「石油は非常に大事で一気にカーボンニュートラルにはいかない、低炭素と石油を同時に考えていく」…エネオスホールディングス・宮田知秀社長

 脱炭素が世界の潮流になる中で、石油業界も二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす対応を迫られている。石油元売り大手エネオスホールディングスは、再生可能エネルギーの活用にも力を入れている。企業文化の立て直しも含め、宮田知秀社長に戦略を聞いた。(聞き手・長原和磨)

能登半島地震でも再認識

 ――石油業界の置かれている環境について。

エネオスHDの宮田社長(東京都千代田区で)=佐藤俊和撮影

 「石油を始めとする化石燃料は、(温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにする)カーボンニュートラルに向かっていたが、最近はまた、『低炭素』を意味するローカーボンという言葉を聞くようになった。

 当社としても、今の時点においては石油は非常に大事で、一気にカーボンニュートラルにはいかない。低炭素という意味では、(CO2と水素でつくる)合成燃料もある。いずれにしても、石油が中心の位置にあるのは変わらない。プラントも関連するオペレーションも大切だ。

 この2、3年、石油は斜陽産業みたいにとらえられてきたが、揺り戻しが起きている。策定中の政府のエネルギー基本計画に沿った形で、低炭素と石油を同時に考えていく。

 能登半島地震では、緊急時には、石油が大事だということが再認識された。石油連盟を含めて当社も同じように考えている。航空機や自動車を始め、モビリティーの多くは、液体燃料なしにやっていけない」

原子力発電と再生エネ生かす

 ――脱炭素に向けた取り組みを。

 「液化天然ガス(LNG)の火力発電だけでは、日本のエネルギーは支えられない。原子力発電と再生エネを生かすべきだ。

 ローカーボン(低炭素)ソリューションということで、LNGも大事なスコープにある。将来、(二酸化炭素を回収、貯留する)CCSが実現すれば、(化石燃料を分解する)ブルー水素ができる。ガスも重要な領域として、見直している。

 もう一つは、再生エネ。グループにリニューアブル・エナジーという会社がある。洋上風力、陸上風力、太陽光も、(エネルギーを運ぶ)パイプラインを増やして事業領域を広げていきたい。

 対象を絞らずに、すべてやっている。太陽光は開発場所が限られるため、風力が主力になるだろう。洋上風力は政府公募で、秋田県内の事業者に選ばれた。この会社には技術も実績もある。海外勢も含めて連携し、プロジェクトを進めていきたい」

 ――2代続けて経営トップがセクハラで辞任した。

宮田社長

 「グループで問題があったのは、持ち株会社と事業会社のエネオスだ。社内でアンケート調査を実施し、会社の文化について掘り下げて考えた。月に1回くらいのペースで、しつこく調査をやっている。

 会社があるべき姿と、現在の会社の姿との間にギャップがあることがわかった。内向きだとか、上意下達だとか。当社は統合を繰り返したため、社員の思いや感じ方が大きく異なる。問題を徹底的に洗い出したい。

 必死に考えているのは、パフォーマンスをしっかり出そうということ。人として組織として結果が出れば、変な文化はなくなる。多様性も求める。モノカルチャーでは通用しない。パワハラやセクハラをしたら、パフォーマンスは上げられない。部下が上司を評価する仕組みも導入した。

 トレーディング系の投資を始め、社員への投資もしっかり増やしたい。コロナもあり、この数年は抑えてきた。役員や管理職の育成プランもしっかり進める。人への投資が最もリターンを期待できる」

  ◆宮田知秀氏(みやた・ともひで)  1990年東工大院修了。東燃(現エネオス)入社。エネオスホールディングス代表取締役副社長執行役員を経て、2024年4月から社長。大阪府出身。休日はプールやジムで汗を流す。

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