中国アリババ、事業6分割後「初の通期決算」の中身

アリババは大胆な構造改革で成長の再加速を目指したが、まだ道半ばの状況だ。写真は浙江省杭州市の本社オフィス(同社ウェブサイトより)

中国のEC(電子商取引)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)は5月14日、2024年3月期の通期決算(訳注:アリババの会計年度は4月から翌年3月まで)を発表した。

これはアリババにとって、2023年3月に主要事業の6分割を柱とする大規模な構造改革に着手してから初の通期決算となる。決算報告書によれば、2023年度の売上高は前年度比8%増の9411億6800万元(約20兆3416億円)、 純利益は同10%増の797億4100万元(約1兆7235億円)を計上し、増収増益を達成した。

アリババは同時に、2024年1~3月期の四半期決算を発表。1~3月期の売上高は2218億7400万元(約4兆7954億円)と前年同期比7%の増収を確保したが、純利益は32億7000万元(約707億円)と同86%の大幅減益となった。同社の説明によれば、投資先企業の評価額の見直しに伴い199億元(約4301億円)の評価損を計上したのが主因だという。

国内EC事業は低空飛行

事業グループ別の業績をみると、国内EC事業を束ねて総売上高の約4割を稼ぐ「淘宝天猫(タオバオ・Tモール)コマース・グループ」は、1~3月期の売上高が932億1600万元(約2兆147億円)と前年同期比4%増加、調整後EBITA(利払い・税引き・償却前利益)は385億100万元(約8321億円)と同1%減少した。

「中国の家計は貯蓄水準が高く、一定の消費能力を持つ。だが、マクロ経済の(先行き不透明の)影響や不動産市況の低迷などが消費マインドを冷やしており、今後の消費動向を見極めるにはまだ時間が必要だ」

アリババの董事会主席(会長に相当)を務める蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)氏は、国内EC事業の現状について決算説明会でそうコメントした。

また、アリババのCEO(最高経営責任者)を務める呉泳銘氏は、国内EC事業の新年度の優先課題として(ECプラットフォームで販売する)商品の競争力向上とUX(ユーザーエクスペリエンス)の改善を挙げ、「ユーザーの購買頻度を増やすことでGMV(流通取引総額)を拡大したい」と述べた。

6大事業グループのなかで、1~3月期に売上高を最も大きく伸ばしたのは海外EC事業の「インターナショナル・デジタル・コマース・グループ」だった。同四半期の売上高は274億4800万元(約5932億円)と前年同期比45%増加し、総売上高に占める比率が12.37%と前年同期より3.29ポイント上昇した。

とはいえ、同グループの1~3月期の調整後EBITAは40億8500万元(約883億円)の赤字であり、損失額が前年同期の21億7100万元(約469億円)から大幅に増加、収益性の改善が急務になっている。

アリババのクラウド事業は、利益率が高いパブリッククラウドに集中して大幅増益を達成した(写真は同社ウェブサイトより)

一方、1~3月期に利益面のパフォーマンスを大きく向上させたのがクラウド事業の「クラウド・インテリジェンス・グループ」だ。同四半期の売上高は255億9500万元(約5532億円)と前年同期比3%の伸びにとどまったが、調整後EBITAは14億3200万元(約309億円)と同45%の大幅増益を達成した。

その背景についてアリババは、(利益率が低い)プロジェクト・ベースの受注を減らしてパブリッククラウドに集中し、プロダクトミックスの改善と経営効率の向上を図った成果だと説明している。

自社株買いに約2兆円投入

構造改革を断行して成長の再加速を目指したアリババだが、過去1年の株価の推移を見る限り、資本市場から評価されているとは言い難い。

アメリカのニューヨーク証券取引所に上場する同社のADR(アメリカ預託証券)は、2023年3月末時点で1単位当たり102.18ドル(約1万5984円)だったが、通期決算発表後の2024年5月14日の終値は79.51ドル(約1万2438円)と2割以上低い水準にある。

そんな中、アリババは株主への積極的な利益還元をアピールしている。2023年度は総額125億ドル(約1兆9554億円)もの自社株買いを実施し、流通株式の6.42%相当を買い戻した。

さらに今回の決算では、株主に対して通常の普通配当とともに特別配当を支払うと発表。配当金の総額は約40億ドル(約6257億円)に上る。

(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は5月15日

(財新 Biz&Tech)

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