスタジオの間にあるような印象で、部屋ごとに演奏者の空間が分けられていて、互いの様子はTVモニターで確認するようになっている。

YSC渋谷のオープンは、先述の通り、2024年11月15日を予定。当日は11時45分から、グランドオープニングセレモニーが開催され、VOCALOID誕生20周年にちなんだボカロ×バンド演奏のコラボによるカウントダウンセレモニーが行われる。また、オープン後の約1カ月間は、ライブやワークショップなどさまざまなイベントがスケジューリングされている。なお、11月15日から18日まで、来場者プレゼントとして、数量限定でオリジナルピックが用意されている(無くなり次第終了)。新たな音楽の発信源として、YSC渋谷を大いに活用していただきたい。

所在地:東京都渋谷区桜丘町3-4 渋谷サクラステージ SAKURAサイド3階/SAKURAタワー8階
営業日・営業時間:月・水~金/12:00-20:00、土日祝/11:00-20:00、定休日/火曜

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