シャオミ、日本で家電「31製品」も投入の超本気

高機能なQD-Mini LED技術搭載のテレビを投入(筆者撮影)

中国の大手スマートフォンメーカーXiaomi(シャオミ)が、日本市場で新たな戦略を展開している。8月28日、31種の新製品を一挙に発表した。

スマホ市場で世界トップを争うXiaomiだが、中国では「小米之家(Mi Store)」というブランドショップを展開し、スマート家電やライフスタイル製品を幅広く販売している。2016年からの大規模なオフライン展開により、中国全土で数千店舗を開店し、地方都市にも進出してきた。

このシャオミの海外での攻勢を、そのまま日本に持ってきたかのような新製品発表会だった。Xiaomi Japanプロダクトプランニング部の安達晃彦本部長は、約30分の登壇で通販番組のように次々と製品を発表。スマートテレビやゲーミングモニター、ロボット掃除機、炊飯器など、“脇役”なスマート家電を主役に打ち出すことに努めたように感じた。

高機能なチューナーレステレビ

筆者の個人的注目はスマートテレビだ。Xiaomiは地上波・BSテレビチューナーを搭載しない、いわゆる“チューナーレステレビ”をau ショップ経由で展開してきた。今回、発表したもチューナーレスでGoogle TV搭載のスマートテレビとなっている。

新製品は3タイプあるが、注目しているのはQD-Mini LED技術搭載の新テレビシリーズ「TV S Mini LED 2025」だ。55、65、75インチの3サイズで展開され、8月28日から予約販売を開始する。

【写真】コンパクトな多機能炊飯機、6万円を切るオールインワン型ロボット掃除機、ペット用の餌やり器、デスクライト、ミニ扇風機など

QD-Mini LED技術は、OLEDに匹敵する高画質と高輝度、長寿命を両立させる新技術だ。512の独立調光ゾーンと1200nitsの高輝度により、高コントラストと豊かな色彩表現を実現。最大144Hzのリフレッシュレートに対応し、120Hzまでのアップコンバートに対応。スポーツ映像などを滑らかに表示できる。Dolby Vision IQ、Dolby Atmosにも対応している。55インチモデルで8万4800円(税込)という競争力ある価格設定も魅力だ。

より安価なテレビ「Xiaomi TV A Pro 2025シリーズ」と「Xiaomi TV A 2025シリーズ」も用意した。「TV A Pro 2025」は43、55、65、75インチの4サイズで、量子ドット(QKED)ディスプレイ技術を採用、約10億色の表現が可能となっている。Dolby Audio、DTS:X音響技術に対応し、もちろんGoogle TV搭載。「TV A Pro 2025」の43インチモデルは3万9800円(税込)からと、非常にお手頃価格で提供される。

よりベーシックな「TV A 2025」は55、65インチの2サイズで展開する4K HDRディスプレイのスマートテレビ。価格は55インチで5万4800円からと、これも破格だ。

リベンジの炊飯器

手ごろな価格帯で1人暮らし向け需要を狙う。市場想定価格は5980円(税込)(筆者撮影)

 Xiaomiが新たに発表した「Xiaomi 多機能炊飯器 1.5L」は、1人暮らしや少人数世帯向けのコンパクトな炊飯器だ。1.5Lモデルで3〜4杯ぶんのご飯を炊くことができる。ボタン類はガラス製タッチパネルで、スタイリッシュなデザインが特徴だ。

市場想定価格は5980円(税込)、8月28日より販売を開始する。Xiaomiの公式サイトやアマゾンなどで購入可能だ。

実は、これはXiaomiが炊飯器を日本で展開するのは二度目だ。2020年にアマゾン限定で「Mi IH炊飯器」を販売していたが、米の種類に合わせた炊き上がりを特徴としていたものの、日本向けのカスタマイズが不十分で販売数は振るわなかった。その経験を踏まえ、今回の製品はエントリー向けに特化。手ごろな価格を武器に、日本市場での挽回を図る。

