信頼される「CSR企業ランキング」トップ500社

商社としては初の1位となった三井物産(撮影:尾形文繁)

『週刊東洋経済』2024年2月10日号で上位300社まで発表した第18回「CSR企業ランキング」(2024年版)。今回は上位500位までを発表する。なお、『CSR企業総覧(ランキング&集計編)』2024年版には上位800位まで掲載している。そちらも参考にしていただきたい。

同ランキングは2007年から発表し、今回で18回目。『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』『同(ESG編)』2024年版に掲載している1714社を対象に、CSR評価項目160、財務評価項目15で総合評価を行った(ランキングの元データや作成方法などの解説はこちら)。

三井物産が商社としては初の1位

早速、ランキングを紹介しよう。今回は三井物産が商社としては初の1位となった(573.9点、以下同)。部門別では人材活用18位(94.4)、環境6位(97.8)、企業統治+社会性22位(97.3)、財務47位(284.4)とバランスよく得点し、前回の6位から躍進した。

同社はサステナビリティに関する具体的な方針や目標などを「マテリアリティアクションプラン」として項目・組織別に整理している。そのうえで目標に対する進捗を継続的に管理するなど、その取り組みは組織的だ。社内意識の醸成を目的とした「サステナビリティ月間」の設定や、社会課題解決をテーマとした探究型学習プログラム「サス学」アカデミーの開講などにも取り組む。

事業においては、商品タグのQRコードから、生産者の暮らしなどを知ることができるトレーサビリティシステムを開発。広範なサプライチェーンにおける社会課題解決にも取り組む。

環境面では日本国土面積の0.1%に相当する社有林「三井物産の森」を保有する。そこで創出した「J‐クレジット」を利用し、国内全事業所で使用電力の実質CO2フリー化を達成した。また、社内カーボンプライシング制度を導入して、事業の環境影響度を分析・可視化するなど、先進的な取り組みも展開する。

人材育成にも積極的だ。教育研修費用は従業員1人当たり年50万円と国内トップクラス。新卒3年後定着率も97.7%と高い。

2位はJT(573.4)。人材活用50位(91.7)、環境57位(92.3)、企業統治+社会性8位(98.4)といずれも上位。また、業績が好調で、財務は8位(291.0)と総合順位を押し上げた。同社は事業の特性上、サステナビリティ分野では厳しい視線を向けられることも多い。しかし、それゆえに継続してきた地道な取り組みが数値にも表れ、トップと僅差の2位となった。

同社は海外を含むサプライチェーン全体で、葉たばこ生産者の生活向上支援や児童労働の防止・撲滅に取り組んでいる。例えば、児童労働撲滅を目的にマラウイなどに学校を設立している。実際に社会貢献活動支出額は年67億6300万円と国内トップクラスだ。

NTTグループが3、4、5位にランクイン

3位は日本電信電話(NTT)(572.5)。人材活用26位(93.5)、環境2位(98.9)、企業統治+社会性1位(100.0)。3部門の合計得点は全体3位とトップクラスだが、財務が77位(280.1)にとどまった。

同社は、本社受付業務に、外出困難な障害者が遠隔操作する分身ロボットを導入するなど、最新の通信制御技術を用いた多様な働き方を提供している。環境面では、陸上養殖を軸に食料問題の解決や環境負荷の低減を目指す合弁会社「NTTグリーン&フード」を設立し、事業をとおした社会課題解決にも取り組む。

4位にはNTTデータグループ(571.9)、5位にNTTドコモ(571.1)とNTTグループが続いた。

NTTデータは、再生可能エネルギーの利用を推進し、温室効果ガス排出量を示すスコープ1+2の削減率は約30%に上る。

NTTドコモは所定労働時間の最大20%を半年間、別の部署での副業に充てられる「社内ダブルワーク制度」を導入している。2023年5月までに累計382人が利用した。

6位には富士フイルムホールディングスとNECが並んだ(570.0)。富士フイルムHDは、役員報酬に「ESG(環境・社会・ガバナンス)指標」の達成率などを組み入れ、サステナビリティ関連の取り組みを経営の評価にも採り入れている。

NECはカゴメとAIを活用した少量多頻度灌漑の導入を支援する合弁会社を設立し、水不足問題の解決に取り組む。

以下、8位KDDI(569.9)、9位積水ハウス(569.7)、10位大和ハウス工業(568.7)と続く。

求められるCSRの取り組みに変化

前回のランキングから順位を大きく上げたのは、198位→76位の日東電工、182位→82位の東急不動産ホールディングス、429位→134位の日産自動車など。いずれの企業も取り組みと情報開示の両面が進展した。

これまでの上位企業の変遷を見ると、製造業中心から情報通信業へと顔ぶれが変わり、今回は多くのステークホルダーを抱える商社がトップとなった。企業に求められるCSRの取り組みも、徐々に変化している様子がうかがえる。

今後も本ランキングは、CSR(企業の社会的責任)と財務の両面から「信頼される会社」を見つける指標の1つとして継続して公開していく予定だ。なお、最新情報は『CSR企業総覧』2025年版(2024年12月上旬発売予定)に掲載予定だ。

1~50位

52~100位

101~150位

151~200位

201~250位

252~300位

301~350位

351~400位

401~450位

451~500位

(村山 颯志郎 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集長)

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