「健康書2000冊」が導き出した"健康長寿"の結論

腸内環境を整える食事は、まさに健康の「万能薬」だといいます(写真:IYO/PIXTA)
本を読み、要約し、動画にして配信する「本要約チャンネル」を運営するタケミさんとリョウさんは、10代後半まで、それぞれ起立性調節障害、喘息、メンタルの不調などを抱えていたといいます。そして、そんな2人が長年の体調不良を乗り越え、医学部への進学につながった原動力が「健康書」だったそうです。
現在までに2000冊を超える「健康書」を読み漁った2人が「医学的にも科学的にも、限りなく正解に近い」ポイントとして挙げる、"健康長寿"のために欠かせない注目の臓器とは。
※本稿は、「本要約チャンネル」の著書『結局、何を食べればいいのか?』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

腸によい食事は、まさに健康の「万能薬」

これまでに私たちが読んできた2000冊以上の健康書から導き出した結論があります。それは、「腸が健康でなければ、私たちは健康でいられない」というシンプルな答えです。

・健康診断の数字が少し気になってきたから食事に気を付けたい人も

・クスリや病院に頼らず、できるだけ健康でいたい人も

・長生きして、人生を楽しみたい人も

・健康でいたいけれど、何から始めればいいかわからない人も

年齢、性別にかかわらず、何を食べればいいのかと聞かれたら、迷わずこう答えます。

「腸にいい食事をとりましょう!」と。

腸が健康なら、全身も健康になります。腸が不健康なら、全身も不健康になります。全ては腸から始まります。これが、膨大な健康書と世界中の論文を読み漁ってきた私たちの答えです。

何より、腸にいい食事をとることは、とてもお得です! 腸が健康になれば、たくさんの健康効果を一気に得られるからです。

たとえば、「やせる」「美肌になる」「免疫力アップ」「病気になりにくくなる」、さらには「老化を防止する」などの素晴らしい健康効果があります。

また、それだけではありません。腸によい食事によって、腸そのものが健康になるだけでなく、肝臓も腎臓も脳も血管も、そのほかの臓器も健康になっていきます。腸によい食事は、まさに健康の万能薬なのです。

「食事を考えるのが大変な日」「家に帰ったらぐったりで時間がないという日」は、ほんの少しでいいので「腸によい食事」を意識してみる。それだけでも、十分に満点ですし、しっかりと腸によい食事をとれたら200点、というくらい腸は健康のカギを握っています。

世界中の研究者が注目する「腸内細菌」のすごい力

近年、腸は医学研究の最前線に躍り出た臓器として注目を集めています。次々と明らかになる新たな発見によって、腸の重要性が広く認識されるようになり、腸の健康を取り上げた書籍も数多く出版されるようになりました。

・肥満、糖尿病、動脈硬化など生活習慣病のリスクを下げる

・体内の炎症、アレルギー反応を抑制する

・血糖値の上昇を抑える

・精神を安定させる

・健康寿命を延ばす

驚くべきことに、腸が元気になると、これらの健康効果を全て得られます。こうした腸の多彩な機能は、一体どこから生まれるのでしょうか? 

そのカギを握るのが、「腸内細菌」です。

私たちの腸内には、およそ1000種類、100兆個もの細菌が生息しています。この総体を「腸内細菌叢」と言います。腸内細菌は菌種ごとに塊になって腸壁に付着し、まるで品種ごとに区切られたお花畑のように見えることから、腸内細菌叢は「腸内フローラ」とも呼ばれます。

この腸内フローラのバランスが崩れると、免疫機能の低下、消化不良、肥満、アレルギーなど、さまざまな健康問題につながります。逆に、バランスの取れた腸内フローラは、健康的な体を維持するために欠かせません。

そして、そのバランスは、食事の影響を大きく受けます。なぜなら、腸内細菌は人間が食べたものを栄養源にして生きているからです。私たちの普段の食事が、自分の腸の中にいる腸内細菌の生態系に影響を与えている。そう思うと、なんだか不思議な気持ちになりますね。

腸内細菌の中には、私たちの健康に力を貸してくれる菌もいれば、反対に、悪影響を及ぼす菌もいます。さらに毎日の食事の内容によって、どちらの菌が増えやすくなるかも変わります。つまり、食べるもの次第で、あなたの腸内環境は良くも悪くもなるのです。

自分では感じられませんが、今、この瞬間も、あなたの腸の中では細菌たちが増えたり減ったりしながら、活動を続けています。

善玉菌、悪玉菌はもう古い? 腸内細菌の最新研究

かつては、腸内細菌を「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類し、それぞれの割合を一定に保つことが健康につながると考えられていました。「善玉菌」「悪玉菌」という言葉には、見覚えがある方も多いでしょう。

少し前の腸活本では、以下のような内容がよく見られました。

・腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌と、もう1つ「日和見菌」に大きく分けられる
・善玉菌は、人体によい働きをするさまざまな腸内細菌の総称
・悪玉菌は、人体に害のある働きをするさまざまな腸内細菌の総称
・日和見菌は、そのどちらでもない腸内細菌の総称
・善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7がベストバランス

