堀江貴文「これから日本の生産性は上がるはず」

(写真: tomcat / PIXTA)
堀江貴文氏が日本のさまざまなビジネスリーダーと多岐にわたるテーマを語り合うNewsPicksの人気対談企画「HORIE ONE」。本稿ではその書籍版『僕らとビジネスの話をしよう。~新時代の働き方』から、テレ東大学、ReHacQプロデューサーの高橋弘樹氏との対談を抜粋して紹介する。

「働く」とは「お金を使うこと」

――高橋さんは早稲田大学を卒業後、2005年に「テレビ東京」に入社。数々のヒット番組を制作してきましたが、2023年にテレビ東京を退社し、「ABEMA」に入ります。同時に「ReHacQ」などの人気チャンネルを作る映像制作会社「tonari」を立ち上げました。ABEMAに入社した決め手はなんだったんですか

高橋弘樹(以下、高橋):決め手は、スラッシュキャリアです。正社員でありながら、ほぼ縛りがなく副業をやらせてもらえることが一番大きかったですね。

――高橋さんにとって〝働く〟とはどういう意味を持っているんですか

高橋:3つの意味があります。1つは「お金を使う」ということ。大事なのは「お金を稼ぐ」じゃなくて、お金をいかに使えるかということ。2つ目は「承認欲求を満たせるかどうか」。3つ目は、「何かトラウマがあるんだったら、その代償行為として仕事が機能しているか」ですね。

これは僕の仮説なんですけど、人間ってお金を使う時に幸せを感じるんですよ。例えば、外資系の会社で年収5000万円もらっていたら、その5000万円は自分の自由に使えますよね。

でも大企業に入ると、部署によっては5億円くらいの大金が使えるんです。だから、会社でいかにお金を使えるかということが大事になってきます。例えば、テレビ番組を作る時には年間で何億円もの予算があります。何億円も使って番組を作ることができる。

これは子供の頃に1000円もらってプラモデルを買って作っていたのと同じで、大人になって5億円のプラモデルを買えるようなものです。それって、すごく楽しいじゃないですか。

当然、会社に利益をもたらさないといけませんけど、利益を出して会社から信用を得て、自分のやりたいことができるようになったら、あとはもう会社はATMみたいなもんですよ(笑)。僕はまだ年間5億円とかだけど、森ビルの人なんて、ビルを建てるのに数千億円も使ってますよね。堀江さんはどうですか?

堀江「最近、CTスキャンを買った」

堀江貴文(以下、堀江):僕は逆にそれしかやってこなかったから。

高橋:そうですよね。堀江さんは好き勝手やってますよね。ロケットを作ったり、ラジオ局を買ったり……。

堀江:純粋に儲けのことだけ考えると、同じことをずっと続けていた方が稼げるんですよ。

高橋:そう。だから、お金はもう稼ぐ時代じゃなくて使う時代なんです。

堀江:そういえば、最近、CTスキャンを買いました。ロケットのタンクを作るときに円周溶接をやるんですけど、それがめちゃくちゃ難しい技術なんです。そして、溶接した部分が圧力に耐えられるかどうかを非破壊検査しなきゃいけない。そのために産業用のCTスキャンを買いました。

高橋:今、堀江さんがしゃべっていた時の表情って、10歳の子供がプラモデルを作っていて楽しいと喋っているのと同じような表情でしたよ(笑)。

堀江:あと、ロケットを飛ばす時に海上を監視するために監視船を出さなきゃいけないんだけど、海が荒れていると監視船を出せないんです。でも、それで打ち上げられないということになったら嫌だから、「じゃあ、(海の荒れを空から見るために)飛行機を買うか」って飛行機を買いました。

それで、1500万円くらいの中古のセスナを買ったんだけど、買った時はちょっと嬉しかったな。あと、消防車も買った。ロケットエンジンの燃焼試験中に火災が発生した場合、消火するためにポンプ車が必要なんです。それで、払い下げの消防車が売られていたから「じゃあ、買うか」って。

高橋:消防車を買うって、子どもの夢だよ。本当に。そういえば僕も入社6年目くらいの頃に、衝撃映像を作る番組をやっていたんです。で、僕は風呂が大好きだから、軽トラを買ってその後ろの荷台に風呂を作って、日本一周して絶景で風呂に入るという企画を作りました。富士山の見えるところで風呂に入るとか。あれは楽しかったなあ。

――2023年3月発表のデータですが、転職した理由の1位は「収入」です。高橋さんは、ABEMAの収入だけを比べると転職前より増えているんですか?

高橋:ABEMAに入る時に「テレ東と同じくらいはいただきたい」とお願いしたので、トントンくらいじゃないですか。

――「GO」の代表でクリエイティブディレクターの三浦崇宏さんが1年前に「高橋さんは1年後に年収6000万円くらいになっている」って言ってましたけど。

高橋:年収6000万円も行くわけないじゃないですか(笑)。僕がやってるユーチューブチャンネルは持ち出しが多いんですよ。

堀江: 大変ですね。ちゃんと見たことはないけど。

高橋:大変です。ちゃんと見なくても、全然、大丈夫です。

バリバリ働きたい人にはいい時代になる

――でも、登録者数がもう80万人を超えていますよね(2024年7月時点)。

高橋:80万人を超えているんですけど、僕らのチャンネルは基本的に無料なんです。お布施みたいなサブスクチャンネルもやってますけど、そっちには動画をほとんどあげていない。メディアを作って広めるって大変ですよ。

僕らとビジネスの話をしよう。~新時代の働き方

堀江:でも、日本の生産性はこれから上がっていくはずなんですよ。日経平均株価が4万円を超えたのは、日本でもちゃんと株主のほうを向いて経営している経営者が多数派になったからだと思います。それがわかってきたから、外国人投資家が日本の株を買っているんです。

団塊の世代の経営者たちがどんどん退場してきているので、比較的まともな経営感覚を持った人たちが増えている。それで、収益力が上がっている。だから、今後は社内でも給料格差が出てくるんじゃないですか。

高橋:逆にいえば、バリバリ働きたいという人にとってはいい時代になっているということですよね。

(堀江 貴文 : 実業家)

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