生ごみの処理はヘラクレスオオカブトにおまかせ

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Photo: feathercollector/ Shutterstock.com

少年時代に憧れたあのカブトムシに再会できるなんて…。

どこの国でも大なり小なり抱えているごみ問題。適切に処理しなければ増える一方で、最悪の場合、土壌や水質を汚染し、健康問題の原因になりますが、南米コロンビアには、生ごみを処理してくれるスペシャリストがいるんです。

カブトムシの幼虫が生ごみを食べて解決

コロンビア中部のボヤカ県で、本来なら埋め立て地へ直行するはずの有機ごみの山を、日本でも人気がある、あのカブトムシの幼虫がもりもり食べて成長しています。

有機ごみ問題の救世主、その名はヘラクレスオオカブト

カブトムシの幼虫を有機ごみ問題の秘密兵器として迎え入れたのは、環境衛生エンジニアのジェルマン・ビアサスさん。出会いは偶然だったそうです。

大学院生の頃、ミミズを使って有機ごみを処理し、有機肥料の生産販売を試みたものの、アクシデントでミミズが死んでしまい事業は失敗に終わったはずでした。

ところが、Viasusさんは残った土の袋の中にいる幼虫を見つけます。そして、いったい何の幼虫かもわからないまま、有機ごみを堆肥化してくれるんじゃないかという仮説を立て、とりあえず有機ごみの山に出動させたのが始まりなんだそう。

現在、Viasusさんが経営する会社Tierra Vivaの施設で働いている幼虫たちは、その子孫なのだとか。

Tierra Vivaの施設では、近隣自治体の住民約4万人から排出されるおよそ15トンの有機ごみを毎週受け入れています。彼によると、この処理方法はシンプルかつ低コストのなので、世界中のさまざまな地域で活用できると考えているようです。

国連によると、世界で排出されるごみは年に約112億トン。世界にはもっとヘラクレスオオカブトが必要です。いや、その前にごみを減らさないとですね…。

フンは有機肥料に。成虫はペットとして海外へ

ヘラクレスオオカブトの幼虫たちが食べた有機ごみは、微生物によって窒素とリンを豊富に含むフンとなって排せつされます。フンは有機肥料として販売されています。

幼虫たちは、卵からふ化して10日たつと有機ごみの山に投入され、4カ月間、毎日16時間働いたあとに退職。そして、成虫になったヘラクレスオオカブトは、ペットとして人気がある日本をはじめ、ドイツやカナダ、フランス、アメリカなどに1匹あたり150ドルで輸出されます。

昨年は日本に300匹、今年は100匹輸出したといいます。

ちなみに、売上はTierra Vivaが開発した暗号通貨、カブトムシからとった「Kmushicoin」で支払われることが多いそうですよ。

日本でも有機ごみを処理するカブトムシが

Viasusさんがシンプルかつ低コストなので世界のさまざまな地域で活用できると話すとおり、ヘラクレスオオカブトを輸入している日本でも、カブトムシに農業由来の有機廃棄物を食べてもらって、有機ごみや食料廃棄物の削減、有機肥料の生産などを行なう事業が始まっていますよ。

子どもの頃に見た昆虫図鑑の海外編の中で、他のどのカブトムシよりも輝いていたヘラクレスオオカブト。ああ、ひと目でいいから会ってみたい。

Source: Phys.org, The Associated Press, TBSラジオ

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