しかし、研究が進むにつれて、この考え方は変化しつつあります。

たしかに、基本的には善玉菌は有益で、悪玉菌は有害と言えます。ただし、善玉菌とされていた菌の中にも、状況によっては人体に悪影響を及ぼすものがあることや、悪玉菌や日和見菌とされていた菌の中にも、人体に有益な働きをするものが存在することも明らかになっています。

また、ある種の悪玉菌は、善玉菌が人体に有益な働きをする上で、必要不可欠な存在であることがわかってきました。

このような新しい知見から、もともと学術用語ではない「善玉菌」や「悪玉菌」という表現を使わない専門家も増えています(本稿ではわかりやすさを優先してこれらの言葉を使用します)。

さらに、理想的な腸内フローラのバランスは、人によって大きく異なることもわかっています。加えて、悪玉菌や日和見菌も含めた腸内環境の多様性こそが、健康維持に重要だという考えが今の主流です。

善玉菌を増やし、悪玉菌を減らせばよい、という単純な話ではなくなっているんですね。

ただし、理想的な腸内フローラのバランスは個人差があるとはいえ、健康長寿の人に共通する特徴があります。それは、ビフィズス菌や酪酸菌など、特定の善玉菌が多いことです。

つまり、これらの健康にいい善玉菌を増やすことが私たちの使命であり、善玉菌を増やすことこそが腸によい食事の正体なのです。

(出所:『結局、何を食べればいいのか?』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

ちなみに、健康にいい働きをしてくれる善玉菌は、年齢を重ねるごとに減ってしまう傾向にあります。ですから放っておけば、善玉菌は減り続け、腸内は悪玉菌ばかりになって、大切な腸内細菌の多様性は失われてしまうのです。

悪玉菌が増え、腸内環境が悪化すると、肌荒れや病気のリスクが高まったり、老化が加速したりする可能性も出てきます。だから、毎日の食事で意識的に善玉菌を増やすことが、本当に大切なのです。

そして、善玉菌を増やすために大切なのは、ズバリ「食物繊維」です。健康で長生きするためにも、腸内環境を整え、善玉菌がイキイキと活躍できる環境を作っていきましょう。

目的は善玉菌に「短鎖脂肪酸」を作ってもらうこと

では、なぜ善玉菌は重要なのか。その正体に迫っていきましょう。

善玉菌は、まるで私たちの体の中で働く、小さな工場のようなものです。この工場では、私たちの健康に欠かせない特別な物質が生み出されています。

その物質の名は「短鎖脂肪酸」。聞き慣れない言葉かもしれませんが、「短鎖脂肪酸」こそ、腸の多彩な働きのカギを握っている重要な物質です。少し、順序が逆になりましたが、大切な短鎖脂肪酸を作り出してくれる代表的な善玉菌の働きを確認しておきましょう。

●乳酸菌
乳酸を作る菌の総称。悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境を整えます。免疫機能を高める菌や、アレルギー症状を抑える菌も発見されています。

●ビフィズス菌
乳酸や酢酸を生成し、悪玉菌の増殖を抑制します。酢酸の強い抗菌作用により、大腸菌の増殖防止や食中毒菌の殺菌も期待できます。

●酪酸菌(酪酸産生菌)
酪酸を作る菌の総称。腸管上皮細胞の主要なエネルギー源となり、腸管バリア機能(腸の粘膜が外部からの有害物質の侵入を防ぐ機能)の維持や免疫応答の調節など、さまざまな生理機能に関わっています。

酪酸菌が「健康長寿」のカギをにぎっている

これらの善玉菌は、短鎖脂肪酸の生成に役立つ乳酸、酢酸や酪酸などの短
鎖脂肪酸をつくります。短鎖脂肪酸とは、炭素数が6以下の脂肪酸の総称で、代表的なものに酢酸、酪酸、プロピオン酸などがあります。短鎖脂肪酸は、腸研究の最先端の分野であり、現在進行形で研究が進んでいるところですが、現時点では次のような働きがあると言われています。

• 腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑制
• 腸内環境を整え、健康に保つ
• 腸の運動を助けるエネルギー源となる
• 腸の運動を活発にし、便通を改善する
• ビタミンの合成を促進
• 腸管バリア機能の維持・強化
• 免疫細胞の増加を促進
• 肥満・老化の防止に役立つ
• がん・糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果
• 健康寿命の延伸に寄与

腸内細菌研究の第一人者、京都府立医科大学の内藤裕二教授らが行った京都府の京丹後市の高齢者を対象とした調査では、100歳以上で元気な健康長寿者の腸内ではビフィズス菌と酪酸菌が多く、特に酪酸菌が多いことが明らかになりました。

酪酸菌がつくる酪酸は、大腸の粘膜細胞のエネルギー源となります。

そのほか、炎症を抑えたり、腸管バリア機能を高めたりと、多岐にわたる健康効果が注目されています。

内藤先生は、酪酸菌を増やすことが健康長寿の秘訣の1つだと述べています。

短鎖脂肪酸の働きについては、まだ研究途上の部分も多いですが、健康長寿との関連を示すデータは着実に増えています。

今後、短鎖脂肪酸を介した腸内細菌と健康の関係性が、さらに解明されていくことでしょう。

(本要約チャンネル : YouTuber)

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