ツーリングで道を選ばないオールラウンダー! 本質に立ち戻った いま人気の「大型クロスオーバー」バイク3選
元々はオフローダーにルーツを持つアドベンチャー・クロスオーバースタイルのバイク。その本質を追求したモデルを3つ選びました。
水冷「R1200GS」が発端となった巨大市場
それまでの空冷エンジンに見切りをつけて新開発の水冷エンジンに切り替えたBMWモトラッド「R1200GS」(2013年)の大ヒットを皮切りに、全世界に波及したのがアドベンチャー/クロスオーバー(以下ADV)と呼ばれるカテゴリです。
軍用車のような迫力のある車体とは裏腹に、ヘタなスポーツバイクをぶっちぎれるほどのスピードを持っていたGSに世界の二輪業界が驚愕し、対抗車種を矢継ぎ早に開発・発売していきました。
日本のメーカーもADVをラインアップしていないメーカーはなく、バイクメーカーにはもはや必須のスタイルとして定着しました。
スピードが注目されたR1200GSですが、実はオフロードの走行性能も非常に高い“オフ車”の側面があります。
オフロードを愛好するライダーは全体的に少ないため、大半のADVはオンロードの走行をメインに据えています。
視界が高く前傾姿勢をとらずに乗れるADVは快適性が非常に高いため、その部分がクローズアップされている要因です。
しかし、本質であるオフロード性能を追求したADVも存在します。今回は、キングのR1200GS以外の3台を紹介します。
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1台目に紹介するのはホンダ「CRF1100L アフリカツイン」です。
アフリカツインは、「パリ-ダカールラリー」(現在のダカールラリー)参戦用のワークスマシン「NXR750」にルーツを持つ大型オフローダーです。
初代アフリカツイン(XRV650)は1988年に登場。ダカールマシンのノウハウを投入した大型オフローダーで、647ccの水冷V型2気筒OHCエンジンを搭載しました。
ワークスマシンらしい円形2眼のヘッドライトや容量24Lの燃料タンク、そしてアンダーカウルを備えた特異なスタイルが特徴です。
それからわずか2年後の1990年には排気量を742ccにアップした2代目が登場します。
2代目でアフリカツインは一旦途切れますが、2016年に3代目として15年ぶりに「CRF1000L アフリカツイン」が復活します。
新世代のアフリカツインは、新開発の998cc並列2気筒OHCエンジンを搭載していました。
アドベンチャーブーム真っ只中の復活でしたが、歴代に倣いオフロード性能を高めたことで、ライバルとの差別化をはかることに成功しています。
ストロークの長いサスペンションを装備しているため、ジャンプするような激しい走行にも対応できます。
また、トランスミッションはオフロード走行にも対応したAT(DCT)を採用したこともトピックです。
そして2019年に現行型「CRF1100L アフリカツイン」が登場します。
エンジンは3代目を引き継いだ並列2気筒OHCですが、排気量を1082ccに拡大しています。
ちなみに現行型エンジンのスペックは、最高出力75kW(102PS)/7500rpm・最大トルク112Nm(11.4kgm)/5500rpmとなっています。
さらに24Lの燃料タンクや電子制御サスペンションを装備した「CRF1100L アフリカツイン アドベンチャースポーツES」もバリエーションとして展開しています。基準車にもアドベンチャースポーツにも従来式の6MTとDCTモデルがそれぞれ設定されています。
アフリカツインが覚醒させた本質の追求
GSの影響で“デカいのに速い”性能を追い求めていたADVは、アフリカツインの復活が天気となり、本質のオフロード性能が見直されるようになります。
その典型例として上げられるのがスズキ「V-ストローム1050DE」です。
現行型のV-ストローム1050は、2014年に登場した「V-ストローム1000」がベースです。
V-ストローム1000は、オンロードでのスポーツ性能や快適性能を追求したADVとして登場しました。
しかし2017年の改良で、新形状のハンドルバーとスポークホイールを装備したオフロードを想起させる「V-ストローム 1000XT」をバリエーションモデルとして追加します。
XTは、2020年の現行型「V-ストローム1050」へのモデルチェンジでも受け継がれました。
そして2023年2月の改良で、XTに変わり「V-ストローム1050DE」がデビュー。
DEは、未舗装路に対応した専用のトラクションコンロトールモードを備え、前後スポークホイール&ブロックパターンのタイヤ、特にフロントホイールは21インチに大径化し、アルミ製のエンジンプロテクター&パイプのエンジンガードを装備しオフロード対応型に進化しました。
ちなみに現行型のエンジンは1036ccの水冷V型2気筒DOHCで、最高出力78kW(106PS)/8500rpm、最大トルク99Nm(10.1kgm)/6000rpmのスペックを持っています。
R1200GSの発売にいち早く対応したメーカーのひとつがドゥカティです。
GSの登場から2年後の2015年に「ムルティストラーダ」をフルモデルチェンジ。エンジンは可変バルブタイミングシステムを備えた新型となり、GSの追撃に入ります。
ムルティストラーダはGSに負けないスポーツ性能を持っていますが、オンロード向けのADVで悪路に対応しているわけではありません。
ドゥカティ自体も、どちらかといえば公道とサーキット指向が強いメーカーイメージがあります。
しかし、それを覆すモデル「デザートX」が2022年に日本で発売されました。
丸型2眼式のヘッドライトや21Lの大容量燃料タンクを備えたカウリングなどは、初代のアフリカツインを彷彿とさせるスタイル。
ストロークが長い前後サスペンションはもちろん、前21インチ・後18インチの大径ホイールを履き、オフロードに完全に対応しています。
エンジンは937ccの水冷V型(L型)2気筒DOHCで、最高出力81kW(110PS)/9250rpm・最大トルク92Nm(9.4kgm)/6500rpmのスペックを持っています。
デザートXは、そのスタイルからもアフリカツインを強力に意識して作られた大型オフローダーと言える存在です。
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ADVの歴史を振り返ると一筋に説明できるものではありませんが、R1200GSとアフリカツインの登場が転機になったと考えて間違い無いでしょう。
ただ、R1200GSは速さばかりがクローズアップされましたが、悪路も果敢に責めることができるオフローダーであることを忘れてはなりません。
GSにも大型の燃料タンクを備えた「アドベンチャー」というバリエーションが存在し、2024年9月7日に最新型の「R1300GSアドベンチャー」が日本初公開されました。
もはや走れない道はないというほどの走行性能と最新の電子制御技術で完全武装しています。
このキングの登場に、世界のメーカーはどう対応するでしょうか。楽しみです。
10/01 21:10
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