【2024年1月 TOB】ベネッセの大型MBOなど7件が始まる

2024年1月に届け出があったTOB(株式公開買い付け)は7件と、前年同月より2件多かった。規模が最も大きいのが通信教育「進研ゼミ」などを展開するベネッセホールディングスのMBO(経営陣による買収)案件で、総額は2079億円に上る。MBOの一環として行われるTOBはほかに、食品スーパーのアオキスーパー、給与計算サービスのペイロールを対象に始まった。

グローセル株の買付価格を引き上げ

2023年のTOB件数は年間74件(前年比15件増)と2009年(79件)以来14年ぶりの活況となったが、年が変わった1月も昨年来の流れを引き継いで滑り出した格好だ。

半導体商社のマクニカホールディングスは傘下企業を通じて同業のグローセルに対するTOBを1月30日に始めたが、1株あたりの買付価格を昨年11月末に公表していた645円から750円に引き上げた。

旧村上ファンド系の投資会社、南青山不動産(東京都港区)によるグローセル株の5%を超える新規保有が昨年12月に判明して以降、グローセルの株価が買付価格を上回る高値圏で推移していることが理由だ。3度の買い増しの結果、グローセルに対する南青山不動産の所有割合は16.67%に達している。

◎2024年1月に開始されたTOBの一覧 (HDはホールディングスの略)

開始 対象会社 買付者 買付代金
  1/9 アオキスーパー 創業家 107億円
1/22 グッピー メドレー 54.5億円
1/23 T&K TOKA 米ベインキャピタル 319億円
1/25 ペイロール 米TAアソシエイツ 240億円
1/30 ベネッセHD 創業家とスウェーデンEQT 2079億円
  〃 グローセル マクニカHDの傘下企業 190億円
1/31 東邦金属 太陽鉱工 29.9億円

香港オアシス、IJTT株の15%超を取得

一方、1月中にTOBを終えたのはMBOとして国内最大となった大正製薬ホールディングスの案件をはじめ5件で、いずれも成立した。大正製薬ではオーナー家の資産管理会社が行ったMBOに5175億円相当の応募があった。今後、MBOに応じなかった株主が保有する株式の買い取り手続きを進め、買収総額は7000億円規模となる見込み。

また、独立家投資会社のスパークス・グループが実施したいすゞ自動車傘下の自動車部品メーカー、IJTTに対するTOBは買付価格の引き上げと買付期間の延長を経て成立した。しかし、TOB成立後、物言う株主として知られる香港投資ファンドのオアシス・マネジメントがIJTT株の14.23%を新規保有し、さらに15.71%まで買い増したことが明らかになっており、何らかの株主提案を突きつけられる可能性が出てきた。

ベネワンTOBの帰趨は2月に持ち越し

TOBの期間を延長した案件は1件。医療情報サービス大手のエムスリーは福利厚生代行のベネフィット・ワンに対するTOB(開始は昨年11月15日)を2月15日まで再延長した。ベネワンをめぐっては昨年12月初めに第一生命ホールディングスが対抗TOBの予定を発表し、現在、ベネワンと親会社のパソナグループとの協議が続いている。

第一生命はエムスリーの1株1600円を3割強上回る2123円の買付価格を提示。このため、ベネワンとパソナの両社は第一生命の提案内容について、企業価値や株主共同の利益の観点などから精査したうえで対応を決める。第一生命はベネワンとパソナグループの賛同を前提とし、当初1月中旬にもTOBを始める予定だったが、その時期を2月中旬に延期している。

文:M&A Online

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