【ローソン】M&Aで店舗網拡充、TOBによる非公開化でどうなる?

国内コンビニエンスストア第3位のローソン<2651>がKDDI<9433>のTOB(株式公開買い付け)を受けて上場廃止となる見通しだ。現在の親会社である三菱商事<8058>との折半出資で、両社による共同経営となる。国内で急成長してきたコンビニ業界だが、大手企業の子会社として誕生した経緯からM&Aで数々の親会社を渡り歩いてきた企業が多く、ローソンも例外ではない。

「ローソン」ブランドの起源は米国の牛乳販売店

ローソンの源流はセブンーイレブン同様、米国にある。1939年に米オハイオ州で酪農家のJ・J・ローソンによって創業されたコンビニチェーンだ。看板のロゴマークにミルク缶があしらわれているのは、牛乳販売店としてスタートしたため。

1959年に米コンソリデーテッド・フーズに買収され、牛乳に加えてパンや卵、オレンジジュース、ハム、サワークリームポテトチップスディップなどの食品を販売していた。

1974年にスーパーマーケット大手のダイエーがコンソリデーテッドフーズ社とコンサルティング契約を結び、セブン―イレブンが日本に初上陸した2年後の1975年4月に ダイエーの100%子会社としてダイエーローソンを設立した。同6月に大阪府豊中市で国内1号店となる「桜塚店」をオープン、西日本を中心に店舗網を拡大する。


ダイエーの経営不振で三菱商事が親会社に

一方、東日本では1980年9月に「キャバレーハワイ」などを経営していたTVB(トライアル・ベンチャー・ビジネス)社が運営するTVBサンチェーンと業務提携。1982年には「ローソン」と「サンチェーン」を合わせて1000店舗、1988年には5000店舗を突破する。1989年3月にローソンジャパンとTVBサンチェーンが合併し、ダイエーコンビニエンスシステムズに社名変更した。

サンチェーンの吸収合併後も1992年10月に山口県を地盤とする丸久(現リテールパートナーズ<8167>)からコンビニチェーンの「パコール」を買収。1996年11月には山陰地方でコンビニチェーンを展開するエーアンドビーを完全子会社化し、全45店舗をローソンへ転換して島根・鳥取両県へ進出する。1997年7月には沖縄県に初出店し、全都道府県への進出を果たす。

設立以来の親会社だったダイエーの業績不振から、2000年2月に三菱商事と業務提携契約を締結。同7月に東証1部・大証1部へ上場する。2001年2月に筆頭株主がダイエーから三菱商事に交代、同5月に三菱商事出身の新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)がローソン社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した。同8月にはダイエーが経営再建のためローソン株を売却し、同社の関連会社からも外れる。


地方のコンビニチェーンを買収して店舗網を拡充

ローソンは親会社が代わってもコンビニチェーン買収の手を緩めなかった。2004年10月22日に岩手県を中心に「ホットスパー」131店を展開していたベルセンターから、東北スパーの営業譲渡を受け、店舗をローソンに転換。2008年1月には東京でコンビニ展開をしていた新鮮組本部とフランチャイズ契約を結び、「新鮮組」「ジャストスポット」を「ローソン」に切り替えた。

同9月には東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県で99円均一ショップの「SHOP99」を運営する九九プラスを約39億8000万円でTOBして子会社化。100円均一ショップの「ローソンストア100」に転換している。

2009年2月にレックス・ホールディングスから、首都圏でコンビニ「am/pm」を運営するエーエム・ピーエム・ジャパンの全株式と全貸付債権を約145億円で取得して子会社化を発表。しかし、同5月に700店舗以上での「am/pm」ブランドの存続を求めた米国法人エーエム・ピーエム・インターナショナルとの調整がつかず、ローソンは買収を断念。エーエム・ピーエム・ジャパンは2009年12月にファミリーマートに売却され、2010年3月には吸収合併された。

売却もある。同12月に沖縄県内で展開する直営1店、フランチャイズ店舗133店を新会社のローソン沖縄へ移管した上で、同社株式の51%を地元スーパーのサンエー<2659>に30億6000万円で譲渡した。

