「シートから荷室フロアまで」チェック柄!“外遊びのアシ”にちょうどいい小さなSUV ホンダ「N-BOXジョイ」は新たなトレンドを生み出すか?

軽自動車のスーパーハイトワゴン市場でトレンドとなっている“クロスオーバーSUV”仕立てのモデル。そんなホットな市場にホンダ「N-BOX」も参入です。しかも、ライバルとは異なり、「N-BOXジョイ」は日常の身近なシーンがメインターゲット。リアゲートを開けて後席の背もたれを倒せば、ラゲッジスペースがくつろぎ空間に変身します。

アウトドア要素を加味したクロスオーバーSUV”仕立て

 昨今、軽自動車のスーパーハイトワゴン市場にちょっとした変化が起きています。

ホンダ新型「N-BOXジョイ」

ホンダ新型「N-BOXジョイ」

 スーパーハイトワゴンとは、ダイハツ「タント」やスズキ「スペーシア」、ホンダ「N-BOX」など、背が高くてリアシートが広く、両側スライドドアを組み合わせたタイプの軽自動車で、快適性が高いのが魅力。今、軽自動車で最も売れ筋のジャンルとなっています。

 これまでは各モデルとも、“標準タイプ”のほかに内外装をスポーティかつ上級に仕立てた“カスタム”をラインナップ。この2本柱でシリーズを展開するのが一般的でした。

 しかし昨今の軽スーパーハイトワゴンは、それらにアウトドアテイストに仕立てた“クロスオーバーSUV”仕立てのモデルを加えた3本柱のラインナップとするのがトレンドとなっています。

 その先陣を切ったのは「スペーシア」で、2018年末に「スペーシアギア」という第3の仕様を追加したところスマッシュヒットを記録。続いてダイハツの「タント」が「タントファンクロス」を追加。さらに三菱は、「eKスペース」の名前まで変え、別のモデルとして「デリカミニ」を投入したところ人気モデルになりました。

 そんなクロスオーバーSUV風の軽スーパーハイトワゴン市場に、今回、新たなモデルが投入されました。「N-BOX」に待望の“第3のモデル”「N-BOXジョイ(JOY)」が加わったのです。

 このモデル、普通の「N-BOX」とは何が違うのでしょうか?

 端的にいえば、搭載されているメカニズムは基本的に同じ。「N-BOXジョイ」のオリジナルなのは、内外装の仕立てです。

 例えばエクステリアは、フロントグリルも前後バンパーも標準タイプやカスタムとは異なる専用設計で、ヘッドライトも形状こそ標準車と同じですが、アルミ蒸着仕上げとした専用タイプとしています。また、サイドドアの下部には、樹脂製のガーニッシュを追加しています。

 正直なところ、エクステリアはこの手のモデルとしてはライバルよりおとなしく、「いかにもタフギア」といった感覚は控えめといっていいでしょう。

 一方、「N-BOXジョイ」のインテリアは、ひと目見た瞬間「これはいい!」、「その手があったか!!」という印象を受けます。

 ライバルに対してかなり魅力的に感じたのですが、「何がいいのか?」といわれればシート。なんと、シート表皮にチェック柄を採用しているのです。

「N-BOXジョイ」のインテリアカラーは、標準車のグレージュ×グレーでもカスタムのブラックでもないブラウンで、そこにチェック柄のシート表皮をコーディネート。ライバルとは全く異なる、ちょっと懐かしくもあり、落ち着きを感じられる雰囲気に仕立てています。

 そのチェック柄のシート表皮は、実用性を考えて「N-BOX」シリーズで初めてはっ水処理タイプを採用。その上で面白いのは、自然吸気エンジン搭載車とターボ仕様とでインテリアの仕立てを変えてきたことです。

 ターボは上級の扱いで、チェック柄の回りに人工皮革(自然吸気エンジン車はファブリック)をあしらい、ドアトリムにも合成レザー巻きのパッドが追加されます。さらにステアリングも本革巻きとなるなど上質化。筆者(工藤貴宏)の個人的なおすすめは、そんなターボ仕様のインテリアです。