スマート掃除機はステーション一体型を投入

「X20+」は、Xiaomi初の一体型大容量ステーションが付属する、オールインワンタイプのモデルだ。モップの自動洗浄・乾燥機能も備える。本体は6000Paの強力な吸引力と180rpmの高速回転デュアルモップを搭載し、効率的な清掃を実現する。光障害物回避システムやレーザーナビゲーションにより、スマートな経路設定も可能だ。ステーションは10秒でゴミを吸引し、最長75日ぶんのゴミを保管できる。

「S20+」は、従来モデル「S20」の上位版で、X20+からステーションを省いたものだ。同じく6000Paの吸引力をもつ。高速回転デュアルモップ、エッジレーザーセンサーと障害物回避センサーを搭載し、5200mAhバッテリーで最大170分の連続稼働が可能となっている。

両モデルともMi Homeアプリ対応で、スマートフォンからの遠隔操作や音声コマンドにも対応している。

「X20+」の市場想定価格は5万9800円(税込)、「S20+」は3万6800円(税込)。9月10日までの早期購入者にはそれぞれ4万9800円、3万2800円の特別価格が適用される。8月28日から販売開始し、Xiaomi公式サイトやアマゾンなどで購入可能だ。

ロボット掃除機は3ラインアップになった(筆者撮影)

ペットの見守り製品も

「Xiaomi スマートカメラ C301」と「Xiaomi スマート給餌器 2」は、ペットとの生活を便利かつ安心にするスマートホームデバイスだ。

「スマートカメラ C301」は、ペットの見守りに最適な機能を搭載している。2K解像度(2304×1296ドット)の高画質映像とデュアルジンバルによる360度の視野角で、ペットの動きを細かく遠隔で確認できる。フルカラーナイトビジョンにより夜間でも鮮明な映像を映し出し、双方向音声通話機能でペットに話しかけることも可能だ。市場想定価格は3280円(税込)。9月10日までの早期購入者には2980円(税込)の特別価格が適用される。

「スマート給餌器 2」は、外出時のペットの食事管理を代わってやってくれる。5Lの大容量フードタンクは成猫1匹の約30日ぶんのフードを保管できる。重量センサーによる正確な計量と、スマート給餌モードによる健康的な餌やりが特徴だ。内蔵LEDディスプレイでリアルタイムでの状況表示や、バックアップバッテリーによる停電時対応機能も備える。市場想定価格は1万1800円(税込)。

ペット用給餌器(左)とスマートカメラ(筆者撮影)

スーツケースや毛玉取りまで

このほか、ゲーミングモニターから毛玉取りまでと、実に幅広い新製品が披露された。

ゲーミングモニター「G24i」は、23.8インチFull HD Fast IPSディスプレイに180Hzリフレッシュレートと1ms応答速度を搭載しながら、市場想定価格1万5980円(税込)と、これまた目を疑う安さだ。上位機種「G27Qi」は27インチ2K解像度で、DCI-P3カバー率95%の広色域表示を実現。価格は2万5980円(税込)となっている。

さらに5ユニット構成の音響システムを採用した「Xiaomi Bluetoothスピーカー」(8980円)や、60cmの水平ライトヘッドで省スペース設計を実現した「Xiaomi LEDデスクライト2」(5980円)などもある。

デスクライトやミニ扇風機はギフトにもちょうどいい価格帯だ(筆者撮影)

また、18.5時間駆動の「Xiaomi 充電式ミニファン」(3780円)や、強力吸引力の「Xiaomi 毛玉リムーバー」(1480円)など、日常生活を快適にする製品も用意。耐久性と軽量性を兼ね備えた「Xiaomi アルミフレームスーツケース」(1万6800円〜)など旅行用品カテゴリーも展開する。

スーツケースはXiaomiファンから要望が多いという(筆者撮影)

