トランプ氏が公約する「デカップリング」、中国はどう対応するか
トランプ政権の「再起動」で最も注目されているのが中国との関係だ。とりわけ経済では「中国製品に60%の関税をかける」との公約を掲げている。断行されれば事実上の「デカップリング(経済分断)」となり、失速中の中国経済に壊滅的なダメージを与えかねない。中国は経済政策でどう対抗していくのか?
新中華経済圏の構築はデカップリングの対抗策になるか?
中国の経済成長率の低下について関志雄野村資本市場研究所シニアフェローは、不動産バブルの崩壊や人口減少に伴う労働力不足に加えて「米国の技術封鎖などを引き起こした貿易摩擦が深く影響している」と指摘している。それでは中国が米国のデカップリング政策に対抗して、グローバルサウスの新興国との間で新たな「中華経済圏」の構築に乗り出すのか?
これについて関シニアフェローは「一帯一路などの新興国との経済圏構築を目指す構想には問題が多い」として懐疑的な見方を示している。日本記者クラブの記者会見で、M&A Onlineの質問に答えた。「一帯一路やグローバルサウスで関係構築している国々は、新興国か発展途上国で経済の基盤が弱い」(関シニアフェロー)ため、米国市場の代替は難しいという。
「中国はこれらの国々にインフラ投資をしているが、(投資の)回収は容易ではない。一歩間違えれば、不良債権の罠(わな)にはまる」と警鐘を鳴らす。一帯一路構想やグローバルサウス諸国への経済支援は「成功すれば中国版のマーシャル・プラン*になるが、試行錯誤で慎重に進めていくことになるだろう。実現までに100年以上かかる可能性もある」と、極めて慎重な見方を示した。
中国国内市場だけで生き残れるか?
中国は現在、デカップリング対策として、内需を強化する方向に向かっているという。「サプライチェーンの川上では主要部品の国産化を進め、川下では作った製品をできるだけ国内で消費する方針だ」(関シニアフェロー)という。ただ、「中国で完全に独立したサプライチェーンを構築することは困難だ」とも指摘。中国が米国に「逆デカップリング」を仕かけるのは難しそうだ。
一方、中国で深刻化している労働力不足を解消するために外国人労働者の受け入れに転じる可能性については、「移民の受け入れは先進国で社会問題化していることから、選択しないだろう。むしろインドやベトナムなどに工場を建設して、生産を移管することで労働者不足を乗り切ろうとしている」(同)と否定的だ。「中国でも日本と同様に定年延長や年金支給を繰り下げるなど、高齢者を労働市場に組み入れる努力をしている」(同)という。
*マーシャル・プラン(欧州復興計画)=第二次世界大戦で被災したヨーロッパ諸国のために、米国が資金提供した復興援助計画。当時の米国務長官ジョージ・マーシャル氏が提唱した。
文:糸永正行編集委員
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11/15 06:30
M&A Online