JR南武線「ブルーインパルス飛行」で際立つ存在感

南武線 武蔵溝ノ口駅付近

武蔵溝ノ口駅(画面奥)を発車した南武線の電車。同駅では東急田園都市線・大井町線と乗り換えられる(記者撮影)

神奈川県川崎市が6月29日に等々力(とどろき)緑地で開催する市制100周年記念事業「かわさき飛躍祭」にあわせ、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行を披露する。同市が6月18日に具体的なルートを発表した。

市制100年の川崎市

川崎市は1924年7月1日に川崎町と御幸村、大師町が合併して誕生した。当時の人口は5万人ほどだったが、現在は150万人を超えて政令指定都市で第6位の規模を誇る。

地図で見ると、臨海部から多摩川に沿った細長い形をしている。向かって右を向いた犬のシルエットに例えられる神奈川県では、鼻の先から耳の先までが川崎市にあたる。東から川崎区、幸区、中原区、高津区、宮前区、多摩区、麻生区の7つの行政区がある。

展示飛行は有料イベント「かわさき100フェス」を開く等々力球場を中心とする。当日、ブルーインパルスは航空自衛隊入間基地を14時10分ごろ離陸。往路は麻生区、多摩区、宮前区の上空を通過、14時20分ごろから約20分間の演目飛行では「デルタダーティ・ローパス」「ビッグ・ハート」「アローヘッド・ローパス」など6種目を披露する。

川崎市内、東京都内(渋谷・新宿付近)、横浜市内(新横浜付近)を周回する一方、市役所がある川崎区は羽田空港が近い関係から飛行ルートが設定されていない。復路は中原区、高津区、多摩区の上空を通って14時50分ごろ入間基地へ帰投する。前日にもほぼ同じルートを予行飛行する。

【飛行ルートと写真】ブルーインパルスはどこを飛ぶ?川崎市内を走る鉄道路線の駅付近から見られるかも(25枚)

川崎市が公表した展示飛行の「周辺経路図」で、観覧する際に役立ちそうなルートの目印となるのが鉄道の駅だ。往路は小田急電鉄小田原線・多摩線の新百合ヶ丘駅と東急電鉄田園都市線鷺沼駅の間を通り、新横浜駅手前で北東へ向きを変え等々力緑地一帯を中心とした展示飛行の周回ルートに入る。復路は南武線に沿うような経路で武蔵中原、武蔵溝ノ口、登戸、稲田堤の各駅付近の上空を通過しながら入間基地へ帰投する。

川崎市制100周年記念ブルーインパルス飛行ルート

川崎市総務企画局シティプロモーション推進室の担当者は「市内を縦断して走る南武線の駅は市民の方にわかりやすい目印として記載した。ルート設定にあたっては、こちらから航空自衛隊にお願いしたわけでないが、結果的にたくさんの市民の方に楽しんでもらえそうなルートになってよかった」と話す。

南武線は乗換駅が豊富

JR南武線は1919年、多摩川の河原の砂利を運搬する目的で生まれた多摩川砂利鉄道がルーツ。1927年に私鉄の南武鉄道が川崎―登戸間で開業した。旧国鉄の路線となったのは1944年のことだ。現在は川崎―立川間(35.5km)と、尻手(しって)―浜川崎間(4.1km)の支線などで構成する。

川崎市内を縦断することから、都心と結ぶほかの路線との乗り換え利便性が高い。川崎区の川崎駅ではJRの東海道線と京浜東北線、京浜急行電鉄の京急本線・大師線、中原区の武蔵小杉駅ではJR横須賀線と東急電鉄の東横線・目黒線、高津区の武蔵溝ノ口駅では東急田園都市線・大井町線と接続する。東横線・目黒線は新丸子から元住吉まで、田園都市線は二子新地から鷺沼までが川崎市内だ。

武蔵溝ノ口駅は、東急線側の駅名は「溝の口」で表記が異なる。駅周辺の地名はどちらの駅名とも違う「溝口」だ。

南武線 武蔵小杉駅付近

武蔵小杉駅ではJR横須賀線や東急東横線などと乗り換えられる(記者撮影)

さらに多摩区には登戸駅と稲田堤駅。登戸で小田急電鉄の小田原線、稲田堤で京王相模原線に乗り換えられる。登戸駅周辺は長く続いた土地区画整理事業が終盤を迎えており、駅前には高さ140m、地上38階の高層マンションが建つ予定だ。稲田堤駅は6月2日に南北を結ぶ自由通路が全面開通し、踏切を渡らずスムーズな往来が可能になった。

小田急小田原線は多摩川を渡った1駅目の登戸から柿生(かきお)までが川崎市内だが、その先の小田原方面は東京都町田市との境を何度も通過する。新百合ヶ丘から延びる多摩線ははるひ野まで、京王相模原線は稲田堤と若葉台が市内に位置する。

登戸駅

登戸駅は小田急小田原線との乗換駅(記者撮影)

南武線 稲田堤駅

自由通路が完成した南武線の稲田堤駅。京王相模原線とは徒歩で乗り換え(記者撮影)

鉄道の記念イベントでも展示飛行

ブルーインパルスは1964年と2021年の東京五輪開会式で会場上空にスモークで5つの輪を描くなど、全国各地の記念イベントや航空祭の目玉企画の1つになっている。

鉄道に限っても2016年3月の北海道新幹線、2022年9月の西九州新幹線、2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸の開業日を盛り上げている。ただその人気のあまり、会場周辺では道路渋滞などの混雑を引き起こしてしまうといった課題もある。

等々力球場

「かわさき飛躍祭」メイン会場の等々力球場。奥には武蔵小杉のタワーマンション(記者撮影)

川崎市は飛躍祭のウェブサイトなどで「展示飛行時の等々力緑地周辺は大変混雑することが予想されます。展示飛行は等々力緑地外の飛行経路近辺でも観覧いただけますので、経路図をご覧いただき、混雑しない場所にて観覧いただきますようお願いいたします」と呼びかけている。

川崎市内を縦断し、通勤通学の足として日常の利用が多い南武線。市制100周年を祝うブルーインパルスの展示飛行の観覧でも活躍することになりそうだ。

(橋村 季真 : 東洋経済 記者)

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