サーキットで「格上の性能」を発揮! ワークス発のアップグレードキットとは? 走りを最適化する「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」の実力を体感

ポルシェのモータースポーツ活動と密接な関係にあるハイパフォーマンスモデル「GT」シリーズ。ポルシェジャパンは2024年10月5日、そんな高性能モデルを対象とした特別なチューニングキット「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」を発表しました。果たしてどのような内容のキットなのでしょうか?

レース由来の技術とノウハウが凝縮した「GT」シリーズ向けの高性能化キット

 ドイツのレーシングチーム・マンタイレーシングの高い技術力とモータースポーツ由来のノウハウが凝縮されたポルシェ「GT」シリーズ向けのパフォーマンスキット「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」が、日本市場に導入されることになりました。

「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」を装着した「911 GT3」

「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」を装着した「911 GT3」

 ポルシェジャパンが2024年10月5日に日本導入を開始した「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」は、ポルシェのモータースポーツ活動と特に密接な関係にあるハイパフォーマンスモデル「GT」シリーズを対象とした特別なチューニングキットです。

 このパフォーマンスパーツの開発を手がけたマンタイレーシングは、1996年にオラフ・マンタイ氏が創業。同年のポルシェスーパーカップに参戦して以来、ポルシェ車を中心にモータースポーツ活動に取り組んできました。

 1997年には、並行して市販車のチューニングを手がけるブランド・マンタイモータースを立ち上げ、モータースポーツ活動で培った技術と知見をフィードバックしたチューニングカーを手がけるようになりました。

 そんなマンタイレーシングにとって大きな転機となったのは2013年。さまざまなブランドの車両でレースに参戦し、輝かしい実績を積んできたレーダー兄弟が2001年に創業したレーダーモータースポーツとの合併を発表したのです。

 新生マンタイレーシングは同年、ポルシェのパートナーとなり、ポルシェが株式の51%を所有するグループ会社に。以来、ポルシェのワークスチームとして活躍しています。

 そんなマンタイレーシングのスゴさは、ドイツ・ニュルブルクリンクで開催される耐久レースで通算54勝を挙げた実績が物語っています。2024年シーズンは、WEC(FIA世界耐久選手権)のLM GT3クラス、DTM(ドイツツーリングカー選手権)、ニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦。

 直近では、9月15日に富士スピードウェイで開催されたWECの第7戦で、92号車がクラス2位でフィニッシュし、シーズン最終戦を待たずにLM GT3クラスのドライバー及びチームタイトルを獲得しています。

 輝かしい戦績を収めているマンタイレーシングが手がける、ポルシェ「911」のレーシングモデルの開発によって磨かれた技術を惜しみなく投入したのが、本記事でフォーカスする「マンタイパフォーマンスキット」。対象モデルがサーキット走行を意識した「GT」モデルに限定される理由は、こうしたキットの生い立ちにあります。

 ただし、誤解してはならないのは、決してプロフェッショナルドライバーを対象としたキットではない、ということ。それを裏づけるように、マンタイレーシングのブランド担当であるミヒャエル・グラスル氏は、「『マンタイパフォーマンスキット』はファインチューニングを目的としたものであり、より安心してドライブできることを重視している」といいます。

 それを物語るのが、とある「911 GT3 RS」オーナーのエピソードです。

 そのオーナーは、クラッシュを喫した愛車の修理依頼を依頼すべくマンタイレーシングを訪れた際、「愛車のドライビングが難しい」と語っていたのだとか。そこでマンタイレーシングの担当者は、より安心してサーキットを走れるよう、「マンタイパフォーマンスキット」の装着を勧めたといいます。

 自らのスキル不足が愛車をクラッシュさせてしまった原因だと感じていた彼は、半信半疑ながらキットの装着を依頼。その後、キットを装着した「911 GT3 RS」でサーキット走行を楽しんだ彼にキットの印象を尋ねてみると、「快適にドライブできた上に、サーキット走行自体がものすごく楽しくなった」と興奮気味に語ったのだといいます。

