資格芸人が伝授「失敗しない資格選び」3つの視点
難易度の高い資格には、あえてチャレンジしない
僕は資格の取得でも、すごく努力しないと取れないような資格は基本的には選ばないようにしています。
資格マスターの人たちのなかには、難易度が高い資格にチャレンジして合格することを喜びにしている人もいますが、僕のスタンスは違います。
「合格証をもらうこと」をミッションにして、そのゴールを達成できる資格選びをしてきました。
このやり方を選んだのは、威張って言えるようなことじゃありませんが、シンプルに僕が勉強が得意じゃないからです。
「なんだそれ?」と思われるかもしれません。だけど、ここが割と重要なんです。
そもそも勉強が好きな人なら既に難しい資格にチャレンジしているでしょう。カッコつけて賢そうな資格を取ろうとしたり、持っていて箔が付くような資格に走っていたりしていれば、僕は資格マスターにはなれていなかったと思います。
受験して不合格ならモチベーションは下がります。反対に合格できると、もっと合格したいと思って次の意欲につながります。このモチベーションの維持を、僕は何より大切にしてきました。
本業を疎かにしてしまえば元も子もないので、資格はなるべく空き時間を有効利用して取るようにもしていました。これが資格の数が増えていくコツです。
合格することで「自己肯定感」が上がる
子どもの頃、日常で"できるようになったこと"のご褒美にシールやバッジをもらって喜んだ記憶はないですか? シールやバッジをもらえることが嬉しくて何かに頑張れたっていう経験があれば、それをイメージしてください。僕にとっての資格取得はこれと似ています。
僕は資格マスターというよりは、「合格マニア」と言えるかもしれません。受験をクリアして合格証がもらえるって、自己肯定感がすごく上がるんです。
合格を繰り返すごとに承認を得る体験が積み重なっていくと、自分の中で満たされた気持ちが大きくなってきます。これを続けていれば、自己イメージがどんどんポジティブになっていきます。まるで無敵になったみたいに。それを、身をもって実感しています。
ほとんどの人は大人になるにつれて、子どもの頃のように合格証をもらえる体験が少なくなっていきます。昔は自転車が乗れるようになれば、ほめられた。逆上がりができるようになれば「すごい!」って喜ばれた。忘れ物をしないだけで「偉いね」って言われた。
でも、大人になると「そんなのできて当たり前」って扱われるようになります。どちらかというと、失敗ばかり取り上げられます。
学歴やキャリアや今の肩書きが常について回って、周りからの評価が自己イメージになりやすいと思いませんか? 仕事で目標を達成できないとか、周りより自分が劣っているように感じるとかいう悩みを持っていればなおさらです。
僕がお笑いの世界で天才と呼ばれる人たちと対等に勝負しようとしていれば、今の自分はきっとありません。できないことよりできることをやって、ナンバーワンよりオンリーワンを目指してきたからこそ、こうして今、ここにいられると思っています。
資格は僕の人生を180度変えてくれました。この喜びをぜひ、皆さんにも味わっていただけるよう、資格取得に際して、僕の経験を通して得た3つの格言をお伝えします。
一見「ミスマッチ」に思える行政書士向けのセミナー
僕はナント、行政書士の方たちに向けたセミナーの講師をしています。お笑い芸人と行政書士。一見ミスマッチな組み合わせに思えますよね? この依頼がきたとき、自分自身が何より驚きました。
行政書士ってちゃんとしているというか、ちょっとカタめの職業ってイメージがあると思います。お笑い芸人の僕がそんな方たちを前に教壇に立つなんて、きっとマネージャーさえ予想していなかったはず。
だけど、よくよく考えると、このミスマッチこそが資格によって世界が広がる足掛かりになるんじゃないかと思い始めました。僕はお笑い芸人でありながら資格マスターです。ここがそもそも、ミスマッチですよね?
つまり、このブルーオーシャンを狙ったからこそ、唯一無二の存在になれました。
「お笑い芸人なのに、お金に詳しいの?」
「お笑い芸人なのに、ラグビーレフリーなの!? 」
この意外性が、芸人のフィールドを越えて新しい世界に引き込んでくれたとも言えます。これを僕は「本業と意外な資格のハイブリッド効果」と呼んでいます。
一般的に、資格は本業に活かせるものだから意味がある、と考えやすいと思います。だけど、これまでお話ししてきた通り、それだと同じようなライバルがわんさかいるんです。
「行政書士なのに、カッパ捕獲許可証を持っているの?」
「建築士なのに、チーズの資格を持っているの?」
こんな驚きがあったほうが、オリジナリティが際立ってくると思いませんか? 本業とは一見、無関係の資格を取ってみる。こんな発想で資格選びをすれば、きっと新しい世界が広がってくるはずです。
自分では気づかない「可能性」だってある
モチベーションを下げないために、仕事に活かせそうでも興味のない資格は取らないようにしています。
ただ、例外があります。それは「誰かに求められた資格は取るようにしている」ってことです。
たとえば月亭八光さんに勧めてもらったラグビーレフリーの資格や、添乗員の資格がそれに当てはまります。
家電製品アドバイザーの資格も、もともと家電が好きだったとはいえ、先輩に「おまえって家電量販店の店員みたいだな」って乗せられなければ、わざわざ難易度が高いこの資格にはチャレンジしていなかったかもしれません。
誰かにアドバイスしてもらった資格を取るメリットは、アドバイスしてくれた人を味方につけるためです。
言われたその通りに実行してみて、そこで合格っていう結果を出せば、アドバイスしてくれた人が自分のサポーターになってくれるようになります。
「あいつ、本当に俺の言う通りにしたんだな……。いっちょう応援してやるか!」
こんな気持ちになってくれるみたいです。
それに、周りのアドバイスって絶対、人生に活きるものだと僕は思っています。自分に求められたことは、あれこれ考える前にとにかくやってみる。自分では気づかなくても、他人から見たら向いている可能性も十分にあります。こうして視野を広げていくのもアリだと思います。
「具体的な目標の設定」こそ成長につながる
毎年、1歩ずつでも目に見えて成長を実感できたらいいと思いませんか?
年初にまっさらな気持ちで、今年の抱負を決めることってあると思います。でも、年末になってみると、そうやって決めた抱負自体すっかり忘れていたりします。これって"あるある"ですよね?
「去年の自分より、仕事で飛躍する!」
「去年の自分より、プライベートを充実させる!」
こんなふうに抽象的な意気込みだと、年末になってそれができたのかどうか自問自答して、できていなかったら落ち込んでしまいます。努力しても結果がついてこないと自分にガッカリしてしまいます。
僕に言わせればこれがマズイ。こうした積み重ねは自己肯定感を下げてしまいます。そこで資格を利用してみるのです。これからは年初の抱負として、最低1つだけでいいので資格を選んで、合格を目指すことにしましょう!
その際には受からない資格を選ぶんじゃなくて、受かる資格、合格できそうな資格を選ぶのがコツ。理由は先ほどお伝えした通りです。
これを毎年積み重ねていけば、ちゃんと成長を実感できます。1年を無駄に過ごした、なんて自分にガッカリすることもなくなります。資格という形で自分の看板が目に見えて増えていけば、ちょっとずつでも確実に成長を実感できるようになります。
以上の3つの格言を参考にして、今後の資格選びに役立てていただければ幸いです。
(市川 義一 : お笑い芸人)
09/12 16:00
東洋経済オンライン