実例で解説、Salesforce、EvenUP、Notta…先進企業のAI活用戦略とは?

Algi Febri Sugita/Shutterstock.com

 ChatGPTをはじめ、世界にさまざまな衝撃を与えている生成AI。すでに業務やサービスへの実装が始まっており、今やその活用が経営のトップアジェンダになりつつある。生成AIの導入にあたり、事業や組織をどう変革していけば、生き残ることができるのか。本連載では、生成AIが巻き起こす市場の大変化とその対応策を経営者目線で解説した『AIドリブン経営 人を活かしてDXを加速する』(須藤憲司著/日経BP、日本経済新聞発行)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第4回は、革新的なデジタルサービスを提供する先進企業5社の生成AI活用事例を紹介する。

<連載ラインアップ>
第1回 DX推進によって、なぜリクルートのP/L構造は大きく変化したのか?
第2回 「現代のアインシュタインやダ・ヴィンチを手助けする」エヌビディアCEOの発言の真意とは?
第3回 「じゃらんnet」はAI機能を搭載し、「顧客の悩み」をどう解消したのか?
■第4回 実例で解説、Salesforce、EvenUP、Notta…先進企業のAI活用戦略とは?(本稿) 


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■ ユースケースをストックしよう

AIドリブン経営』 (日経BP 日本経済新聞出版)

 ここまで、既存の事業や新規事業にAIを取り入れる際の3つのステップを紹介しました。ステップ1〜2は、個人やチームレベルでの取り組みが可能ですが、ステップ3は経営戦略との関連性を考慮しつつ、実際の影響を分析することが求められます。

 ただし、前提として求められるのは、AI活用事例の知識です。日頃からたくさんの事例に触れ、知識としてストックしておくことで、自社での活用法が見えてきます

 例えばチャットGPTのようなAIツールを使用してウェブサイトの良し悪しを分析したり、SEOの強化方法を提案するといった活用事例があったとします。

 SEOサービスを提供する企業であれば、このような事例を自社に取り入れるのがよいでしょう。しかし、もっと重要なのは、この方法を応用して新しい活用法を考えることです。例えば、診断結果を基に効果的な営業メールをAIで作成するといった方法です。これを実践することで、見込み客との商談の機会を増やすことができるかもしれません。

 他の企業がどのようにAIを活用しているかを知ることは、自社での応用例を考えるうえで非常に重要です。活用事例を知らなければ、その応用も思いつかないでしょう。新たなビジネスチャンスを見つけるためにも、さまざまな事例に触れ、アイデアの幅を広げることが大切です。

 そのために、おすすめの方法がX(旧twitter)でさまざまなAI情報を発信しているアカウントをフォローすることです。AI関連の情報は日々のアップデートがあまりにも激しいので、追いつくことも欠かせません。ぜひお試しください。

5つの事例で解説! AIはどのように活用できるか

■ 新興企業のAI活用戦略

 実際に、生成AIのユースケースを見ていきましょう。

【CASE 1】 Salesforce(セールスフォース)
特定のタスクの代替ではなく、一連の業務フローを担う

 セールスフォースは、単なるタスク代替ではなく、企業の幅広い業務フローをサポートする包括的なビジネスアプリケーションです。このツールは、営業活動から始まり、カスタマーサービスやマーケティング戦略まで、多岐にわたる業務を統合し、自動化することで、効率化を図ります。

 顧客データの一元管理とプロセスの自動化により、透明性と迅速な意思決定を実現し、従業員はより重要な作業に集中できるようになります。

「アインシュタイン」というAIを搭載しており、ビッグデータを活用した分析ツールでデータ駆動型の意思決定をサポートします。これにより、企業は市場での競争力を高め、成長を加速させることが可能です。

 クラウドベースで提供されるため、どこからでもアクセス可能で、柔軟な働き方を支援します。セールスフォースは、特定のタスクを超えた総合的な業務フローの管理と最適化を実現することで、現代ビジネスにおける必須ツールとなっています。

