「大和ハウス」がCVCファンド投資を本格化 新たな事業の創出目指す

ハウスメーカー大手の大和ハウス工業<1925>のCVC(企業が自己資金でファンドを組成し、スタートアップなどに出資する取り組み)ファンドによる投資が本格化してきた。

同社は2023年11月に将来の成長の源泉となる新たな事業の創出を目的に、CVCファンドの運営会社となる大和ハウスベンチャーズ(東京都千代田区)を設立。

2024年1月に「大和ハウスグループ共創共生1号投資事業有限責任組合(シナジーファンド=ファンド規模50億円)」を、翌2月に「大和ハウスグループ未来価値共創1号投資事業有限責任組合(グロースファンド=同50億円)」をそれぞれ立ち上げた。

シナジーファンドは2024年4月26日に、空間データを活用するサービスを提供しているスペースリー(東京都渋谷区)に出資。これに続き2024年5月10日には、グロースファンドが解体工事専門会社と施主をつなぐプラットフォーム(商品などの提供者と利用者をつなぐ基盤)を運営するクラッソーネ(名古屋市)に出資した。

ハウスメーカー業界では、積水ハウス<1928>が2024年4月に「積水ハウス投資事業有限責任組合(同50億円)」を設立しており、業界大手2社が相次いでCVCファンド投資に乗り出したことで、建築関連のスタートアップには追い風が吹くことになりそうだ。

創業100周年の2055年に向け投資

大和ハウスはCVCファンドの呼称を「大和ハウスグループ“将来の夢”ファンド」としており、2055年の創業100周年に向けて、“将来の夢”との関連が深く「生きる歓びを分かち合える世界の実現」に役立つ事業に投資するという。

今回投資したスペースリーは写真や動画、コンピュータを用いて生成した画像、VR(仮想現実)コンテンツなどのデータを活用して、営業活動やマーケティングなどに利用できる商品を手がけており、大和ハウスグループも2023年8月から全国の住宅営業所のほか、分譲マンションの買取再販、オフィス賃貸、物流施設などの分野に導入している。

大和ハウスでは今回の出資に合わせてスペースリーとの間で、住宅、建設、不動産業界の課題解決に役立つサービスの開発で業務提携した。

一方、クラッソーネは全国2000社以上の解体工事専門会社が登録している解体工事のプラットフォームを運営しており、空き家問題や街の老朽化などのDX(デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化が進みにくい分野で、解体業界の合理化に取り組んでいる。

グロースファンドは大和ハウスベンチャーズが出資し、イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズ(東京都渋谷区)が運営しているファンドで、社会課題の解決に取り組んでいるクラッソーネの事業を高く評価し出資を決めた。

オープンイノベーション施設を開設

積水ハウスのCVCファンドは今後、有望なスタートアップ企業への投資を行い、新たな技術やサービスの事業化を支援するほか、既存事業である建設業や不動産業でも、顧客獲得や設計、生産などの業務改善に役立つ企業に投資する。

2024年秋には東京都港区赤坂にオープンイノベーション(社内外の技術やサービスを組み合わせて革新的な価値を創り出す取り組み)施設「InnoCom Square(イノコム・スクエア)」を開設し、産官学が集う価値創造の場を提供する予定だ。

文:M&A Online

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