放送作家が伝授する「不適切にならず」ウケる話術

上司と部下 飲み会

「自分も相手も楽しいコミュニケーション」のコツをご紹介します(写真:EKAKI/PIXTA)
昨今は、コンプライアンスやハラスメント、SNSの炎上など、特に上の世代にとっては、何かときゅうくつな時代。とはいえ、自分を押し殺して当たり障りのないことばかり言っていては、おもしろくない人と思われるだけで、その他に何の印象も残せません。
ときには、不適切極まりない言い方が「人間関係のいいスパイス」になることも──。そんな「自分も相手も楽しいコミュニケーション」のコツを、『「おもしろい!」と思われる話し方のコツ』の著者で、一流放送作家の野呂エイシロウ氏に聞いてみました。

「部下との距離感」を一気に縮める秘策

軽口を叩いても許される関係性を築くためには、他愛もないことで構わないので、普段からその人と「コミュニケーションの回数を増やす」努力をしておくことです。

これは何も、たくさん話しかけろという意味ではありません。

いつもなら一往復で終わる会話のキャッチボールでも、少し工夫するだけでその回数を増やすことができます。

たとえば僕は、仕事柄、お菓子の手みやげをいただくことが多いのですが、1人では食べきれないので、後輩にあげることがよくあります。

その際、「よかったら食べて」とひと言だけで済ませるのではなく、

「お客さんからのもらい物でお礼を言わなきゃいけないから、どんなお菓子が入っていたかわかる写真をあとでもらっていい?」

などと伝えます。こうすることで、手みやげのおすそ分けも「コミュニケーションの回数を増やすツール」にすることができます。

相手としても、余ったものをただ横流しされるよりはうれしいはず。実際に写真をもらったら、「ありがとう。お客さんには内緒にしておいてよ」などと伝えれば、相手と秘密を共有することにつながり、さらに親密感が増します。

マルハラ。も「おもしろさ」で解決!

たとえば部下から「電車が遅延して、出勤が少し遅れそうです」と連絡があったとき、

「承知しました。」

とコメントの最後に「。」をつけて返事をすると、若者は怒っているような印象を受けて怖いと感じることがあるのだとか。

これは「マルハラ。」と呼ばれる現象で、絵文字やLINEスタンプに慣れ親しんだ若者特有の感じ方です。

でも、世代が違えば、感覚が違うのは当たり前。

僕も若い頃は“新人類”と呼ばれて、上の世代から宇宙人みたいにいわれていましたが、世代差なんて早く生まれてきたか、遅く生まれてきたかの違いだけで、基本は同じ人間です。

ムリして迎合したり、知ったかぶりをしたりせず、わからないことは若い人たちから素直に教わりましょう。

「承知しました。。。。。。。。。。。。。。

問題ないので、気をつけて出社してください!」

などと返事をしたうえで、部下が出社したら「さっきのマルハラになってないかな?」などと聞いてみてはどうでしょうか。

マルハラ対策?(編集部作成。文章は一部加工しています)

相手は遅刻しても安心することができますし、何より絶対にウケます(笑)。結果として、コミュニケーションの回数も増やすことができます。

「食事」や「飲み会」の誘い方

コンプライアンスに厳しい今の時代は、食事に誘うときもパワハラやセクハラにならないように気をつける必要があります。

たとえば、仕事帰りに新人の後輩を食事に誘うとします。

「このあと食事に行かない?」とストレートに誘うと、相手はいきなり「誘いに応じるか」「断るか」の選択を迫られてビビります。

上司や先輩の誘いは断りにくいので、いきなり食事に誘う前に、一段下がって「誘ってもいいかどうか」のお伺いを立てるとよいでしょう。

・もしこのあと時間があれば、食事に誘ってもいい?

・おなかすいたら、連絡ください

というと、相手を尊重した印象になるので、圧迫感を与えません。誘われる前に心の準備ができるので、相手が快く誘いに乗ってくれる確率が高くなります。

(お酒をたくさん飲まされるんじゃないか……)

(帰るタイミングを切り出せず、長居させられそうだ……)

特に、世代の異なる相手から食事に誘われることに慣れていないZ世代の若者たちからは、このように警戒されることがあります。

気持ちよく参加してもらうために肝心なのは「店選び」。

具体的には、「大衆居酒屋」などを避け、「寿司や焼肉の人気店をチョイスする」のが得策です。

リーズナブルな店で食事することが多い若者にとって、美味しい寿司屋や焼肉屋を知っているオトナは、「ひときわカッコよく見える」ことでしょう。

寿司屋や焼肉屋は、純粋に食事を楽しむ場所というイメージが強く、たくさん飲まされたり長居させられたりする心配もないので、安心感を与えることができます。

「オレが20代だった頃は、こんなもんじゃなかった」

「最近の若者は根性が足りない!」

食事の席で嫌われるツートップは「説教」と「自慢話」です。

酔っぱらった年長者から一方的にワーワー言われ続ける食事会なんて、地獄以外の何物でもありません。

せっかくの食事もお酒も人間関係も、一気に不味くなってしまいます。

パワハラにならない「苦言の呈し方」

もし苦言があるなら、「食事やお酒が運ばれてくる直前にサクッと済ませる」のがポイント。

たとえば僕は、連日遅刻が続いているAD(アシスタントディレクター)さんに注意したいことがあるときは、こんなふうに伝えます。

「おもしろい!」と思われる話し方のコツ: 一瞬で心をつかむ その場が盛り上がる (王様文庫)

「乾杯したら仕事の話はしないから、先に言っておくね。また遅刻するとプロデューサーが多分怒ると思うから、気をつけたほうがいいよ」

そして食事やお酒が運ばれてきたら「いただきます!」「乾杯!」で、あとは無礼講。飲みながらのグダグダ説教よりよっぽど気遣いが感じられ、相手の心に沁みます。

また、あなたが一番の年長者で、他のメンバーがみな若手という場合、必ずしも最後までいる必要はありません。

場が十分に温まったら、次のようにユーモアも織り交ぜて言ってみてはどうでしょうか。

「僕はここで失礼しますが、ここまでの分は支払いを済ませたので、このあとはみんな自腹でどんどんシャンパンでも開けて盛り上がって!」

そんな気前も引き際もいい上司のほうが「カッコイイな」と思われるものです。

(野呂 エイシロウ : 放送作家 戦略的PRコンサルタント)

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