ゲーミングPCにすべき?PS5 Pro12万円の妥当性

PS5 Pro

発表されたPS5 Pro。本体横の黒いラインが増えたデザインになっている(画像はPlayStation公式サイトより)

ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2024年9月11日、「PlayStation 5 Pro(PS5 Pro)」を発表した。

PS5 Proは、PlayStation 5の上位版となる家庭用ゲーム機。GPUがアップグレードされてレンダリング(描画速度)が45%向上したほか、レイトレーシング(光のシミュレーション)機能の向上により豊かなグラフィックを実現。さらにはAIによる解像感向上も実現している。

ディスクドライブも縦置きスタンドも付属しない

これ自体は喜ばれる内容なのだが、問題は価格だ。日本向けのPS5 Proはなんと11万9980円(税込み)となっている。

しかもディスクドライブがなく、縦置きスタンドも付属しない(どちらも別売り)。コストダウンしたうえでこの価格になっているわけで、ゲーム好きの間でかなりの衝撃が広がっている。

2024年9月頭にもPS5が値上げされており、その際に「ここまでの価格になるとゲーミングPCがいいのでは」と言われていたが、PS5 Proの発表でその話題が再燃している。

確かに約12万円は驚く値段だが、そもそもPS5 Proは高いのだろうか?

海外での売価と比較してみると、USドルでは699.99と記事執筆時点のレートで約10万円なので、日本の価格は割高に見えるが、ユーロでは799.99(約12万5000円)であり、それほど差はない。スペックから見ても、そこまで高いとはいえない。PS5 Pro並みの高解像度・高フレームレートで遊べるゲーミングPCを12万円で手に入れるのは難しい。

PS5 Proの縦置き

PS5 Proの価格にも驚くが、コントローラーも一万円を越える状態になっている(画像はPlayStation公式サイトより)

現在は縦置きスタンドが付属しないので、PS5およびPS5 Proを購入すると横置きが基本となる。なお、スタンドは約4000円で販売中(画像はPlayStation公式サイトより)

こうした基準から見ると、PS5 Proは極端に高いわけではないのだが、肌感覚として高いと思うのは当然である。なぜなら、家庭用ゲーム機はそれなりに安価に楽しめるから支持を得ているのだから。

「時間が経つと値下げ」が当たり前ではなくなった

初代PlayStationは発売当初が3万9800円、その後1万5000円まで値下げされたことを考えると、値段が大きく変化したことが嫌でも身にしみる。ましてやひとつ前の世代まで、家庭用ゲーム機は時間が経つほど値段が下がるのが当たり前だった。しかし、その状況も当たり前ではなくなっているのだ。

もともと、家庭用ゲーム機は高性能になればなるほどPCに近づいていくと言われており、それがいよいよ間近に迫っているのだろう。

日本においても、ゲーミングPC自体がかなり注目されている。そもそもゲーミングPCという言葉自体が一般的になっているし、家電量販店で売り場があるのも自然なことだろう。

PCゲームの販売プラットフォーム「Steam」では、ここ数年で日本のユーザーがかなり増えているという報告がある。Steamはゲームがかなり安くなる大規模セールを定期的に実施しており、その話題が日本語圏でしばしばバズっている。つまり、かなり注目度が高いのである。

eスポーツもゲーミングPCで遊ぶケースが多く、YouTubeなどの動画配信サイトにおいてもゲーミングPCで遊ぶ人が多い。なぜなら、ゲーム専用機ではないゲーミングPCにはさまざまなメリットがあるからだ。

ゲーミングPCは拡張性があり、さまざまなMOD(改造データ)を入れることができる。PC向けに先にリリースされるゲームも多く、PlayStationのソフトも(年単位で遅れてではあるが)Steamに出ることが増えてきた。もちろん、ゲーム以外のさまざまな用途にも使える。

ハイエンドな家庭用ゲーム機の価格が上がったことでゲーミングPCに近くなったうえ、ゲーミングPCの魅力が知られてきたことにより比較されるのだろう。

PS5の戦略に求められること

家庭用ゲーム機を手掛けるほかの会社は、違う路線を進む。任天堂はスペックで勝負しない「Nintendo Switch」で差別化しているし、次世代機も値上がりはするだろうが、価格を抑える努力をすると考えられる。

ハイエンドなゲーム機という意味ではマイクロソフトの「Xbox」が挙げられるが、マイクロソフトはサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」に力を入れている。ゲーミングPCと競争するつもりはなく、むしろ融和を目指しているといえる。

PlayStationは、これまであまり差別化が見えてこなかった。つまりゲーミングPCとの競合部分があったといえるわけだが、それがPS5 Proの価格によって顕在化したのではないか。

いずれにせよ、PS5 Proの約12万円はかなり衝撃的な価格である。PlayStationブランドをより強固なものにするなど、それだけの価値に見合う体験をもたらす策が求められるだろう。

(渡邉 卓也 : ゲームライター)

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