全長5mの新世代フラッグシップ電動SUV ボルボ新型「EX90」はなぜコーナリングが得意? “上質な乗り心地”と“走りの良さ”を両立できる理由とは

2022年10月に世界初公開されたボルボの新たなるフラッグシップSUV、新型「EX90」の試乗会が米国ロサンゼルスで開催されました。どんな全長5mの大型SUVはどんな走りを実現しているのでしょうか。モータージャーナリスト大谷達也氏のレポートです。

オシャレで質感が高い 明るいインテリア

 ボルボの最新EV、「EX90」にアメリカ・ロサンジェルス郊外で試乗してきました。

ボルボ新型「EX90」の走り

ボルボ新型「EX90」の走り

 2030年までにEV専業メーカーとなることを目指しているボルボにとって、新型EX90は「EX30」に続く「EV専用アーキテクチャー・モデル」の第2弾。

 すでにラインナップされている「C40」や「XC40」は、エンジン車と共通のアーキテクチャーをベースにEV化していたので、EX30やEX90はよりEVに最適化したモデルといえるでしょう。

 そのプラットフォームは、現行モデルの「XC90」などに用いられているSPAの進化版とされますが、技術者たちに話を聞くと「まるで別モノ」との答えが返ってきました。

 たしかに、フロア下に111kWhの大容量リチウムイオン・バッテリーを搭載したり、前後に高出力モーターを装備したりするには、プラットフォームの大改造が必要になるのは明らか。新型EX90では、前後のサブフレームをより強固な構造で作り直すとともに、2チャンバー式エアサスペンション、後述するデュアルクラッチ式トルクベクタリング・システムなどの新技術を採用しているので、新しいプラットフォームと称しても間違いではないような気がします。

 エクステリアは、EX30と共通のデザイン言語を用いながら、よりシックで落ち着いた意匠にまとめられています。

 この辺は、新型EX90が新世代のフラッグシップモデルであることを表現したものといえるでしょう。

 そのエクステリアにも負けないくらい魅力的なのがインテリア・デザインです。

 2016年デビューのXC90を皮切りに、ボルボは新世代モデルを次々と投入してきました。

 それらは、元チーフデザイナーのトーマス・インゲンラート氏がデザインしたもので、エクステリアはシンプルでありながらクォリティ感の高さと力強さが伝わってくるいっぽう、インテリアは上品かつ明るく開放感に満ちていて、現行ラインナップが商業的に成功する大きな礎になったと個人的には捉えています。

 新型EX90のインテリア・デザインはその延長線上にあるもので、全体的には北欧家具を思わせるシンプルな造形なのに、とてもオシャレで質感が高く、乗る人に深い満足感と喜びを与えてくれるような気がします。とりわけ、その明るい色調は、ブラック中心のドイツ車とは大きく異なるもので、とても魅力的です。

 また、ボルボは内外装に天然由来やリサイクル可能なサステイナブル素材を積極的に用いていることでも知られており、新型EX90のインテリアにもそうしたサステイナブル素材が幅広く採用されています。

 しかも、最新でフラッグシップモデルの新型EX90では、品質感の確保が難しいサステイナブル素材を用いながら高いクォリティ感を実現したことにも驚かされました。これだったら、サステイナブル素材を用いたインテリアを積極的に選びたくなるのではないでしょうか。

新型EX90 日本上陸は2025年後半予定

 デジタル化がさらに進んだことも、EX30に続く新型EX90の特徴といえます。

ボルボ新型「EX90」のインテリア

ボルボ新型「EX90」のインテリア

 これまで一般的だった物理スイッチを極力廃し、大型のタッチ式センターディスプレイに操作系を集約した考え方はEX30と共通するもので、オーディオや空調だけでなく、たとえばサイドミラーの調整までセンターディスプレイとステアリング上の矢印スイッチを用いたものに変更されています。

 そのほか、ステアリング上に設けられたコラム式シフトレバーをDレンジ側に押し下げることで運転支援システムのパイロット・アシストが作動する考え方を含め、テスラとよく似た操作方法のように感じられました。

 こうしたデジタル志向は、若い世代のユーザーや、年齢を重ねていても日ごろデジタル機器を使い慣れている人には歓迎されるかもしれませんが、昔ながらの操作方法が忘れられないドライバーには敬遠される恐れがあるように思います。

 走りはとても快適で上質でした。

 とりわけタイヤが発するロードノイズが低く抑えられていることと、路面の段差などで発生するハーシュネスと呼ばれるショックが小さいことは特筆すべきで、ボルボのフラッグシップに相応しい快適性が実現できていると感じました。

 それ以上に驚いたのが、ハンドリングが正確で、コーナーを機敏に曲がれることにあります。これは、車重が2.5トンを越えて2.7トンにも迫る大型EVとして異例なことといっていいでしょう。
 その実現に大きく貢献したのが、前述したデュアルクラッチ式トルクベクタリング・システムです。

 これは、一般的なディファレンシャルギアに変えて2組の電子制御式クラッチを後車軸に装備することにより、左右の後輪に伝わる駆動力を積極的に制御するもの。

 そして、コーナリング時は外輪により多くの駆動力を伝えることで、クルマが自然と曲がろうとする力を生み出し、機敏なコーナリングを実現する仕組みです。その作動はとても自然で、まったく違和感を覚えませんでした。

 試乗車はツインモーター・パフォーマンスと呼ばれる最高グレードで、517psと910Nmを発揮。0-100km/h加速を4.9秒で駆け抜けます。

 まるでスポーツカー並みの動力性能ですが、そのいっぽうで最高速度を180km/hに制限している点は安全性を最優先するボルボの思想が反映されたものといえます。

 新型EX90の日本導入は2025年後半となる模様。1000万円を大きく越えると予想される価格を含め、ボルボの高級EVが我が国でどのように受け入れられるか、興味津々です。

ボルボ新型「EX90」の走り

ボルボ新型「EX90」の走り

●VOLVO EX90 Twin Motor Performance
ボルボEX90 ツインモーター・パフォーマンス

・全長:5030mm
・全幅:1964mm
・全高:1743mm
・ホイールベース:2985mm
・車両重量:2580kg-2780kg
・モーター最高出力:517hp(380kW)
・最大トルク:910Nm
・総電力量:111kWh
・一充電走行可能距離:614km-570km
・駆動方式:全輪駆動
・乗車定員:4名/5名/6名/7名
・0−100km/h加速:4.9秒
・最高速度:180km/h

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