“カワサキ製3気筒”を16基も連結! 4.2リッター48気筒の「モンスターエンジン」搭載!! ワケありカスタムバイクは“1気筒当たり約39万円”で落札

カワサキ製のバイク用3気筒エンジンを16基組み合わせた4.2リッター48気筒エンジンを搭載した「ティンカートイ」。公道走行も可能なこのカスタムバイクが、ついにオークションで落札されました。気になる落札価格とは?

カワサキ製3気筒×16基で総排気量は4.2リッターに

 世界最大の気筒数を持つエンジンを搭載したカスタムバイクとして、ギネス世界記録を記録され樹立したホワイトロックの「ティンカートイ」。イギリスでバイク屋を営むサイモン・ホワイトロックさんが手がけたこのワケありバイクが、先頃、老舗オークションハウスのボナムズに出品。見事、落札されました。

老舗オークションハウス・ボナムズに出品されたカスタムバイク「ティンカートイ」

老舗オークションハウス・ボナムズに出品されたカスタムバイク「ティンカートイ」

 かつてイギリスでバイクショップを営んでいたサイモン・ホワイトロックさんは、カスタマイズによる差別化を追求していくうちに、複数基のエンジンを連結させる魔改造に目覚めます。

 カワサキ「KH250」の2ストローク3気筒エンジンにほれ込み、あえて4気筒にしてみたり、3基連結して直列9気筒にしてみたり、直列7気筒もつくってみたそうです。

 また、カワサキのクローズドコース専用モデルである「ニンジャ HR2」(スーパーチャージャーつき直列4気筒エンジン搭載)のレプリカなんかも手がけたことがあるそうです。

 かつてイギリスでは、世界的に有名な“バイクアーティスト”と呼ばれるアラン・ミルヤード氏の活躍ぶりに注目が集まっていました。さまざまな“作品”がある中でも、公道走行可能なダッジ「バイパー」の8リッターV10エンジンを搭載したバイクは、世界の乗り物ニュースを騒がせたものです。

 そんなミルヤード氏にライバル心を燃やしたホワイトロックさんは「世界一複雑なバイク用エンジンをつくろう」と決意したのでした。

 だからといって48気筒エンジンをつくってしまおうと思うのですから、頭のネジが1、2本抜けている(賞賛です!)といわざるを得ません。多少の無理はあっても、人が乗れる最大気筒数のエンジンを計算したのでしょうね。

 ホワイトロックさんが48気筒エンジン搭載バイクに名づけた「ティンカートイ」というネーミングは、第二次世界大戦中に活躍したアメリカの大型爆撃機、ボーイングB-17のイギリスでの愛称に由来しています。

「ティンカートイ」はカワサキ「KH250」の3気筒2ストロークエンジンを6バンクに8基ずつ配置し、丹念に組み立てられました。

 総排気量は4.2リッター。当初は50ccの2サイクルエンジンをスターターとして使用していましたが、パワー不足のため125ccのものに変更されています。

 1998年に始まった「ティンカートイ」の製作は2003年まで完了せず、作業の80%は最終年に完了したそうです。

「ティンカートイ」の重量は堂々の600kgで、イギリスでは公道走行が可能です。注意点としては、ハンドルを握るためには長い腕が必要なこと。あと、エンジンの排気ヘッダーに足が触れないよう、アクロバティックな乗り方が求められます。

 ホワイトロックさんによると、排気システムを取りつけずに初めてエンジンを始動した際の印象は、まるでロールス・ロイス「マーリン」のようだったといいます。最近、エンジンの始動を試みたそうですが、キャブレターのジェットが詰まっているようで始動しなかったのだとか……。ちなみに最後にエンジンを点火したのは、2015年のことだそうです。

 そんな「ティンカートイ」のトランスミッションは、BMW「K100」から流用。フロントエンドはホンダ「ゴールドウィング」のもので、予備のスプリングを装着しています。

●予想を上回る落札価格! バイクを超越した“芸術作品”

 ホワイトロックさんが手がけた「ティンカートイ」は、これまでつくられたカスタムバイクの中で最も複雑な1台といえるでしょう。腕時計流にいうなら“グランドコンプリケーション”でしょうか。

「ティンカートイ」は、もはやバイクというカテゴリーを超越した“芸術作品”。自動車も含めた“乗り物”において、世界最大気筒数のエンジン搭載した車両としてギネス世界記録を樹立。その記録はいまだ破られていません。

 そんな「ティンカートイ」が、2024年4月、イギリスのバイクイベントと併催された老舗オークションハウス・ボナムズのオークションに出品されました。事前の予想落札価格は、4万~6万ポンド(約813万円~1219万円)と考えられていました。

 しかし、ふたを開けてみると、9万2000ポンド(約1869万円)で落札されたそうです。つまり1気筒当たり約39万円の計算ですね!

 かつて筆者は、12気筒エンジン搭載車を110万円で購入したことがあります。その際、友人に「1気筒あたり10万円以下だから安いね!」といわれたことがあります。先の予想落札価格は、その感覚でボナムズが算定したようです。

 落札者が、約39万円×48気筒のエンジンを始動させる日が待ち遠しいですね。

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