【CASE 2】EvenUP(イーブンアップ)
人身傷害の法的事務を代替し、督促状のワークフローを自動化

 イーブンアップは、法律業界向けのAI企業で、法律専門家の手動タスクを自動化し、大量のデータを効率的に分析し、法的問題に関するインサイトを提供するツールを開発しています。彼らはシリーズBの資金調達に成功し、新しい投資家から50万5000ドルを獲得しました。

 現在、イーブンアップは300以上の顧客を持ち、年間数十万ドルのサブスクリプション収益を上げながら、人身傷害法律事務所向けに督促状のワークフローを自動化する製品を提供しています。CEOによれば、これにより時間節約と支払額の増加が実現しており、同社の顧客は、法的請求の作成にかかる時間の節約に加えて、支払額が30%増加したとのことです。

【CASE 3】 Notta(ノッタ)
同一画面内で文字起こし・要約・ToDo作成まで完結

 ノッタは、ビジネスのさまざまなシーンで活用できる多機能ツールです。このツールは、1つの画面内で文字起こし、要約、ToDo作成が完結するように設計されており、業務の効率化に大きく貢献します。例えば、会議の議事録をリアルタイムで文字に起こし、その内容を要約して、重要なアクションポイントをToDoリストとして整理することが可能です。

 ノッタの特徴は、セールスフォースに見られるような一連の業務フローをサポートすることにあります。例えば、会議中に話された内容をAIがリアルタイムで文字起こしし、重要なポイントを自動的に抽出して要約します。これにより、ユーザーは会議の内容を瞬時に振り返り、次のアクションへ移ることができます。

 さらに、ノッタは、ToDoリストの作成機能も備えており、要約された内容から直接アクションアイテムを作成し、効率的な業務進行を支援します。これにより、営業活動だけでなく、マーケティングやプロジェクト管理など、多岐にわたる業務での活用が可能です。

【CASE 4】ELYZA(イライザ)
どのLLMでも、同じインプットから複数のパターンを出力できる

 イライザは、大規模言語モデル(LLM)を活用した革新的なツールで、その主要な特徴は、同じ入力から複数の出力パターンを生成できる能力にあります。この機能により、ビジネスのさまざまなシーンで多角的な解決策を提供することが可能です。

 例えば、マーケティングのキャンペーン文案の作成、顧客サービスの自動応答、製品開発のアイデア出しにおいて、イライザは同じ問いに対して異なるアプローチを瞬時に提供します。これは従来のLLMが1つの問いに対して1つの答えを出すのと対照的で、幅広い選択肢と柔軟な思考を促進します。

 特に、クリエイティブな業務、戦略立案、問題解決などで大きなアドバンテージを提供します。ユーザーは、イライザによって生成された複数の選択肢を比較検討し、最適な解決策を見出すことができます。この多様性は、ユーザーの視野を広げ、革新的なアイデアの創出にも寄与します。

【CASE 5】Typeface(タイプフェイス)
ウェブのキービジュアル、広告バナー用動画・画像の作り分けを瞬時に

 タイプフェイスは、先進の画像・動画編集技術を活用したユニークなツールで、動画や画像をさまざまな用途に即座に合わせて編集できることが最大の特長です。特にウェブページのキービジュアルや広告バナー制作において、その効果を発揮します。

 従来、これらのビジュアルコンテンツを作成する際には、デザインの方向性やターゲットオーディエンス、掲載プラットフォームに応じた細かな調整が必要でしたが、タイプフェイスを使用すると、基本デザインからさまざまなフォーマットやスタイルへの迅速な適応が可能になります。この即時の作り分け機能は、時間とリソースに制約のあるプロジェクトで特に有効です。

 異なるオーディエンス向けに複数の広告バナーを作成する場合、タイプフェイスを用いることで、迅速かつ効率的にターゲットに合ったデザインを制作できます

 加えて、直感的なインターフェースにより、専門的なデザインスキルがないユーザーでも容易に使用できる点が大きな利点です。これにより、マーケティングチームや小規模ビジネスでもプロフェッショナルレベルのデザインを素早く作成することが可能になります。

<連載ラインアップ>
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第2回 「現代のアインシュタインやダ・ヴィンチを手助けする」エヌビディアCEOの発言の真意とは?
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