初代から8年、2024年の「AirPods」は何が違う?

2種類のAirPods 4と、AirPods Pro 2

左から2種類のAirPods 4と、AirPods Pro 2(写真:アップル)

間違いなく「世界一売れているワイヤレスイヤホン」であるAirPodsシリーズ。耳から白いバーが出てると、誰もが「アップルのAirPods」と認識するほどアイコニックな製品だ。今回、ラインナップ一新されたが、どれを買えばいいかという疑問もあると思うので、詳細を解説したい。

iPodオマージュのプロモーション動画

iPodオマージュのプロモーション動画が、往年のアップルファンには嬉しい(写真:アップル)

AirPodsに8年の歴史あり

いつの間にか細かく仕様の違うモデルが増え、ラインナップは少々複雑になってしまった。自分に合ったモデルは、どれか? その説明の前に、少し歴史を遡って各モデルをご紹介したい。

初代AirPodsが発表されたのは2016年。ツヤのあるジェットブラックが特徴的なiPhone 7と一緒だった。

当時は、まだiPhoneに純正イヤホン「EarPods(イヤーポッズ)」が付属していた。しかし、この2016年のiPhone 7から3.5mmのアナログイヤホンジャックが省かれ、いよいよワイヤレス化が進むことになる。

初代AirPodsと、iPhone 7

2016年発表の初代AirPodsと、iPhone 7(筆者撮影)

実は、初代AirPodsの1万6800円という価格は、当時の感覚だと高価と受け取られていた。ワイヤレス接続に対する信頼も薄く、「有線イヤホンのほうがいい」と、まだ多くの人が思っていたのだ。

ところが、初代AirPodsのワイヤレス接続は画期的だった。初回のペアリングさえ完了すれな、次からはケースのフタを開けて耳に入れるだけで、安定してiPhoneや、ほかのアップル製デバイスで使えたのだ。

バッテリーは5時間しか持たなかったが、ケースにもバッテリーを内蔵し、AirPods本体をしまうだけで充電される仕組みも斬新だった。既製品の欠点を、アップルらしい魔法で消し去る体験のデザインが、後の成功に続いている。

AirPodsは、ちょうど有線のEarPodsのケーブルを切ったような形状で、その軸の部分がカウンターウェイトとなって耳に引っ掛かるようになっている。軸の部分には通話のためのマイクや、バッテリーを内蔵。初代にはボタンがなく、本端をタップした際の振動で、再生や一時停止などの操作を行っていた。

当初、「高価」「落としそう」「うどんみたい」と批判的な意見もあったAirPodsだが、瞬く間にブームとなり、ワイヤレスイヤホン市場そのもを活性化させた。

2019年には「Hey Siri !」の呼びかけに対応した第2世代、さらに2年後の2021年にデザインを一新した第3世代が登場。そしてさらに3年後のアップデートとなるのが今回、発表されたAirPods 4だ。

ノイキャン付き「AirPods Pro」とは

AirPodsの成功を確実なものにしたのが、2019年に発売されたAirPods Proだ。

逆位相の音を出して周りの音をキャンセルするアクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載しており、耳に入れた瞬間に「シ〜ン……」と静かになるのは衝撃的だった。

初代AirPods Pro

2019年発表の初代AirPods Pro。AirPods Pro 2とは形状が異なっている(筆者撮影)

通勤時の電車内など、音量を上げなくても音楽がよく聴こえるのは新しい体験で、ANCワイヤレスイヤホンブームを築くこととなる。

シリコン製のイヤーチップを耳の中に入れるので、いわゆるカナル型と言われるいやほんと思われがちだが、実は違う。形状の基本思想はスタンダードAirPodsと一緒で、軸の部分をカウンターウェイトとして耳に引っかける構造だ。イヤーチップはノイズキャンセリングのために空間を遮断するためのもので、イヤホンを耳に固定する役割は担っていない。

2022年に第2世代が発表され、アクティブノイズキャンセリングの改良などが行われたが、後にこのモデルは立体的な音楽を楽しめる空間オーディオへの対応、USB-Cケースの追加発売など、アップデートが行われ続けた。

今回、さらなる機能を追加して、「AirPods Pro 2」として発表されたが、モデルチェンジはしておらず、「AirPods Pro(第2世代)」と同じ商品だ。AirPods 4の発売に合わせ、呼称が変更したと思われる。

AirPods 4には2種類あり

今回の新製品、AirPods 4は初代からのオープンイヤー型の系統だ。

AirPods 4

密閉タイプではないスタンダードAirPodsの最新モデルであるAirPods 4(写真:アップル)

2万1800円のスタンダードモデルと、2万9800円のアクティブノイズキャンセリング搭載モデル(ケースが「探す」機能とワイヤレス充電に対応)、3万9800円のAirPods Pro 2の3つが現在のラインナップとなっている。

2つあるAirPods 4は、外見も同じようなので、識別が難しい。価格だけでなく、使い勝手も異なる。

AirPods 4のノイズキャンセリングは、試してみるまではなんともいえないが、ユーザーの利用目的によってニーズが異なると思う。AirPods Pro 2のピタッと密着して外部音が聞こえなくなる感覚に恐怖を覚える人もいるというし、そもそも窮屈で嫌いという人もいる。

密閉感が少ないほうが好みであれば、AirPods 4のノイズキャンセリングモデルを試してみるといいだろう。

なお、AirPodsは、メルカリなどで中古品を求めるのはお勧めできない。AirPodsのバッテリーは非常に小さいため、利用状況にもよるが、だいたい2年で劣化する。安いからとバッテリーが劣化した製品を買ってしまうと、実際に使える期間は短いということになる(保証期間外のバッテリー交換は、本体が買えるほどの価格になる)。つまり、やはり上記3機種の新品購入がお勧めということだ。

AirPods 4の驚くほど多くのフィーチャー

アップデート項目が非常に多かったAirPods 4(写真:アップル)

将来のことも考えると…

Proがいいという人が気に留めておくべきなのが、心臓部にH2チップを搭載したAirPods Pro 2が発売され、すでに2年が経過している点だ。

来年にかけて、Apple Intelligenceでの利用に最適化されたH3搭載のAirPods Pro 3が出ることは充分に考えられる。AirPods 4はともかく、今AirPods Pro 2を買うなら、その展開は想像しておいたほうがいい。

なお、AirPodsのラインナップには、オーバーイヤータイプのAirPods Maxもある(8万4800円の高級ヘッドホンであることから、本稿では選択肢から省いている)。こちらは新要素としてUSB-C充電の対応とブルー、パープル、ミッドナイト、スターライト、オレンジの新カラーが案内された。

AirPods Max

USB-Cコネクターと新色を得たAirPods Maxだが、チップセットは残念ながらH1のまま(写真:アップル)

(村上 タクタ : 編集者・ライター)

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