 しかも、本人はタイムについて全く意識していなかったにも関わらず、装着前に比べて27秒ものタイムアップを果たしていたといいますから驚きです。このように「マンタイパフォーマンスキット」は、単にタイムアップを図るためのキットではなく、誰でも運転しやすく、そして、楽しめるクルマへの成長を重視した味つけとなっているのです。

 また、「マンタイパフォーマンスキット」はポルシェの純正部品であるため、装着後も新車保証を継続できるのも大きなポイント。そんな同キットの対象となるのは「718ケイマン GT4」、「718ケイマン GT4 RS」、「911 GT3」、「911 GT3 ツーリング」4モデルで、このうち「911」は“992”の前期型である通称“992I”となっています。

大切なパートナーを同乗させても文句が出ない優れた快適性

 そんな「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」のワークショップが、ポルシェのブランド体験施設「ポルシェエクスペリエンスセンター東京(PEC東京)」で開催。デモカーとして「911 GT3」が用意されました。

「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」を装着した「911 GT3」

「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」を装着した「911 GT3」

「911 GT3」向けの「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」には、専用のショックアブソーバー、公道とサーキットに対応するブレーキパッド、ステンレス製のブレーキライン、ダウンフォースを最適化するエアガイドパーツ(リップスポイラーや追加フラップなど)、ダウンフォースを向上させる軽量リアホイールカバー、エンドプレートを大型化したリアウインドウ、ダウンフォースを最適化させたリアディフューザー、4本で合計7.3kgの軽量化を実現したフロント20インチ&リア21インチのアルミホイールなどが性能アップのためのアイテムとして用意されます。

 加えて、サーキット走行に必須の牽引リグ、キット装着ユーザーの満足度を高める専用ボディステッカー、照明つきマンタイロゴ入りカーボン製ドアシルガード、マンタイゴロが照射されるLEDドアプロジェクターも含まれます。

 気になる価格(消費税込)は、アルミホイールを除くキットが約800万円。アルミホイールまで含めたフルキットで約1000万円となります。さらに、国内17か所の認定ディーラーでの装着が必須となり、その作業工賃が別途必要となります。なおフルキットの場合、装着に要する時間は、1日から2日とされています。

 そんな「マンタイパフォーマンスキット」を装着した「911 GT3」に、PEC東京のドライビングコースで同乗走行することができました。

 試乗前、マンタイレーシングのグラスル氏は、「日常シーンでは、助手席に大切なパートナーを同乗させても文句が出ない快適性を備えている」と、その特徴を語っていましたが、その乗り味はいかに?

 PEC東京のトラックは、世界一過酷と称されるドイツ・ニュルブルクリンクの特徴を取り入れた“小さなニュル”ともいえる刺激的なワインディングロードです。そのクセのあるコースを、ポルシェドライビングコーチがドライブする「911 GT3」は、アクセル全開で駆け抜けていきます。「マンタイパフォーマンスキット」を装着した「911 GT3」は、まさに地上を走るジェットコースターと化し、瞬く間に次のコーナーが迫ってきます。

 意外だったのは、最高速度が130km/hを超える高いスピードレンジでありながら、助手席の私が落ち着いてポルシェドライビングコーチとの会話も楽しめたこと。これぞまさに、安定感ある走りを可能とする「マンタイパフォーマンスキット」の真骨頂であり、路面に吸いつくような走りを披露してくれます。

 もちろん、「マンタイパフォーマンスキット」の恩恵を最大限に受けられるのは、そのバランスのよさが生み出す“扱いやすさ”を感じられる、腕利きのドライバーであることはいうまでもありません。

 パワートレインに手を加えることなく、クルマが秘めるポテンシャルをより引き出しやすくする職人ワザが詰まったパーツ類のセットアップこそが、「マンタイパフォーマンスキット」最大の価値であり、ポルシェのスゴさをより鮮明に肌で感じられるようになっています。

 PEC東京では、この「マンタイパフォーマンスキット」の実力を体験できるドライビングプログラムが用意されており、実際に、キットを装着した「911 GT3」をドライブすることができます。

 百聞は一見に如かず。愛車である「GT」シリーズとのつき合いに悩んでいるユーザーは、ステアリングを握ることで、次なるステップアップへ向けてのヒントを見つけられるかもしれません。

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