「車幅2m未満」豪華キャンピングカーの新機軸

東京キャンピングカーショー2024に展示されていたアネックスの新型キャンピングカー「リバティ50DB」

東京キャンピングカーショー2024に展示されていたアネックスの新型キャンピングカー「リバティ50DB」(筆者撮影)

多様なスタイルがあるキャンピングカーの中でも、憧れの存在となっているのがキャブコン(キャブコンバージョン)と呼ばれるタイプ。バンやトラックをベースに、運転席以外の後方部分を広々とした居住空間にすることで、快適なクルマ旅を楽しめる本格仕様だ。

だが、車体の大きなモデルの多いキャブコンには、自宅や近所の駐車場に止められないとか、細い路地の多い日本の道路では走行しづらいなどの問題点が依然からあった。そんな日本特有の課題に対するユーザーからの要望により生まれたのが、老舗キャンピングカー・メーカーのアネックス(徳島県吉野川市)が手がける「リバティ50DB(LIBERTY 50DB)」だ。

【写真】車幅2m未満で一般駐車場にも入れるアネックスの新作キャンピングカー「リバティ50DB」。その内外装を詳しく見る(39枚)

全幅2m未満という絶妙なサイズ

大きな特徴は、トヨタ「カムロード」をベースとする本格仕様ながら、全長5m未満、全幅2m未満と車体をコンパクト化したこと。それにより、一般的な駐車場にも止めることができ、細い路地なども通行可能としている。

しかも内装などは、同社のフラッグシップ「リバティ52」シリーズに匹敵するほどの高級感を演出。さらに12タイプものボディ色もオプション設定するなど、ユーザーの多様な好みやニーズに対応。これらにより、近年、他メーカーでも続々と発売している、同様のコンパクトなキャブコン・モデルとの差別化を図り、より競争力をアップさせているという。

そんな最新モデルのリバティ50DBを「東京キャンピングカーショー2024(2024年7月20~21日・東京ビッグサイト)」で取材。その魅力や特徴などを探ってみた。

後ろから見たリバティ50DB

後ろから見たリバティ50DB(筆者撮影)

リバティ50DBは、トヨタ・カムロードをベースにしたキャブコン・モデルだ。カムロードとは、トヨタの商用トラック「ダイナ」をベースに、荷台部分を取り除いたキャンピングカー専用のベースシャーシのこと。このカムロードにオリジナルのキャビン(居住空間)部分を架装することで、広い室内や豪華な装備を実現したキャブコンは、価格が1000万円を超える高級モデルも多いが、キャンピングカー愛好家にとって「いつかは乗りたい」と思う憧れのモデル群となっている。

そんなカムロード・ベースの高級キャンピングカーの中で、前述のとおり、全長5m未満、全幅2m未満というコンパクトな車体を実現したのがリバティ50DBだ。具体的なボディサイズは、全長4990mm×全幅1950mm×全高2830mm。このモデルを手がけるアネックスでは、以前からカムロード・ベースのキャブコンとして、同社フラッグシップのリバティ52シリーズを擁している。こちらのボディサイズは全長5230mm×全幅2040mm×全高2880mmだから、新型のリバティ50DBは、全体的によりコンパクトな設定になっていることがわかる。

もちろん、リバティ50DBも高い居住性を求められるキャブコン・モデル。そのため、高さは2.8m以上あり、全高2.2m以下など高さ制限のある立体駐車場には入庫できない。だが、全長や全幅は、一般的な駐車場の多くに入れるサイズだし、2m未満の全幅により、細い路地などを走行しやすいことも特徴だ。

リバティ50DBの室内

ソファとテーブルを備えたダイネット

ソファとテーブルを備えたダイネット(筆者撮影)

一方の室内。車体左側にあるエントランスから入ると、すぐ右にオプションの電子レンジや85L冷蔵庫もセット可能なキッチンを配置。通路を挟んで反対側には、テーブルと5人がけのソファを備えるダイネット(リビング)も装備する。

