長く一緒に過ごしたい…犬の寿命を伸ばす薬をバイオテック企業が開発中
ペットには長生きしてほしい!という思いから。
2024年ギズモード・サイエンス・フェアで、大型犬と小型犬両方の寿命を延ばす薬の研究をしている動物用製薬会社ロイヤルの科学者チームが受賞者となりました。
質問
犬の寿命を確実に、そして安全に延ばすことは可能でしょうか?
結果
昨年11月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ロイヤル社の「LOY-001」という薬について、合理的な有効性の期待があると伝達しています。
これは同社の実験および動物実験データの初期評価に基づいたものです。そのデータによると、この薬は加齢に関連する健康問題を予防または軽減することで、大型犬の寿命を延ばすことができるというもの。LOY-001は、大型犬種に多く存在するホルモンレベルを下げることで、長寿を実現するとされています。
アメリカ食品医薬品局のこの宣言は、ロイヤル社の薬品開発にとって重要な部分でした。というのも、アメリカ食品医薬品局がLOY-001の安全性と製造データを承認すれば、2026年までに薬の条件付き承認を受けられると予想されているから。これにより、大規模な臨床試験の進行中であっても、この薬を販売できるようになります。
この薬の開発理由
大型犬は平均して小型犬よりも寿命が短いんです。これは過去数百年にわたって人間が行なってきた犬の繁殖による合併症の1つです。大型犬種はがんや耳・鼻・喉の疾患、そして寿命を縮める可能性のあるその他の症状のリスクが高い傾向にあります。
現役の獣医師でありロイヤル社の獣医学ディレクターであるブレネン・マッケンジー氏は語っています。
「ロイヤル社の実験薬は、大型犬に見られる加速的な老化を遅らせることを目的としています。この老化の原因は、私たち人間が犬の大型化を目指して繁殖させた結果として生じているようです」
LOY-001は3〜6カ月ごとに注射で投与され、インスリン様成長因子1のレベルを低下させるように設計されています。このホルモンは大型犬でより多く見られるものです。
そしてロイヤル社はさらにこの先も見据えています。科学者チームは大型犬用のLOY-001の毎日服用するピル版、「LOY-003」も開発しています。2番目の薬「LOY-002」は、異なるアプローチを用いて犬の代謝をより改善することを目指しており、これによって小さいサイズの高齢犬以外のすべての犬の寿命を延ばすことができると期待しています。
受賞理由
ペットを飼っている人なら誰しもが、ペットが健康で幸せな生活を送り、できるだけ長生きしてほしいと思うものです。ロイヤル社はその気持ちを十分に理解していてくれて、研究を続けているのです。マッケンジー氏はこう述べています。
「私たちの仕事の中心は犬により長く健康に保ってもらうことです。ですから、犬が健康で幸せでない限り、私たちの予防医療の方法では長寿には結びつかないということです」
また、犬の健康的な長寿の秘密を解明することで、いつか人間向けの薬につながる可能性があるとマッケンジー氏は付け加えています。
この薬が承認されれば、前途の3つの薬が製品として市場に出ることになります。サンフランシスコに拠点を置くロイヤル社は、2019年に自身も長年のペットを飼っているセリーヌ・ハリウア氏によって設立された会社です。新規の薬を開発するだけでなく、将来同様の薬を研究し販売するのに必要なインフラ構築も支援してきています。
次のステップは?
ロイヤル社は今年、LOY-002の大規模なSTAYと名付けられた試験を開始し、1,000匹の高齢犬を登録する予定です。また、LOY-001とLOY-003の研究も継続していて、2026年までにアメリカ食品医薬品局の条件付き承認を受けられることを期待しています。そして2024年2月、ロイヤル社はSTAY試験の最初の被験者、11歳の犬のブーに投薬を開始しています。
チーム
ロイヤル社のCEO・創業者はセリーヌ・ハリウア氏。そして薬の臨床開発はエレン・ラトクリフ氏が担当しています。獣医学ディレクターのマッケンジー氏に加えて、同社は研究開発の一環として多くの獣医師と協力しており、STAY試験だけでも50以上の動物病院が協力する予定です。
「とても大きな熱意が存在するんです。獣医師たちは、ペットを救う医療にこのツールを加えられるのを心待ちにしていてくれます。このプロセスはコミュニティ全体で行なわれているんです」
09/26 14:00
GIZMODO