CO2吸収率が高くて強いコンクリートが実現するかも

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二酸化炭素(CO2)貯留能力がアップして、強度も落とさないコンクリートがリアルに使われる日も近いかも。

パリ協定の「2度を大きく下回る1.5度を目指す」という目標を達成するためには、世界のCO2排出量の約8%を占めるコンクリートの脱炭素技術開発が急務といわれてきましたが、ついにコンクリート革命が起こるかもしれません。

CO2吸収率が高くて強いコンクリートが実現か

New concrete tech

Image: Alessandro Rotta Loria/Northwestern University

アメリカのイリノイ州にあるノースウェスタン大学主導のエンジニアチームが科学誌Nature Communications Materialsに発表した論文によると、現代建築に欠かせないコンクリートにCO2を貯留する新しい方法が見つかったそうですよ。

しかもなんと、その新しい技術は、これまで課題とされていた強度と耐久性まで兼ね備えたコンクリートを作っちゃうんです。

期待高まる新技術では、コンクリートの製造工程で、水ではなく炭酸水をベースとした混合液を使用することで、CO2の吸収率を最大45%まで高められるとのこと。従来の方法では吸収率が5%から20%なので、飛躍的な進歩です。

従来のプロセスには問題点が

従来のコンクリートは、硬化コンクリートに高圧のCO2ガスを注入するか、生コンクリート製造過程で水、セメント、骨材の混合物にCO2ガスを注入するかのどちらかの技法でつくられていました。

これらの方法には、CO2回収率が低くエネルギー消費量が多いという致命的な限界があるうえに、コンクリートの強度に問題もあって、実用性に欠けるのだそう。たしかに、弱いコンクリートは怖いですよね。

新技術はここがすごい

新たな技術では、すべての材料を混ぜながらCO2を注入するのではなく、まずは少量のセメント粉末と混ぜた水にCO2ガスを注入。その混合液を残りのセメント、砂や砂利などの骨材と混ぜ合わせると、製造過程でより多くのCO2を吸収するコンクリートができあがります。

研究チームによると、この方法でつくられる混合液は粘度が低いため、従来よりも短時間で混ぜ合わせられるのに加え、化学反応の速さも手伝って、高濃度のCO2を貯留できるといいます。

さらに、完成したコンクリートを分析した結果、現在のコンクリートに匹敵する強度と耐久性を兼ね備えていたんですって。しかも、実際にはもっと強度が高いかもしれないと。新技術、無双しているっぽいじゃないですか。

研究に参加したノースウェスタン大学土木環境工学科助教授のAlessandro Rotta Loria氏は、革新的なコンクリート製造技術について、プレスリリースでこう語っていますよ。

さらなるテストは必要ですが、少なくとも強度は損なわれていないと言えます。強度が変わらないので、用途も変わりません。梁(はり)やスラブ(厚板や平板)、柱、基礎など、現在コンクリートを使用しているあらゆる用途に利用できます。

共同研究者で、世界5位のセメント大手CEMEXでグローバル研究開発担当を務めるDavide Zampini氏は次のように述べています

今回の研究結果は、セメント系材料の広く知られている炭酸化の反応ではありますが、製造工程に関連するメカニズムのさらなる理解によって、CO2の吸収をいっそう最適化する余地があることを示唆しています。

気候変動対策にコンクリートの脱炭素は欠かせません。少しでも早く実用化できるレベルまで持って行ってほしいですね。

Source: Fu et. al 2024/ Nature Communications Materials

Reference: Northwestern University (1, 2), SciTech Daily

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