愛車のETC車載器はまだ使えるの!? 数年前に騒がれた「ETC2022年問題」はどうなった? もうひとつの「2030年問題」とは

高速道路を通行するクルマの94.7%、つまりほとんどのドライバーが利用しているのがETCです。そんなETC車載器ですが、「2022年12月1日から一部の機種で使えなくなる」というニュースが取り沙汰されていました。これは「ETC2022年問題」と言われていましたが、いまもまだ古いETC機器は使えているようです。今後はどうなるのでしょうか。

2007年製造以前のETC車載器が使えなくなる

 高速道路の料金支払いで、多くのドライバーがが利用しているのがETC(自動料金収受システム)です。

 そのETCが「2022年12月1日から一部の機種で使えなくなる」という、いわゆる「ETCの2022年問題」が一部の利用者の間で取り沙汰されていました。

 しかし、2024年11月現在、使えなくなったという話は聞きません。これは単なるウワサだったのでしょうか。

ETCの利用率は高く、2024年8月現在、ETCの利用率は全体の94.7%だ

ETCの利用率は高く、2024年8月現在、ETCの利用率は全体の94.7%だ

 結論から言えば、これはウワサではなく本当の話です。

 実は2005年12月に電波法が改正されており、この時に2007年までに“ある対応”を済ませたETC車載器でないと販売できないことになっていたのです。

 この“ある対応”というのは、電波の混信を防ぐ目的で設定されていた周波数帯ごとの不要電波(Spurious:スプリアス)の許容量を低減するというもの。これは国際的な無線通信規則 (ITU Radio Regulations、略称:RR)において施行されたことに応じて改正されました。

 これにより、「2007年以前の規格で製造されたETC車載器を使うと電波法違反になる」ことになったのです。

 ただ、この施行については15年間の経過措置が設けられ、その4年ほど前の2018年9月3日に改めてその期限が2022年11月30日とする発表が行われました。

 つまり、この発表が「ETCの2022年問題」として取り沙汰される要因となったのです。でも、それならすでに電波法違反になるETC車載器が出てきているはずですが、現時点でそんな話は聞きません。

 実は、この施行を前に全世界で蔓延した新型コロナウイルスが状況を大きく変えていたのです。

 この影響によってETC関連設備の整備が遅れ、それに伴って総務省は2021年8月3日に「省令第75号」で新スプリアス規格への移行期限を“当分の間”施行しないことを決定。これによって、2007年前の規格で製造されたETC車載器を使っても、当面は電波法違反に問われないこととなったのです。

 ここで勘違いしないでほしいのは、今は2005年12月に改正された電波法の施行が保留になっているだけで、これがなくなったというわけでは決してないということ。つまり状況が整えば、この改正は間違いなく施行されることになっています。

 ただ、この新スプリアス規格についてはETC車載器メーカーも把握しており、事前に対応済みとしたメーカーがほとんどでした。そのため、対象となるETC車載器は限定的とも言われています。

もうひとつの新たな対策「ETCの2030年問題」とは?

 そして、もうひとつ、ETC車載器には注意しておくべき「2030年問題」があります。

 これは、ETCシステムにおけるセキュリティ機能向上を目的とした規格変更に伴うもので、遅くとも2030年までにこの新規格に未対応のETC車載器は使えなくなってしまうというものです。

 現時点でこの問題が発生しているわけではありませんが、国土交通省によれば、「昨今の情報機器の能力向上に伴うセキュリティ脅威の増大への備えとしてセキュリティ機能を向上させるため」としています。

 ただ、具体的な変更時期は未定で、「現行のセキュリティ(車載器、カード)に問題が発生しなければ最長で2030年頃まで」(国土交通省)に変更予定としていますが、問題があれば時期は早まる可能性もあるそうです。

 とくに、この対象となるETC車載器は2022年問題のケースよりもはるかに多く、その影響はずっと大きくなることが予想されています。

 こうした状況を踏まえると、使用中のETC車載器がこれらの問題に対応しているかを確認しておくことが重要です。では、使用中のETC車載器の対応状況を確認するにはどうすればいいのでしょうか。ここからはその見分け方を紹介します。

 ひとつは車載器管理番号を確認する方法で、この見分け方がもっとも確実な方法です。具体的には、(1)取扱説明書/保証書(2)車載器セットアップ証明書などで確認するもので、表示されている管理番号の最初の数字が「0」であった場合は旧セキュリティ規格で、「1」である場合は新セキュリティ規格となります。

 しかし、取扱説明書/保証書、セットアップ申込書は紛失してる人もいるでしょうし、車載器本体で確認するにも埋め込んで取り付けられていれば確認は難しいでしょう。

 そんな時は3つめの方法として、車載器本体のカード挿入口にある識別マークで確認します。

 まず「ETC車載器」の場合は、挿入口に「●●●」のマークがあれば新セキュリティ規格車載器で、なければ旧セキュリティ規格車載器となります。

 次に「ETC2.0車載器」「ETC-DSRC車載器」の場合は、ETC2.0のロゴマークが本体に記載されているか、カード挿入口に「■」マークがなければ新セキュリティ対応車載器。車載器本体に「DSRC/ETC」のロゴマークが入っていたり、「ETC2.0」であってもカード挿入口に「■」マークがあれば旧セキュリティ規格車載器となります。

※ ※ ※

 2022年問題も2030年問題も実施される明確な時期は決まっていませんが、該当するETC(あるいはETC2.0)車載器が今後使えなくなることは決定事項となっています。

 通行料金を支払うためにETC車載器の自己負担しているのに、新たな車載器への買い換えを要求されるのは釈然としませんが、通信を使っている以上、これは他の分野でもセキュリティ対策として負担が強いられることと違いはありません。

 まずは現在使用しているETC車載器を確認し、もし、新セキュリティ規格に未対応であれば今のうちに買い換えの準備を進めていくことがオススメしたいと思います。

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