 ほかにも、標準車にはないルーフの消音材が「N-BOXジョイ」には備わる(カスタムも)など、見えない部分でも差別化が図られており、ポジショニング的には「標準車以上、カスタム未満」というのが「N-BOXジョイ」の立ち位置となっています。

 また、「N-BOXジョイ」にはターボ仕様がラインナップされるのも大きなトピック。標準車にはターボ仕様の設定がありませんが、「N-BOXジョイ」には用意されているのです。

●シート表皮と同じチェック柄の生地をあしらった荷室空間

 そんな「N-BOXジョイ」のもうひとつのポイントが、ラゲッジスペース。標準車ともカスタムとも違うおしゃれなスペースに仕上がっているのです。

 パッと見て分かるのは、シートの背もたれの背面部分やラゲッジスペースのフロアにも、シート表皮と同じチェック柄の生地をあしらっていること。荷室フロアがチェック柄のクルマなんて、筆者はこれまで見たことがありません。

 また、「N-BOXジョイ」のラゲッジスペースは、構造的にも標準車やカスタムのそれとは差別化されています。

 まずはシート背もたれ背面のチェック柄の生地の下には鉄のフレーム(板)が追加されていて、背もたれを前に倒した際にシートの上に座っても、内部構造の凹凸が気にならないようになっています。さらに、標準車やカスタムよりもわずかに床面を“上げ底”し、背もたれを倒した状態におけるフロアのフラット化を実現しています。

 なぜそんな部分にまでこだわったのかというと、「N-BOXジョイ」は景色のいい場所へ出かけ、リアシートを畳んだ状態の荷室に座ってリアゲートを開け、外の景色を楽しみながらくつろいでもらおうという考えから。

 カフェ代わりに使うもよし、リビングルームの延長とするもよし。ラゲッジスペースを移動できる部屋と位置づけ、テントを張るようなガチのアウトドアライフではなく、ふらりと景色のいいところへ出かけてプチアウトドアを楽しんでもらいたいというのが「N-BOXジョイ」のコンセプトなのです。独特ですよね。

オープンカフェくらいの感覚で使うのがちょうどいい

 というわけで、販売台数トップを誇る「N-BOX」シリーズにもついに追加されたSUVテイストの“第3のモデル”ですが、あらためてチェックしてみると、各車それぞれ方向性が少しずつ異なっているのが面白いなと思います。

ホンダ新型「N-BOXジョイ」

ホンダ新型「N-BOXジョイ」

 例えば、このジャンルを切り開いた「スペーシアギア」は、思いっきりアウトドアレジャーを意識したイメージであり、「タントファンクロス」もそれに近い印象です。

 一方「デリカミニ」は、唯一、足回りなどメカ部分にまで手を入れた超こだわり派。4WDモデルのみではあるものの、サスペンションやタイヤサイズを変更してオフロードでの走行性能を高めるなど、ある意味、三菱らしいこだわりが特徴です。

 それらに対して「N-BOXジョイ」は、荷物を積み込めばせっかくのチェック柄のフロアが見えなくなってしまうことからも分かるように、荷物をガンガン積んでアウトドアレジャーに出かけるような使い方は、想定の真ん中ではありません。

 いうなれば、日常に近い、屋外といってもオープンカフェくらいの感覚で使うのがちょうどいい、日常に近い部分で楽しんで欲しいという提案なのです。

* * *

 ところで、軽スーパーハイトワゴンの市場において、SUVテイストのモデルが好まれている理由はどこにあるのでしょうか?

 どうせ買うなら、毎日が楽しくなりそうな雰囲気がいい……おそらく多くのユーザーは、アウトドアレジャーのパートナーとしてこれらのモデルを選んでいる人ばかりではないはずです。むしろ、アウトドアレジャーに出かけていない人の方が多数派だと思います。

 ひと言でいえば、遊び心が感じられて楽しいから選んだ、ということにほかならないでしょう。確かに「N-BOXジョイ」は、「N-BOX」シリーズの中で最もおしゃれで遊び心を感じられるモデルだと筆者も思います。

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