ISSが投棄した宇宙ゴミが住宅に落下。NASAの責任は?

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カナダアーム2のロボットアームによって投棄された直後の、古いニッケル水素バッテリーが詰められたパレット
Photo: NASA

フロリダに住む一家が、国際宇宙ステーション(ISS)から投棄された小さな宇宙ゴミの破片が自宅に落ちてきたとして、NASAを訴えました。

宇宙ゴミが屋根に突き刺さる

今年初め、フロリダ州ネープルズにある住宅の屋根に、約1kgの円筒形の物体が突き刺さり、天井と床に穴を開けました。この事件は、ISSから出された多数の古いバッテリーのパレットがメキシコ湾上空で大気圏に再突入し、フロリダ南西部に向かっていた日に起こりました。

家主が事件を報告。その後NASAが物体を回収し分析を行ないました。物体の寸法と特徴を調査した結果、これが貨物パレットにバッテリーを取り付けるために使われていた飛行支援装置の破片であることが判明しました。

訴えを行っている家族の弁護士、ミカ・グエン・ワーシィ氏は声明で以下のように述べました。

「宇宙ゴミは、近年拡大している宇宙進出が引き起こす深刻な問題です。

依頼人たちは、本件が彼らの生活に与えたストレスと損害に対する適切な補償を求めています。幸いにも誰も物理的な怪我を負いませんでしたが、このような"ニアミス"状況は悲惨な結果を招く可能性がありました」

家主アレハンドロ・オテロ氏の息子さんは、事件当時1人で家にいましたが、幸いにも怪我はありませんでした。破片は屋根から床下まで穴を開けたとワーシィ氏は述べています。家族は物的損害、精神的・感情的な苦痛、およびその過程で必要とされた第三者の支援に対する費用の補償を求めています。

NASAが賠償する事例となるか

この貨物パレットには、重さは約2.6トンにもおよぶ9個のバッテリーが搭載されており、ISSから投棄された中で最も重い宇宙ゴミでした。2021年3月にロボットアーム「カナダアーム2」によって投棄されてから、制御不能のまま地球に向かい、2023年3月8日午後3時29分頃にメキシコ湾上空で再突入しました。

NASAはすべてのパレットが地球の大気圏再突入時に燃え尽きると予想し、人口密集地域に落ちる可能性はほとんどないと考えていました。毎年平均200から400の人工物が地球の大気圏に再突入しており、宇宙機関は、物体が再突入した際の死傷リスクを10,000分の1の確率だとしています(ヨーロッパ宇宙機関による)。

「NASAは低軌道において責任を持った運用に取り組み、機器を投棄する際は、地上の人々へのリスク軽減に努めています」と、以前の声明で述べられています。

今回の事件は、宇宙ゴミが個人の財産に衝突するという珍しいものです。そしてNASAの投棄が不適切であったと非難された初めてのケースでもあります。地球の軌道にますます宇宙ゴミが増えていくこれから。今回NASAが家族に補償する可能性は高いとみられるため、本件が宇宙ゴミ衝突に対する賠償という前例を作ることになるでしょう。

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