独ベンツ、中国に「2800億円超」追加投資の背水

中国市場でEVシフトが急速に進む中、メルセデス・ベンツもEVを投入しているが、売れ行きは中国メーカーに比べて低調だ(写真は同社の中国向けウェブサイトより)

ドイツ自動車大手のメルセデス・ベンツは9月4日、中国事業に140億元(約2846億円)を超える追加投資を行うと発表した。

ベンツは中国に「北京ベンツ」と「福建ベンツ」という2つの合弁会社を持ち、前者は乗用車、後者は(主に法人向けの)大型ミニバンを生産・販売している。

追加投資は乗用車事業に100億元(約2033億円)超、ミニバン事業に40億元(約813億円)を割り振り、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)のラインナップ拡充とクルマのスマート化を進める。

新型EVを相次ぎ投入へ

今回発表した追加投資は、合弁パートナーである国有自動車大手の北京汽車集団および福建省汽車工業集団と共同で行う。なお、それぞれの投資比率などの詳しい情報は明らかにしていない。

ベンツは声明の中で、対中投資の拡大を通じて「北京市と福建省福州市および周辺地区の高度な製造業、EVおよびPHVの関連産業、スマートカー関連産業などの発展に、より一層寄与していく」と述べた。

新型車の投入に関しては、中国市場向けにホイールベースを延長した小型セダン「CLA」のEVバージョン、同じく中型SUV「GLE」のEVバージョン、さらに新型のEVミニバンなどを、2025年から相次いで現地生産する計画だ。

前述の新型車のうちCLAは、新開発したEV用プラットフォーム「メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー(MMA)」を採用した最初のモデルである。

財新記者の取材によれば、中国で現地生産するCLAは中国の自動運転スタートアップの「モメンタ(Momenta)」と共同開発したスマートドライビングシステムを採用する予定だという。

ベンツを含む外資系メーカーは、スマート・コクピットの導入などで中国勢に後れを取っている。写真は中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)が開発したEVの運転席(小米のウェブサイトより)

さらに、ベンツは独自開発した車載オペレーティングシステム「MB.OS」を組み込んだクルマを2025年から展開する。その暁には、システムが地図情報に頼ることなく、センサーやカメラからの情報を瞬時に演算してハンドル・アクセル・ブレーキなどを動かす「エンドツーエンド」の自動運転を実現できるとしている。

上半期の中国販売9%減

ベンツが今回の追加投資でクルマのスマート化を急ぐ背景には、中国市場において電動化とスマート化の競争がますます激しくなっていることがある。この分野で外資系メーカーは中国メーカーに後れを取り、市場シェアを奪われている。

中でも高級車のカテゴリーでは、消費者がクルマを選ぶ際にスマート機能の性能を比較するのが当たり前になっている。ベンツ、BMW、アウディのドイツ系3ブランドは(それぞれの頭文字を取って)「BBA」と呼ばれ、かつては中国の高級車市場で不動の人気を誇った。だが今では、スマート・コクピットや自動運転技術などで中国勢に見劣りするのが実態だ。

その影響は販売実績にはっきり表れている。2024年上半期(1~6月)の中国市場での販売台数は、ベンツが前年同期比9%減の34万1500台、BMWが同4.3%減の37万6300台、アウディが同2%減の32万2000台にとどまった。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は9月5日

(財新 Biz&Tech)

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