85歳投資家「投資歴50年を生き残ってきた極意」

85歳、現役・投資家のお金の哲学

お金の価値は時間と共に変わるという感覚は重要なことです(写真:ELUTAS/PIXTA)
石油ショック、バブル崩壊、リーマンショック……。たびたび起こる金融危機によって、あなたのお金はプラスにもマイナスにもなります。それでも、お金を増やすためには、その本質を知る必要があります。
85歳の現役投資家である石井勝利氏が、50年の投資経験を込めた著書『85歳、現役・投資家のお金の哲学』から一部抜粋、編集のうえ、“お金が集まってくる人”について解説します。

リスク商品とリスクの少ない商品の差

非課税で投資の収益を積み上げるにはどのようにしたらよいでしょうか。投資経験の少ない人、株式投資の自信のない人が新NISAの非課税の恩恵を受けたいと考えるときは、運用成績のよい海外、とくに、アメリカの商品がいいでしょう。

日本の投資信託と違い、アメリカの投資信託の運用実績は好調です。しかも、投資王国のアメリカでは、個人の投資は当たり前。やっていない人のほうが少ないのが実情です。

そして運用成績が目減りすれば、そのファンド、商品にはお金が集まらなくなり、クローズとなってしまいます。このような国柄ですから、投信の運用にはことのほか真剣です。

貯金が多い甘い環境の日本では、投資信託の成績がマイナスになっても、目立ちません。

運用者の緊張感も薄く、窓口の担当者などは、投資信託の運用の知識も浅く、販売にあたっての危機感もありません。ですから、比較的リスクの少ない投信、ETFを新NISAに入れるときは、海外、とくに、アメリカの投信で成績のよい商品を対象にすることをお勧めします。

投信の運用で物足りないときは、株式では、防衛の三菱重工業、車のトヨタ自動車、生命保険の第一生命ホールディングス、食品の味の素、ビールのアサヒグループホールディングスといった日本を代表する企業の株を買い、NISA口座に入れましょう。

その際に、PER(株価収益率)、PBR(純資産倍率)のデータも確認しましょう。東証は、とくにPBRが1倍を下回る銘柄について「株価対策」を要求しており、会社側がこの対策を打ってくる傾向が強いので、長期の運用では大きなマイナスを出す可能性は低いでしょう。

このように、運用実績、企業の安定、成長性をしっかりと把握して、運用しましょう。さしたる努力もしないで、NISAでの運用がうまくいくことは皆無です。努力しないで、お金が増えることはありません。このことをしっかり肝に銘じ、調査し、投資対象に入れることを勧めます。

情報を素早く理解できる者が勝つ

相場の世界では、情報、材料をいかに素早く理解し、動くかが肝心です。もっとも相場への影響があるのは、アメリカ経済のデータです。それほど、アメリカ経済は日本の市場に影響があります。アメリカの大手の企業は、時価総額で、世界のリスク資産の相当な部分を占めます。

ですから、これらの企業の株価に影響する金利、為替、原油相場、金相場、消費者物価、景気動向などには、敏感に対応しなければなりません。

日本の株価が、アメリカの経済指標の影響をまともに受けるのです。日本のGDPの数値ではさしたる動きはないのに、アメリカ経済のデータで日本の株価が大きく動きます。

これはアメリカ経済の世界経済に対する影響力が大きいという実態を映し出しています。日本企業の大半はアメリカに拠点を持ち、収益を上げています。アメリカでの減税や様々な優遇制度は、アメリカに進出している企業に大きな影響を与え、業績に反映されます。

もちろん、GDPがアメリカに次いで大きい中国、インドなどの経済も見逃せません。しかし、アメリカの比ではありません。自由主義の国の王者であるアメリカは、日本の企業と大きくリンクしており、朝方、ニュースになるアメリカの株価、原油の値段は見逃せないのです。

これに追加して、見逃せないのが中東です。日本のエネルギーの大半は、中東の原油、天然ガス等に頼っています。電気代金、資源など、その価格動向、紛争などは、地政学リスクとして、相場に大きく影響します。

内閣支持率のニュースは、相場にたいした影響はない場合がありますが、アメリカ、中東のニュースは日本の物価、企業の業績に大きな影響があるので、無視はできないのです。

デフレ、インフレで懐が変わる

お金の価値は時間と共に変わるという感覚は重要なことです。私が高校を出て、東京で生活をしたとき(後に大学に進む)、賃金はひと月に8000円程度という今では考えられない水準でした。

85歳、現役・投資家のお金の哲学

しかも、家賃は6畳一間を借りて6000円です。月給が6畳一間の家賃に近いというのは問題ですが、私は6畳一間に友人と暮らしていましたので、実質3000円です。

3畳一間を借りていたこともあります。その当時の物価は、ラーメンが30円、定食が40円。山手線の運賃が一回り10円でした。これが、今から60年前の経済です。私が結婚して、新婚の家を借りたのが、東京の渋谷区幡ヶ谷で、6畳一間にトイレ、ミニキッチン付きで1万6000円でした。

この当時、親から遺産の代わりに200万円をもらいましたが、そのとき買った埼玉県南部の一戸建て分譲が430万円でした。たいした物件ではありませんが、一応、3DKの住まいでした。

それが今では、都心の中古のファミリーマンションが安くて5000万円、新築のタワーマンションは1億円します。

このように、お金の価値は、インフレなどの影響でどんどん変わります。不動産などを保有していれば、価値の変動にリンクしますので、不動産価格はインフレなどについていきますが、タンス預金、ほとんど利息の付かない普通預金で放置すれば、時の経済の変動でドンドン、価値が落ちていきます。

いま、都内で、家賃3000円で住めるファミリーの家はありません。ラーメンも30円では食べられません。つまり、お金の価値は変動するということです。

どのように変動するかと言えば、価値が落ちるということです。落ちないのは、金相場と、都会の不動産です。この価値の変動の実態を知らないと、お金は増えるどころか、減っていきます。

老後資金は2000万円必要などと言われてもいますが、将来的に、この金額は、足りない金額になっていきます。そのために、不動産資産やリスクはありますが、株式などで経済の変動にリンクするお金の運用力をつけていきたいものです。

(石井 勝利 : 個人投資家)

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