新NISAで保有続けるのは資産形成として非効率だ

新NISAを新しく始めるにあたり、仲介の証券会社はどのような基準で選べばよいでしょうか(写真:umaruchan4678/PIXTA)
85歳の現役投資家・石井勝利氏は、「お金の知識だけをつけても、お金が集まってくる人にはなれません。“お金の知恵”を身につける必要があります」と言います。石井氏の新刊『85歳、現役・投資家のお金の哲学』から、一部抜粋、編集して、その意味するところをお届けします。

証券会社の選び方の基本

新NISAを新しく始めるにあたり、仲介の証券会社はどのような基準で選べばよいでしょうか。既にトレードを行い、1、2社を活用している人は、それでよいでしょう。

問題は、新しく新NISAで証券会社を選ぶ人の基準です。手数料で安いのは、ネット専門のサイトです。SBI、楽天、auカブコム、松井、マネックスといったもの。それに対して、野村、大和、みずほ、SMBC日興といった大手証券は、新規上場に関する業務は強いが、頻繁に売買するとか、チャート、板情報、企業情報などを見るには、いまいちの問題があります。

これら大手は、昔からの大口の顧客を大切にし、手数料も高いのが一般的です。また、企業情報についても、素早さという点ではネット専門の証券に劣ります。新NISAをやる場合には、通常の売買も行うほうが、銘柄の選択やタイミングの点で都合がよいのです。

新NISAだからといって、このワクに永久に入れておくのは、賢明ではなく、株価変動、相場の流れに応じて売買を行い、収益を高めながら、なおかつ非課税であることのほうが、恩恵を受けられます。

その点から言うならば、通常の売買もできて、新NISAにもお金を入れられる中長期のスタンスで投資する両にらみのほうが、非課税の制度の恩恵を受けやすいのです。

にもかかわらず、銀行などが勧めた金融商品を半永久的に保有するのは、利益どころか、含み損を抱えることになり、非課税制度の意味はまったくなくなります。

このように、新NISAは、投資の一環として、右肩上がり、長期の企業成長を前提に投資することが望ましく、非課税の恩恵を受けるにふさわしい証券会社を選ぶ慎重さが求められます。

リスクのある金融商品との付き合い方

預貯金と違い、投資信託、海外の株式、ETF、国内株式は、全て、リスク商品です。リスクというのは、

・価格変動のリスク
・手数料のリスク
・倒産のリスク
・業績変動のリスク
・地政学的リスクの影響

ということで、投入した資金が減る可能性もあるということです。もちろん、新NISAに入れるということは、収益に対して一定金額は非課税という恩恵があります。

目的は利益に対して非課税ということですが、必ずしも儲かるという保証はどこにもありません。むしろ、タイミングが悪ければ、投資資金を減らすということは、当たり前にあります。

非課税枠を設けたのは、国の制度ですが、何に投資して、非課税枠に入れればよいのかは、政府は教えてくれません。それどころか、リスク商品は騙し合いの世界であり、大半の人が儲かるどころか、マイナスを抱えるのが普通です。

マスコミも、書店も「新NISA全盛」の感がありますが、実際はそんなに甘くはありません。というよりも、リスク商品で収益を安定的に積み上げ、非課税の恩恵を受けるのは至難の業であることを認識しておきたいのです。

リスク商品の代表は株式投資ですが、これで財を成した人は、ごく一部に過ぎません。私は、株式投資に関するスキルを上げるための「株の鬼100則」という本を他社で出していますが、これらは、損を大きくしないためのノウハウです。

新NISA対象の商品は、目減りしないことが重要であり、非課税だからと言って利益が保証されたわけではないのです。この落とし穴に十二分に注意しないと、銀行や証券会社だけが利益を出し、個人投資家は資産を減らしたというおかしなことにもなりかねません。

「新NISAが危ない」

私はこのように警告したいと考えています。慌てて、今の相場水準で手掛けなくても、株価が大きく下落した後に堅実な銘柄に入れるというしたたかさも重要です。

新NISAへの投資の期間はどうするか

新NISAは、投資している商品の利益が非課税なのだから、長期に口座に入れておけば、年間360万円、生涯通算で1800万円まで非課税。これをもって、ずいぶんお得と考えるかもしれませんが、ことはそんなに簡単ではありません。

85歳、現役・投資家のお金の哲学

というのも、投資の現実は、個人投資家が投資で収益を得られるのは、全体の5%という統計もあります。年間360万円の原資に対して、収益への課税はないのは事実ですが、残念にも、含み損に対して、マイナス分を補填するというような都合のよい制度はありません。

私はメールマガジンで投資に勝つための貴重な情報を流しており、読者の中には、1億円の収益を上げる強者もいますが、いかに役に立ち、勝つ確率が極めて高い情報を流しても、自己流から抜け出せないで、資産をなくし、退場する人が多く見られます。

そこで、いかにして投資で収益を上げるか、その方法を列挙しますと、

①対象は株であればプライムに限定する
②投資先は、チャートで穏やかに上げている銘柄の押し目で買う
③たとえ収益が増えても、追加で同じ銘柄を買うと売買の単価が上がるので、買わない
④仕込む銘柄は、今期減益で、来期増益銘柄の押し目を仕込む
⑤無限の上げはないので、適度に利益確定し、出遅れ有望の銘柄と入れ替える

ということになります。

新NISAは、非課税で素晴らしいということは、まったくありません。それよりは、20%課税でも、機敏に売買を行うことで収益を上げ、税金を支払うほうがよほどプラスです。

投資で、収益の上げ方を教えないで、収益が非課税であると宣伝しても、まったく意味がなく、噴飯ものです。用心しましょう。上手い話はそうはないし、金融機関や政府が、あなたの資産運用を確実に手助けすることはないのです。

(石井 勝利 : 個人投資家)

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