スマートホームの生成AI対応も一番乗り? IFAで見たLG家電の最新AIサービス

9月6日にベルリンで開幕したエレクトロニクスショー「IFA 2024」に、今年も韓国のLEエレクトロニクスが大規模なブースを展開しています。今年のテーマは生活に溶け込むAIの具体的な形を数多く提示すること。生成AIモデルを生活家電に活用するためのデバイスやサービスも揃っていました。

○LGブースで驚いた! 3つのオモシロ・スマート家電

近年のLGエレクトロニクスは、年初に米ラスベガスで開催されるCESでディスプレイやオートモーティブに関連する最先端のテクノロジーを見せて、9月のIFAは「スマートホーム推し」の色彩をより濃くしている印象を受けます。

IFAにはグローバルブランドであるLGが全世界で展開を予定する新製品が出揃うため、ものによっては欧州での展開も現時点で未定な製品やサービスがあります。現在日本市場でLGが展開していない製品も、特にスマートホームのカテゴリでは多く見つけることができます。

ブースにはユニークな新製品が3つありました。ひとつはスマート冷蔵庫の「INSTAVIEW with MoodUp」シリーズ。

フロントドアのボトム側に内蔵するLEDライトの明るさと色を「ThinQ」アプリから自由に変えて“ムードアップ”できたり、冷蔵庫に内蔵するBluetoothスピーカーで再生中の音楽に合わせて、LEDを色んな色でフラッシュさせる「パーティー仕様のスマート冷蔵庫」です。

全体のデザインは落ち着いているので、キッチンのスペースに美しく設置できそうです。

2つめの製品はペットに猫がいる家庭用の空気清浄機です。こちらは現在開発中のプロトタイプモデルとして展示していました。タワー型空気清浄機のトップには猫が好む、やわらかなクッションを敷いたカゴが固定されています。

猫が乗ると自動的に体重や体温を計るセンサーを搭載して、スマホアプリからペットの体調管理ができるサービスも開発中です。空気清浄機は猫がカゴから降りて、部屋の中を歩き始めるとオンになります。

展示の説明に立つスタッフに聞くと「ドイツ人は“空気はキレイなもの”という自負があるので、空気清浄機にあまり関心を示しません。私はベトナム系のドイツ人なので、家族も空気清浄機を好んで使います。LGとしては、IFAで試作中のペット対応空気清浄機の可能性をリサーチしてから、今後の商品に向けた検討を深める考え」なのだと語っていました。

もうひとつの新製品が「ThinQ ON」という、LG独自のAIエンジンを載せた音声操作対応の家庭用スマートハブです。11月に韓国から販売を開始する予定。欧米にも来年以降の投入が検討されています。

○「Hey LG」の音声で家電が動く。生成AI対応にも超積極姿勢

ThinQ ONにはLGの大規模言語モデル(LLM)によって動く最新のAIエンジン「FURON(フューロン)」が搭載されます。年初のCESで「LG AI Brain」として発表されたテクノロジーをベースにしているようです。

本機を単独で使うこともできれば、LGのAIに対応するスマートホームのプラットフォームである「ThinQ」をサポートするスマートIoT家電に無線でつなぎ「AI化」できるというユニークなデバイスです。ハブ機能を持たない「ThinQ Voice Controller」という、簡易な兄弟機も発売を予定しています。

ThinQ ONを介してスマート家電やIoTデバイスを動かす際にはFURONが賢くサポートします。ThinQ ONには自然言語会話によるAIチャット機能も搭載されており、ユーザーがチャットをリクエストするとMicrosoft Azureをベースに開発したチャットボットが応えます。ウェイクワードは「Hey LG」に統一されています。

LGエレクトロニクスの家電によるエコシステムを構築してきたThinQのプラットフォームが、今年から「ThinQ Public Open API」を公開することにより外部にも開放されます。

これからはLG ThinQに未対応だったアプリやデバイスを、LGのスマート家電やThinQ ONに接続して遠隔操作したり、連携するサービスが使いやすくなります。既に1000以上の新しいアプリがThinQのプラットフォームに対応したそうです。

LGエレクトロニクス製のスマートプラグやスマートセンサーなど、IoTデバイスは新しいスマートホームの統一規格として台頭する「Matter(マター)」の認証を取得しています。ThinQ ONもMatter対応のハブとして機能するデバイスなので、ホームネットワークにつないだ他社のMatter対応製品を「Hey LG」からの音声操作で遠隔操作もできます。

毎年IFAのLGブースに訪れると、同社がものすごいスピード感でスマートホームの進化にチャレンジしていることを肌で感じます。

生成AIを活かしたスマートホーム体験を、エレクトロニクスメーカーの中で最も速く、鮮やかな形に仕上げるのもLGになりそうな熱気がIFA 2024のブースを満たしていました。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら

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