ANAとJAL、14億の人口擁するインドの航空大手と提携…ビジネス・インバウンド需要に期待

 全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が、インドの航空大手と相次いで提携した。インドは世界最多の14億人超の人口を抱え、経済成長に伴う旅客増が見込まれる。両社は印航空大手と共同運航(コードシェア)に乗り出し、航空需要の取り込みを図る。(ニューデリー 井戸田崇志)

エア・インディア機(右)とインディゴ機(ニューデリーで)=井戸田崇志撮影

旅客は2割増

 日航は10月27日、羽田―デリー線と成田―ベンガルール線の2路線で、印航空最大手インディゴと共同運航を始める。

 共同運航は一つの航空便に複数の航空会社の便名を付けて運航し、それぞれの航空会社が座席を販売する。航空会社は自社便の搭乗率の向上が期待でき、提携先が運航する路線を自社路線とみなすため、実質的に運航路線を増やせる。

 日航はインディゴが運航中のインド国内線でも共同運航を行う方針で、日本から直行便がないチェンナイなどインド主要都市への乗り継ぎの利便性を高める。利用客は日航のマイルをためられる。

 全日空は5月下旬から印航空大手エア・インディアと共同運航を始めた。全日空の羽田―デリー線、成田―ムンバイ線と、エア・インディアの成田―デリー線の3路線が対象だ。共同運航による販路の拡大で、6~8月の全日空の2路線は、旅客数が前年同期比で約2割増えたという。

 全日空の片桐常弥インド総代表は「共同運航便を国内便に拡大し、両国間のビジネス需要や、インドからのインバウンド需要を取り込みたい」と意気込む。

経済成長の魅力

 背景には日印両国の人の往来の活発化がある。

 在インド日本大使館によると、インドに進出した日本企業の拠点数は2022年時点で4901か所に上り、10年前と比べ2・7倍に増えた。企業にとって巨大市場の魅力は大きく、ビジネス客の往来は増加が見込まれる。

 訪日客も増えている。日本政府観光局によると、23年の訪日インド人客数は10年前の2・2倍にあたる16万6394人だった。経済成長で所得水準が上がれば、訪日客のさらなる上積みが期待できる。

 インド政府によると、23年度(23年4月~24年3月)のインドの国内線と国際線の旅客数は2億2000万人となり、コロナ禍前の水準を上回った。モディ首相は「航空ネットワークの発展は経済成長を促進する」として、既存空港の拡張や新空港の建設に注力する。

 国際空港評議会(ACI)によると、インドの航空需要は米中に次ぐ世界3位。空の旅を巡る航空各社の競争が激しさを増しそうだ。

  ◆インディゴ= 格安航空会社(LCC)として2006年に運航を始め、急成長している。インド国内線では85以上、国際線では30以上の都市に就航し、インド国内線のシェア(占有率)は6割に達する。国際航空連合には加盟していない。

  ◆エア・インディア= 1932年設立。国営企業時代に経営不振に陥り、2022年にインド最大の財閥タタ・グループの傘下に入った。シンガポール航空も出資を予定する。ANAなどが参加する国際航空連合「スターアライアンス」の加盟社。

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