《高層タワマン建築で盗撮、落下物…小学校への危険性を指摘する声》渋谷区が問題視される再開発事業について回答 区民による訴訟に「適切に対応していく」

1975年築・地上14階建てのマンション「渋谷ホームズ」

 渋谷区の再開発事業が計画通りに実現すれば、1975年築・地上14階建てのマンション「渋谷ホームズ」は、34階建てのタワマンへ生まれ変わることになる。しかし、区民からは、同マンションに隣接する神南小学校への危険性や、区道が廃道になることへの影響を心配する声も寄せられている。【前後編の後編。前編から読む

【写真】神南二丁目・宇田川町地区の現状とまちづくり将来整備イメージ。他、区道の廃道を差止めようと動いた渋谷区民らによる訴状の内容など

 小学校からわずか10メートル足らずの距離に、高さ約140メートルの開放型バルコニーのタワマンが建つことにより、児童らが落下物や風害、盗撮といった危険に晒されるのではないか? また、区道が廃道になることで、大型の車両の侵入が難しくなり、災害時の救助活動などに影響が出ないか? 

 不安を覚えた区民らが再開発事業へ反対すべく立ち上がり、今年9月、ついに一部の渋谷区民らが区道の廃道を差止めようと東京地裁に訴訟を提起した。問題視されている点について、渋谷区役所に問い合わせた。

──落下物の危険性は?

「これまでの意見交換会等でもご意見いただいており、対策を市街地再開発準備組合に申し入れの上、『建築計画上の落下物対策として各バルコニーに二重手すりを設置するとともに建物4隅のコーナー部のガラスは開口部を開閉しない仕様とするなど対策を講じ、管理運営上の落下物対策については、洗濯物や寝具等をバルコニーに干すことを禁止、手すり等にアンテナや金具の設置の禁止、家具やテントなどの設置の禁止、落下、飛散等の恐れのある物品のバルコニーへの設置などの禁止を管理規約等で定める』と聞いています。

 また、各バルコニーの手すりの高さについては、建築基準法上1100mmが基準となっていますが、本計画では1350mmの高さの二重手すりを計画していると聞いています。引き続き、十分な安全対策をとるよう必要な申し入れを行ってまいります」(渋谷区まちづくり第3課の担当者、以下同)

──タワマン側から小学校への盗撮の危険性は?

「盗撮対策として、小学校教室窓へのブラインドやカーテンの設置を検討しております。また、広場等については、建築計画の進捗と合わせ、防犯カメラの設置や運用方法等について、市街地再開発準備組合と協議してまいります」

──風害の危険性は?

「事業者からは風環境シミュレーションを実施した上で、防風植栽を施すなどの対策が取られることで低中層市街地相当の風速となると聞いていますが、区としても良好な風環境形成に向けて必要な申し入れを行ってまいります。

 また、新築工事後に風環境の事後調査を現地にて1年間実施し、事前シミュレーションの効果が適切に発揮されていない場合は、追加の対策工事等を実施すると確認しています」

──「区道を廃道にすることで、大型車両が現場近くまで入れなくなるのではないか」と危惧する声もある。

「北側については、幅員4m以上の緊急車両等の通行できる通路が確保されており、公園通り側から庁舎側への進入が可能となっております。今回、市街地再開発事業を通じて廃道する区道の一部を、緊急啓開道路である区道第974号路線に付け替えて道路拡幅し、災害時の緊急車両の動線確保など防災面での向上を図る計画としています」

「周辺環境」に配慮した計画に見直し

──区民からの不安の声を受けて、東急不動産や清水建設に提案・指導などは行っているのか?

「都市計画に係る意見交換会等でいただいたご意見等については、十分な対策をとるよう申し入れを行っており、市街地再開発準備組合側も真摯に受け止め、再開発棟高さの約9m低減、外形コンパクト化、配置変更など周辺環境へ配慮した建築計画に見直されております」

──区道の廃道を止めようと区民たちが提起した訴訟に、どのように取り組んでいく方針か?

「訴訟については、適切に対応していきます」

 なお、東急不動産と清水建設からは以下のような回答だった。

「渋谷区役所周辺の再開発事業に関しまして当社からお答えすることはございません」(東急不動産)

「弊社は本件につきましてお答えする立場にはございません」(清水建設)

 区道廃道の差止めを求める訴訟の第1回口頭弁論は、2025年1月17日より予定されている。もつれにもつれる再開発事業の行方は──。

(了。前編から読む

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