コンビニ以外への参入もある。2010年12月にCD・DVDなど音楽映像商品の輸入・販売を手がけるHMVジャパンの全株式を18億円で取得、子会社化した。2014年10月には三菱商事系投資ファンドの丸の内キャピタルから、高級スーパーを運営する成城石井の全株式を364億円で取得し、完全子会社化している。


KDDIの出資と非公開化で注目されるM&A戦略

その一方で本業であるコンビニの買収も加速した。2015年2月に高知県を地盤とするサニーマートから、コンビニ事業の一部を取得。共同新設分割によりサニーマートが51%、ローソンが49%を出資する合弁会社「ローソン高知」を設立し、サニーマートが運営する「スリーエフ」67店舗を「ローソン」に転換した。同7月にはセーブオンから長野県内のコンビニ27店舗を会社分割により取得。「セーブオン」ブランドで営業していた27店舗を「ローソン」に転換している。

スリーエフからは2016年6月に長野県内のコンビニ12店舗を3億7500万円で、同9月に千葉・埼玉県の13店舗を33億6000万円で、2017年6月に神奈川県と東京都の281店舗を117億円で取得。スリーエフ70%、ローソン30%の出資比率で設立した合弁会社L・TF・PJの下、「ローソン・スリーエフ」ブランドで共同運営している。

2021年3月にはポプラ<7601>が展開するコンビニ店舗の「ポプラ」「生活彩家」「スリーエイト」ブランドで営業していた店舗のうち、山陰地方の140店舗を「ローソン・ポプラ」に転換した。これに先立ち2014年12月にローソンはポプラと資本業務提携し、現在は同社に18.2%を出資している。

ポプラの店舗をブランド転換した「ローソン・ポプラ」(同社報道資料より)

そして2024年4月をめどにKDDIがローソン株をTOBで取得し、四半世紀近く掲げてきた上場企業の看板を下ろす。三菱商事とKDDIの共同経営がローソンの業績にどのような影響を与えるかは全くの未知数だ。非上場となる新体制での経営戦略を知る上でも、今後のM&Aの動向に注目だ。


ローソンのM&A一覧(2008年4月以降)

公表日
内 容
取引総額
(億円)
2008年4月23日
顧客向けクレジットカード事業をクレディセゾン<8253>に売却
6.69
2008年7月15日
九九プラス<3338>をTOBで子会社化
39.8
2009年2月25日
コンビニのam/pmを運営するエーエム・ピーエム・ジャパンを子会社化
145
2009年9月28日
沖縄県のコンビニ事業をサンエー<2659>に譲渡
30.6
2010年10月28日
音楽・映像ソフト販売のHMV ジャパンを子会社化
18
2013年7月19日
エーザイ<4523>から土壌用肥料メーカーのエーザイ生科研を買収
非公表
2014年9月30日
三菱商事<8058>傘下でスーパー運営の成城石井を子会社化
364.2
2014年12月17日
高知を地盤とするサニーマートからコンビニ事業の一部を取得
非公表
2015年5月11日
セーブオンから長野県のコンビニ事業の一部を承継
非公表
2016年5月27日
スリーエフ<7544>からコンビニ12店舗を取得
3.75
2016年8月4日
スリーエフ<7544>から千葉・埼玉地区のコンビニ事業を取得
33.6
2016年9月6日
ポプラ<7601>から山陰地区のコンビニ事業を取得
6.76
2016年9月16日
TOBにより三菱商事<8058>の連結子会社となる
1440.21
2017年4月12日
スリーエフ<7544>から神奈川県や東京都などのコンビニ事業を取得
117
2017年11月22日
シー・ヴイ・エス・ベイエリア<2687>からローソン店舗の一部を取得
48.34
2020年9月10日
ポプラ<7601>からコンビニ事業の一部を取得
7.31

この記事は企業の有価証券報告書などの公開資料、また各種報道などをもとにまとめています。

文:M&A Online

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