中国アリババ、本丸「国内EC事業」がマイナス成長

アリババの国内EC事業の苦戦は、事業分割を通じた経営改革が道半ばであることを示している。写真は浙江省杭州市のグループ本社(同社ウェブサイトより)

中国のEC(電子商取引)最大手、阿里巴巴集団(アリババ)の業績が伸び悩んでいる。総売上高の5割弱を稼ぐ中国国内向けEC事業の苦戦が背景だ。

同社は8月15日、2024年4~6月期の決算を発表。同四半期の売上高は前年同期比4%増の2432億3600万元(約5兆367億円)にとどまり、アナリスト予想の平均値に届かなかった。一方、純利益は同29.3%減の242億6900万元(約5025億円)と大幅な減益だった。

6大事業の中で唯一縮小

アリババは2023年3月から、主要事業の6分割を柱とする抜本的な経営改革に取り組んできた。しかし今回の四半期決算で、国内EC事業を束ねる「淘宝天猫(タオバオ・Tモール)コマース・グループ」は6大事業グループの中で唯一、前年同期比の売上高がマイナス成長を記録した。

具体的には、淘宝天猫コマース・グループの4~6月期の売上高は1133億7300万元(約2兆3476億円)と前年同期比1%減少。調整後EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)は488億1000万元(約1兆107億円)と同じく1%減少した。

アリババの説明によれば、国内EC事業のUX(ユーザー・エクスペリエンス)向上に向けた先行投資の増加などが減益要因になったという。

(訳注:国内EC事業の苦戦は、中国の個人消費が低迷する中で、低価格販売に強みを持つ「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」などのライバルとの価格競争が激化している影響も大きいとみられる)

「中国のEC市場におけるわが社のシェアは、徐々に(下げ止まって)安定しつつある。淘宝天猫コマース・グループの4~6月期のGMV(流通取引総額)は、前年同期比で1桁台後半のプラスだった。今後の数四半期のうちには、先行投資の成果が業績に反映されるだろう」

アリババCEO(最高経営責任者)で淘宝天猫コマース・グループのトップを兼務する呉泳銘氏は決算説明会でそのように述べ、国内EC事業の先行き不安の打ち消しに努めた。

国内EC事業のトップを兼務するアリババCEOの呉泳銘氏は、経営改革の成果を求める市場のプレッシャーにさらされている(写真は同社ウェブサイトより)

国内での苦戦とは対照的に、アリババの海外EC事業は急成長を維持している。海外EC事業を束ねる「インターナショナル・デジタル・コマース・グループ」の4~6月期の売上高は292億9300万元(約6066億円)と、前年同期比32%増加した。

アリババによれば、海外EC事業の4~6月期の成長を牽引したのは、越境ECの「全球速売通(アリエクスプレス)」が提供する公式おすすめ商品の優遇販売サービス「Choice(チョイス)」だ。その好調な受注が、(全球速売通の出店企業から受け取る)受託販売手数料の収入を押し上げたという。

クラウド事業の利益率改善

とはいえ、インターナショナル・デジタル・コマース・グループの4~6月期の調整後EBITAは37億600万元(約767億円)の赤字であり、損失額が前年同期の4億2000万元(約87億円)から大幅に膨らんだ。

その要因についてアリババは、「全球速売通およびトルコのEC子会社『Trendyol(トレンドヨル)』の投資負担が増えたため」と説明した。

アリババがEC事業と並ぶ基幹事業に位置付けるクラウド事業は、4~6月期の売上高が265億4900万元(約5498億円)と前年同期比6%増加。調整後EBITAは23億3700万元(約484億円)と前年同期の2.5倍に増加し、6大事業グループの中で最大の増益幅を記録した。

クラウド事業の利益率改善について同社は、経営資源を(利益率が高い)パブリッククラウドに集中し、プロダクトミックスの改善と事業効率の向上を図ってきた成果だとしている。

(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は8月16日

(財新 Biz&Tech)

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