対話型AIで英語教育を効率的に!エキュメノポリス<早稲田大>-大学発ベンチャーの「起源」(95)

エキュメノポリス(東京都新宿区)は、コンピューターとの対話による教育サービスを手がけるAI(人工知能)サービスベンチャー。2014年に早稲田大学大学院基幹理工学研究科で博士号を取得した松山洋一CEO(最高経営責任者)が、2022年5月に起業した。

1万人の英語能力判定を正確かつ迅速に

松山CEOは博士号を取得した後に、米カーネギーメロン大学で引き続き会話AIの研究に当たる。そこで開発に携わったAIサービス「SARA」が高い評価を受け、日本でのAIサービスに乗り出すことにした。

2023年4月に、同社が開発した英会話能力判定システム「LANGX Speaking」を早大に納入。早大はグローバルエデュケーションセンターの英語科目「Tutorial English」での英語能力判定テストに活用している。同科目は毎年約1万人の履修者がいる人気科目で、精度が高い能力判定の効率化が課題となっていた。

「LANGX Speaking」はディスプレー上のキャラクター(AIエージェント)と会話しながら、対話内容や発音、表情などの情報を元にAIが英語スキルを分析する仕組み。判定のインタラクティブ(双方向性)性と判定基準がブレない一貫性を実現した。

AIエージェントとの会話は画一的ではなく、学習者のレベルや理解状況をリアルタイムに推定して、簡単な話題から複雑な社会問題まで学習者の能力と関心に応じた話題で対話していく。その結果、人間の専門家の平均値を大きく上回る能力診断精度を実現しているという。

大学から高校、そして個人へ

英会話能力診断テストの結果は、AIモデルにより自動で診断され、スコアだけでなく判断根拠や次の学習課題などを詳細にフィードバックする。学習者は自身の英語力の強みと弱みを把握し、今後の英会話学習の指針を得られる仕組み。英会話能力診断に加えて英会話トレーニングをセットにした「英会話学習パッケージ」も提供している。

2023年9月には千葉県教育委員会と連携して、千葉県立成田国際高等学校で「LANGX Speaking」を活用した「話すこと」の力を高める実証研究を実施。8回の家庭体験学習を通じ、初回と最終回のスピーキング能力判定結果から英語力の向上について検証した。

2024年1月にはZ会グループのエデュケーショナルネットワークと代理販売契約を結び、大学など高等教育機関に向けて「LANGX Speaking」の本格販売に乗り出している。現在は教育機関向けが主力だが、はるかに市場規模が大きい個人学習マーケットも狙う。

同8月には、Pre-Aラウンドのファーストクローズとして、Beyond Next Ventures、科学技術振興機構(JST)、三菱UFJキャピタル、マニエスグループを引受先とする第三者割当増資を実施し、資金調達に成功した。引き続きセカンドクローズに向けて、国内外の投資家からの資金調達を目指す。

文:糸永正行編集委員

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