ほぼ完全体のステゴサウルスの化石、約70億円で落札される

Apex the dinosaur fossil auctioned off for $45 million to Ken Griffin © Sotheby's / Matthew Sherman

Image: Sotheby's / Matthew Sherman

古生物学界を揺るがす大事件。ほぼ完全な状態のステゴサウルス化石「Apex」が、米ニューヨークのサザビーズで競売にかけられ、史上最高額となる4460万ドル(約70億円)で落札されました。落札予想価格は最高でも600万ドル程度だと考えられていたので、大幅に上回った結果となります。

Apexはほぼ完全な状態の化石

Apexは2022年から2023年にかけて、恐竜の化石が多く見つかることで知られるコロラド州モファット郡の私有地で発掘されました。

サザビーズのオークションハウスによると、Apexは「保存状態がよく、歪みもほとんどない。元の形状や表面の特徴の多くを保持している」と説明されています。全部で319の骨のうち254が残存しており、ほぼ完全な状態だそうです。

大型の成体個体であり、関節炎があることから高齢まで生きたことが示唆されているそう。また、戦闘による怪我や、死後に食べられた形跡がないといった特徴も持ち合わせているとのこと。

入札者はヘッジファンドの億万長者

入札者は7人で落札者は匿名と言われていましたが、のちにウォール・ストリート・ジャーナルが、シタデル・セキュリティーズのオーナーで、ヘッジファンドの億万長者 ケン・グリフィン氏(55歳)だと報じました。同氏は、Apexを米国内の機関に貸出し公開展示する意向で「米国生まれのApexは米国にとどめる」と話しています。

化石の売買は物議を醸している

しかし、Apexが個人所有者に管理されることに対して、科学会では物議が醸されています。

ウォール・ストリート・ジャーナルに対して、グリフィン氏は「アメリカにとどめる」と話して、公共の利益になることを匂わせていますが、一定期間展示すること以外にどの機関がこの化石にアクセスできるか明確化させていません。人目に触れず、研究もされなければ、科学の進歩が妨げられてしまう可能性も考えられます。

だからと言って、競売にかけられた恐竜化石全てをどこかしらの博物館が落札するのも予算的に簡単ではないわけで…。実際に2021年、世界最大のトリケラトプスの化石「ビッグジョン」が博物館に購入してもらえず、最終的に個人収集家の手に渡っています。

ただ、恐竜化石が個人収集家に渡ることが必ずしもネガティブに捉えられてしまう訳ではありません。ビジネスとして成り立つのなら、発掘に対して前向きになってくれる地主が増えたり、発掘業界全般が潤ったりする可能性も考えられます。恐竜化石がたくさん見つかれば研究も進むかもしれません。一概に「いい」「悪い」とはいえない状態だから、今後も議論が続きそうです。


ちなみに、この記事を書いている庶民な私は「億万長者ともなるとステゴサウルスの化石を個人所有できるのか…」とスケールのデカさにただ驚くばかりでした。億万長者ってすごいなぁ。

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