また、室内前方の上部には、バンクベッドと呼ばれる就寝スペースがあり、跳ね上げ式のベッドは長さ1730mm×幅1370mm。さらに室内最後尾には、取りはずしも可能な2段ベッド(長さ1820mm×幅690~820mm)があるほか、中央のダイネットもベッド展開が可能だ(長さ1890mm×幅930mm)。これらベッドを備えることで、就寝人数は大人3名+子ども2名を確保する。なお、乗車定員は、ガソリン2WD/ディーゼルターボ2WDが8名、今回展示されたディーゼルターボ4WDの場合で7名だ。

電装オプションと12色のカラーバリエーション

エントランスを入ってすぐの場所にはキッチンが配置される

エントランスを入ってすぐの場所にはキッチンが配置される(筆者撮影)

じつは、このモデルは、2024年2月に千葉県・幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2024」で初披露されたのだが、今回のショーでは、内装などをアップデートし、さらに商品力を高めている。

まず、内装では、テレビ台と調理台まわりに照明を追加。また、ダイネットにもカーテンや照明を加えることで、さらに高級感をアップしている。加えて、テーブル横にはドリンクホルダー(4つ)を備え付けて利便性をアップしたほか、サードシートの座り心地も改善。ダイネット後方にあり、トイレなどを備えられるマルチルームには大きなミラーと収納棚、ハンガーパイプ、防水パンも装備。これらすべてが標準設定となっている。

また、今回の変更点で注目なのが、電装系のアップグレードとして、新たに「パワープラス4800(Power Plus 4800)」というオプションのセットを追加したことだ。セット内容には、リン酸鉄リチウムバッテリー400Ah(4800Wh)、インバーター(2000W)、ホームエアコン、85L冷蔵庫、電子レンジが含まれる。

パワープラス4800のオプションを選択すると、12パターンのボディカラーから好みの配色を選択可能

パワープラス4800のオプションを選択すると、12パターンのボディカラーから好みの配色を選択可能(筆者撮影)

さらに面白いのは、オプションセットのパワープラス4800を選択すると、12タイプのカラーバリエーションから、好みの車体色をチョイスできることだ。選べるボディカラーは、ベースカーの色がホワイトとシルバーの2種類、それらのいずれかと組み合わせるFRP部のカラーが6色で、合計12色から選択できる。なお、パワープラス4800未選択の場合は、ボディとFRP部のどちらもホワイトの仕様になる。

つまり、この電装系オプションを選ぶと、エアコンや電子レンジ、冷蔵庫などの家電製品や、それらの電源となるバッテリーなどを装備できることで、より快適性をアップ。加えてオーナーの好みに応じ、あらかじめ設定された12タイプの中からボディ色がセレクトできるということだ。

車両価格は800万円台からの設定

リバティ50DBの運転席まわり

リバティ50DBの運転席まわり(筆者撮影)

なお、リバティ50DBの車両本体価格(税込み)は860万円~。今回展示された2.8L・ディーゼルターボ4WDの場合で972万円となる。また、パワープラス4800のセット価格(税込み)は100万円。ちなみに、リアビューカメラや薄型ソーラーパネル(500W)など、そのほかのオプションも装備した展示車両の価格(税込み)は、1191万5700円となっている。

アネックスのキャブコン・モデルで、より上位仕様となる全長5.2mのファミリー向け仕様「リバティ52DB」の車両本体価格(税込み)は、最も安いディーゼル2WD仕様でも1327万7000円。比較すると、リバティ50DBは、車体がコンパクトなだけでなく、価格もリーズナブルだ。運転や駐車のしやすさなども考慮すると、キャブコンのエントリーユーザーなどに最適だろう。

前述のとおり、このモデルのようなコンパクト系キャブコンは、近年需要が高く、他メーカーでも同様のモデルを続々とリリースしている。そうした中、リバティ50DBは、電装系装備を充実させるだけでなく、ボディ色まで選べるというオプションセットを新設定していることが斬新だ。

本体や装備だけでなく、今まで他社になかった新サービスの展開は、かなり興味深い。同社のこうした取り組みに対し、市場がどう反応し、リバティ50DBが他メーカー製モデルよりも優位に立てるのかが今後注目だ。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)

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