中国人の訪日客数「コロナ前の7割」に届かぬ事情

空前のインバウンドブームの中でも、中国からの訪日客数の回復は遅れている(写真は日本政府観光局の中国向けウェブサイトより)

中国から日本を訪れる旅行客数の回復が、記録的な円安にもかかわらず遅れている。

「訪日観光客は増加傾向にあるものの、まだコロナ禍以前の水準に戻っていない。2024年上半期の実績は2019年の7割未満だった」。日本の中部国際空港の運営会社で中国市場向けマーケティングを担当する何方舟氏は、財新記者の取材に対してそう述べた。

日本政府観光局(JNTO)のデータによれば、2024年1月から6月にかけて日本を訪れた外国人旅行者数は延べ1777万7200人に上り、コロナ前の2019年上半期(延べ1663万3600人)を6.9%上回った。

国別では韓国が最多に

国別の訪日客数では、韓国が444万2100人と2019年上半期を15%上回り、中国を抜いて首位に浮上した。中国は306万8000人で第2位だったものの、2019年上半期と比較した回復率は67.7%にとどまっている。

「中国からの訪日客数の戻りが遅い背景には、中国の国内旅行が好調なことや、中国人観光客のビザ取得を免除する国が増えていること、日本の旅行業界の人手不足で団体ツアー客の受け入れを増やせないことなど、複数の要因がからみあっている」。何氏はそう指摘する。

「訪日旅行に関する現在とコロナ前の大きな違いは、中国人の訪日旅行客全体に占める団体ツアー客の比率が下がったことだ。2019年には団体ツアー客が3分の1以上を占めていたが、2024年1~3月期は1割前後だった」

ブルームバーグ・インテリジェンスで旅行業界担当のアナリストを務める朱聖壇氏は、財新記者の取材に対してそう語り、団体ツアー客の減少が訪日旅行客全体の回復を遅らせているとの見方を示した。

中国の航空会社は日本路線の増便を望むが、日本の空港の受け入れ能力が足りないとの指摘もある(写真は中国の国有航空大手、中国東方航空のウェブサイトより)

一方、航空業界を担当する別のアナリストは、中国人観光客のビザを免除した(タイ、シンガポール、マレーシアなどの)国への旅行客が増えていることが、訪日旅行客数の伸び悩みにつながっていると見る。日本政府は2023年に220万件の短期滞在ビザを中国人に発給したが、これはコロナ前の発給数の約35%にすぎない。

人手不足で発着枠増やせず

前出の何氏は、日本の観光産業が抱える様々な制約の影響を強調する。中でも深刻なのが、ツアーバスの運転手、ホテルの清掃スタッフ、レストランのサービススタッフなどの人手不足だ。

さらに、日本の空港の受け入れ能力不足も問題になっている。グランドスタッフの人手不足はもちろん、給油要員も足りないため旅客機への燃料補給が追いつかず、発着枠を増やすことができない。それが日中間の航空便の増便を妨げているという。

「日本観光に対する中国人の関心は依然として高い。今後、為替レートが円高方向に振れれば、欧米からの訪日旅行客は減少するだろう。そうなれば、日本政府は改めて中国人観光客の誘致に力を入れるのではないか」。何氏はそう期待する。

(財新記者:鄒暁桐、孫嫣然)
※原文の配信は8月6日

(財新 Biz&Tech)

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