「紅麹問題」で再浮上、"サプリ"は本当に安全か?

サプリメント

日本人が好きなサプリメント。受け身で適当なものを買うのではなく、「自分で調べて選ぶ」という意識を持っていただきたいと思います(写真:zhennyzhenny/PIXTA)

70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発した8万部突破のレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』に続き、『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん2 ベスト107レシピ』が発売され、発売7日で増刷するなど反響を呼んでいる。

『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選したレシピ集だ。

いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が小林製薬「紅麹問題」で再浮上する「"サプリメント"は本当に安全なのか?」について語る。

*このシリーズの1回目➡「紅麹問題」は"3つの基本、混同してる"人が多すぎだ

*このシリーズの2回目➡小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか?

後を絶たない「サプリメントの自主回収」

みなさんは「サプリメント」を飲んでいますか? 日本人はみんな、サプリメントが好きです。

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手軽に飲めて、健康を増進してくれるイメージのあるサプリメントですが、サプリメントは果たして安全なのでしょうか。

今回、死者まで出した「紅麹コレステヘルプ」が即刻回収になったのは当然のことですが、これ以外にも、過去に健康を害するおそれがあるとしてサプリメントが回収になった例は何例もあります。

前回、前々回記事では、「紅麹とベニコウジ色素の違い」「麹の取り扱いの難しさ」という見地から「紅麹コレステヘルプ」問題について述べさせていただきました。

ここでは「紅麹コレステヘルプ」というサプリメントが、なぜ事故を起こしたのか、「サプリメントの安全性」について考えていきたいと思います。

長年、食品加工の現場で仕事をしてきた私にすれば、「サプリメントの自主回収があった」と聞いてもとくに珍しいとは思わず、「またか」と思ってしまうぐらいです。

「アガリクス」は「発がん性がある」と注意喚起

たとえば、「アガリクス」というキノコを用いたサプリメントがそうです。

アガリクスには、抗腫瘍効果や血糖値降下作用などがあるとされるため、がんの予防目的などで飲まれています。

ところが、2006年にこの「アガリクス」のサプリメントが自主回収となっています。

ラットを用いた実験で「発がん性がある」として厚生労働省が注意喚起をしたためです。

ちなみに、回収となったサプリメントを出している会社は、誰もが知る大手食品メーカーの関連会社です。

サプリメントの世界に限らずですが、「大手だから安心」「大手から安全」というわけでは全然ないのです。

このシリーズの1回目の記事(「紅麹問題」は"3つの基本、混同してる"人が多すぎだ)で述べたとおり、「紅麹コレステヘルプ」は食品扱い(機能性表示食品)であり、安全審査は必要なく、国は安全審査を行っておりません

この「機能性表示食品」という言葉もあまり認知されていないので、ここで簡単に説明しておきましょう。

押さえておきたい「機能性表示食品」「トクホ」の違い

一般的に市販されているサプリメントには、下記の3つがあります。

「①特定保健用食品(トクホ)」

「②栄養機能食品」

「③機能性表示食品」


このうち、「①特定保健用食品(トクホ)」は、「コレステロールの吸収を抑える」など、特定の健康増進効果が期待できることを表示できる食品のことです。

トクホとして販売するには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。

「②栄養機能食品」は、ビタミンCやカルシウムなど、消費者庁が指定した特定の栄養成分の補給を目的とした製品です。個別の許可申請は必要ありません

そして「③機能性表示食品」は、メーカーが消費者庁に安全性や機能性に関するデータを届け出れば表示ができるもの

「脂肪の吸収を抑える」「高めの血圧を下げる」などの表示が可能です。届け出るだけでよく、国の審査はありません。「自主基準でいい」のです。

「機能性表示食品」は2015年に導入された制度で、当時の安倍晋三首相が「アベノミクス」の一環として規制緩和のために打ち出したものです。

トクホを取得するためにはかなりの時間と費用がかかるため、この「機能性表示食品」という制度は「メーカーにとって福音」ともいえるものでした。

その反面、「それで安全性が担保できるのか」という不安視する声は当時から出ていました。

まさに私自身も危惧していた一人です。

この制度が導入されて以降、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、「機能性表示食品」の市場は大きく伸びています。

2020年には「機能性表示食品」の市場が「トクホ」を抜き去り、拡大が続いています。

「機能性表示食品」というネーミングもまた絶妙です。

「公的なお墨付きのついた健康食品(サプリメント)」と誤解している人も多いのではないでしょうか

一方で、そもそも自分が飲んでいるサプリメントが「特定保健用食品(トクホ)」なのか「栄養機能食品」なのか「機能性表示食品」なのか知らない人も多いと思います。

同じく以前の記事(「紅麹問題」は"3つの基本、混同してる"人が多すぎだ)「"食品"には安全審査がないが、"添加物"は安全審査を通っている」と述べましたが、まったく同じことが「トクホ」と「機能性表示食品」にもいえるのです。

サプリメントを飲むなら、この「違い」と「裏側」をしっかり認識して選ぶことが、まず大事です。

「『自分で調べて選ぶ』という意識」を持つ必要がある

「市販されているのだから大丈夫だろう」「メーカー品だから安心だろう」などと受け身で適当なものを買うのではなく、「『自分で調べて選ぶ』という意識」を持っていただきたいと思います。

広告やイメージで飛びついてしまう、私たち消費者にも問題があるように思います。

本来は、市販されているサプリメントは一般的には安心して飲んでいいもののはずです。

しかし、このような事故が現実として起こっている以上、私たち消費者は「自分で自分の身を守る」という思考でのぞまなければいけないのではないでしょうか

次回記事ではさらに「サプリメントの安全性」について掘り下げていきたいと思います。

*このシリーズの1回目➡「紅麹問題」は"3つの基本、混同してる"人が多すぎだ

*このシリーズの2回目➡小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか?

(安部 司 : 『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事)

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