31製品で終わりではない

スマホは発表せず、テレビから毛玉取りまで31製品を一挙に発表したXiaomi。その意図とは? Xiaomi Japan大沼彰社長へに直接お話を伺うことができた。

Xiaomi Japan大沼彰社長(筆者撮影)

Xiaomiのブランド認知度は現在60%程度で、Appleなどと比べるとまだ低い。しかし、大沼社長は「2024年第2クォーターで日本のスマホ販売シェアで第3位になった」と述べ、着実に存在感を高めていることを強調した。

大沼社長は「われわれの差別化要素は、スマートフォンだけではない広い範囲。家電とIoTこそ、大きなファクターになると思ってます」と述べる。

また、「今回の31製品は、全Xiaomi製品の1%にも満たない」と大沼社長は語る。「これで終わりではありません。香港や台湾の店舗を見ていただければわかりますが、そこにある商品群は本当にものすごい数です。今回、発表した製品を含めても、まだ雲泥の差があります」と付け加えた。

あえてローカライズはしない

今回、発表された製品においては、日本向けのローカライズは最小限にとどめ、グローバル向けの製品を多く投入する戦略に振り切っている。日本の法令に準拠するように電源や電波関連の仕様は調整するものの、例えば炊飯器では「3合炊き」ではなく「1.5リットル」と表記しているところからもこの方針が伺える。

テレビ製品に関しては、現在チューナーレスモデルを中心に展開しているが、これは日本市場の特性を考慮した判断という。ただし、将来的に地デジチューナー搭載モデルを展開する可能性も排除していないと大沼社長は語る。

発表した製品の多くはIoT機能を備えている。「Mi Home App」というアプリに登録することで、ロボット掃除機やデスクライトなどの操作をアプリ経由で行ったり、自動化することが可能だ。しかし、発表会ではスマホとの連携機能について、詳しくは触れていなかった。

大沼社長は「お客様にIoTと言っても通じない。これがどういう商品で、どこが使い勝手がいいのか。お客様目線での話をおもにしていきたい」と考えているという。「どのような機能があるかより、その商品で何ができて何が便利になるか、体験の部分にフォーカスしていきたい」と強調した。

まずは製品としての素晴らしさを伝え、気付いたらそれがスマート家電だったというのが理想的な展開と考えているようだ。

発表された製品にはIoT機能を備えたものも多いが、特に強調されなかった(筆者撮影)

量販店での展開は慎重な姿勢

店舗展開戦略も注目だ。現在、渋谷で展開中のポップアップストアは9月30日までの限定だが、常設店舗の展開に向けた立地探しも進めているという。しかし、大沼社長はすべての製品を同じように扱うわけではないと示唆している。「渋谷に来られる人は、スマートフォンやIT関連のものは手に取ってくれますが、家庭に密着した製品にはあまり関心を示してもらえません」という一方、「香港などにある大きなショッピングモールへ来られるお客様は、スマートフォン目的の方も多いですが、その流れで同社の“これも便利”、“あれも便利”と気付いて買い求めてくれ」と、大規模ショップ展開への願望を語った。

実店舗は直営店のXiaomi Storeの展開を予定している(筆者撮影)

量販店展開戦略については、現時点では慎重な姿勢を見せている。今回、発表された製品はすべてXiaomiの公式オンラインストアで取り扱われ、一部製品はポップアップストアでも販売される予定だ。確かにXiaomiは完全にオフライン販路を持たないわけではない。例えば、チューナーレステレビの前世代機はKDDIを通じて全国の家電量販店に並んでいる。ただし、その陳列場所は通常のテレビ売り場ではなく、携帯電話売り場の一角という特殊な形態を取っている。量販店での本格的な展開には課題もある。流通コストの上乗せにより、Xiaomiの強みである価格競争力が損なわれる可能性があるからだ。現段階では大規模な量販店展開よりも、まずはブランド認知度の向上を優先する戦略を取っているといえる。年内にもまだ新製品の発表がいくつか控えているそうで、同社から目が離せない。

(石井 徹 : モバイル・ITライター)

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