「せっかち」はうまく使えば仕事の強みになる

せっかち

「せっかち」という特性を活かした仕事術をご紹介します(写真:KY/PIXTA)
「せっかち」な性格ゆえに仕事が雑になってしまうことがあるという人もいるかもしれません。せっかちな性格を自認するクリエイティブディレクターのハラヒロシ氏は、「せっかちという特性を活かした仕事の仕方をすることが大切。先回りによって余裕をつくることでクオリティの向上につながります」と言います。そんなハラ氏が編み出した“せっかち式仕事術”を紹介します。

※本稿は、ハラヒロシ著『「効率化」と「クオリティ向上」を同時に実現する せっかち式仕事術』の一部を再編集したものです。

中間ゴールを置く

複雑なプロジェクトでは、市場の動向や競合他社の動きを把握しながら、プロジェクトの目標、納期、リソースなどを決めていくことが多いでしょう。

規模が大きければ、調査範囲も広く、関わる人も増え、納期も長くなりがち。そのようなプロジェクトの場合は、いきなり最終ゴールを目指すよりも、いくつかの中間ゴールを設定することで確実性が増し、安心感も得られます。

「中間ゴール」の例として、私の場合、長い企画書やRFP(提案依頼書)を冒頭から一字一句読み込んでいくことが苦手なので、まずはざっとかいつまんで要点のみを把握することを目指します。そのうえで、もう一度改めて読むようにしています。

このように流し読みでいったん要点だけ把握することを「中間ゴール」に設定しておけば、「とりあえず終わらせておくこと」が明確になるうえに、タスク完了の達成感も得られます。また、すでにポイントをつかんでいるので、二巡目以降はスピード感を持って読み込んでいく余裕ができます。

ほかにも、作業の2分の1が終わったらいったん報告する、記事を書く前に全体のアウトラインを箇条書きにする、といったことを中間ゴールにするのもよいでしょう。

中間ゴールを設定することで、複雑で長期的なプロジェクトでも目的地が近くに見えるようになって安心感を得られることがせっかち的に大きなメリット。

さらに、細かく時間を区切ることでそれぞれのタスクの量や進め方などを調整しやすくなるので、スケジュールや人的リソースなどのバランスを見ながら仕事を進めることができます。

休憩の取り方についてもテクニックがあります。何かの作業がひと段落したら休憩するのではなく、あえて作業の途中で休憩に入るのです。

せっかちな人は作業が完了していることに安心感を覚えるため、ひと段落=完了したことになってしまうと、休憩後に元のテンションに戻りづらくなります。それを防ぐために、ちょっとだけ作業を残しておくことで、意図的に「未了」状態にしておきます。

たとえば、メールを書きかけで止める、梱包作業の一部を残しておくなどです。この状態はせっかちな人にとって気持ちの悪い状態なので、自然と仕事に戻ることに意識が向くのです。こうして休憩後にすんなりと作業に入れるように脳をコントロールしておくと、パフォーマンスを維持できます。

また、完了を目指して一気に詰め込みすぎてしまうと、休憩するときには疲れ切ってしまい、再度仕事モードに戻りづらくなることもあるでしょう。あえてやり切らずに、「疲れたな」と感じる前に休憩に入るぐらいがちょうどいいのです。

休憩時間が決められている職場であれば強制力が働くのでよいのですが、時間を自由に使える人の場合は、いつ休憩するか、あらかじめ自分で時間を決めてしまうのもよいかもしれません。

朝にピークを持ってくる

せっかちな人は、朝早くから行動することが得意です。私も、朝から集中力とスピード感を持ってスタートダッシュできるように、毎日次のようなことをしています。

・朝は極力「考えない」工夫をし(服装の選択肢を増やさないでおく/テレビを観ない)、ムダなエネルギーを使わないようにする
・朝食のメニューは同じにする(食パン&コーヒー)
・軽めの運動をする(以前はトレーナーYouTuberの動画。最近は縄跳び)
・オフィスに着いたらルーティンをはさみ、リズム感をつくる(グリーンに水やりをしてから、仕事に取りかかる)

そもそも朝は脳が疲れていないため、やる気があるかどうかに関係なく、仕事をトップスピードに持っていきやすい時間帯です。せっかちな人は「初動」が肝心。朝に活動のピークを持ってくることで、短時間で十分な集中ができ、生産性を上げることができます。朝からエネルギッシュな状態は、周囲に対してもポジティブな空気を作り出すことができるでしょう。

私は、今の会社の役員になった32歳のときから、始業時間よりもかなり早い、朝7時過ぎに出社して何かしらの朝活をしています(就業規則から外れる役員だからできるのですが……)。

おかげで始業時間には朝活による満足体験が得られているので、落ち着いた状態で業務に臨めています。

一日の基準を「終業時間」にセットする

朝からトップスピードで仕事をしていると、当然ながらタスクの完了が早まります。一日の後半戦にかけて、計画的にタスクが減っていくのを実感できます。

また、早い時間帯から小さな満足体験が積み重なっていくため、満足感を保ったまま、確実に仕事を達成する心地よさがあります。

私は、朝からトップスピードで取りかかるのと引き換えに、終業まではエネルギーが持続しなくても仕方ない、というマインドで臨んでいます。序盤である程度の成果を出せれば、仮に後半にパフォーマンスが落ちてもトータルでマイナスになることはないだろう、という考え方です。

実際にパフォーマンスが落ちたとしても、前半にトップスピードで仕事をしたぶんの貯金があるため意図的に休憩をとる余裕もでき、もうひと頑張りする切り替えもしやすくなります。

さらに、終業時間を決めておけば、終業時間の間際には再度集中力を高めることもできます。残り時間が明確なので、仕事を詰め込みすぎて終わりが見えない! ということもなくなります。

「これは今日中にやってしまおう」「これは明日の朝ゆっくりやっても大丈夫」と、冷静に仕事の振り分けの判断ができるようになるのです。

さて、終業時間を一日の終点とするならば、そこから新たな一日が始まるともいえます。私はそこに着目し、一日の基準を「終業時間」におくようになりました。

朝起きる時間は一定だという人がほとんどだと思いますが、その一方で夜は遅くまで働いて、家族の時間を犠牲にしたり、睡眠時間を削ったりしている人も多いと思います。これは「起床時間」という一日の基準に戻すために、家族や自分の時間を犠牲にしていることになります。

終業時間を一定にすることができれば、帰宅時間も一定になり、家族や自分の予定を狂わせることはありません。睡眠時間も確実にキープできます。寝不足になることがなくなるので、集中力が増す朝の時間が充実します。

せっかちが力を発揮しやすい朝の時間に影響がでないようにすることで、毎日のパフォーマンスを安定させることができるのです。

仕事には、必ず始まりがあって終わりがあります。仕事の始まりは、手をつけてみるまで漠然としていて見晴らしがよくなかったりするもの。スケジュールを立てるなどして見通しをつけ、輪郭を作ることが大事ですが、このとき、ゴール地点がわかっていなければやみくもに走り続けなければなりません。

だからこそ、締切(終わり)を決めるのです。締切があると、スケジュールから逆算して行動することができるので、正しいペースで走れます。私自身、この考え方を一日の時間の使い方にも取り入れています。

「終業時間」を一日の終わり(締切)であり、始まりでもあるということを意識することで、安定して走れている実感を持っています。

(ハラヒロシ : クリエイティブディレクター・デザイナー)

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