高速道路無料化は2115年! 「ドラえもん誕生」からたった3年後に実現か? こんなこと約束できたらいいな♪

半世紀越しの無料化計画

高速道路(画像:写真AC)

高速道路(画像:写真AC)

 誰もが「高速道路 = 有料」というイメージを持っているだろう。仕事とプライベートで年間約6万kmを走る私(都野塚也、ドライブライター)も、子どもの頃から親の車でよく高速道路を利用してきたが、そのたびに通行料を払ってきた。これを節約するために、ひとつ手前のインターチェンジ(IC)で降りることもよくあったと記憶している。

 高速道路の通行料には、いずれ無料にする計画がある(もちろん、国の方針通りになればの話だが)。

 つまり、一般道と同じように無料で使えるようになるのだ。現在、高速道路は、利用する距離が長ければ長いほど料金が高くなる。例えば、2024年11月現在、東名高速道路や名神高速道路では以下の通行料がかかる。

・東名・東京IC~東名・名古屋IC:7320円
・東名・東京IC~名神・吹田IC:1万840円

これらは片道の料金なので、往復すればさらに負担が大きくなる。

 無料になるのは、夢のような話だが、実は半世紀前からその計画があった。では、なぜ今日まで実現していないのか、そしていつ無料化される予定なのか、そのあたりを詳しく見ていきたい。

50年を超える高速道路の変遷

日本初の高速道路、名神高速道路(画像:都野塚也)

日本初の高速道路、名神高速道路(画像:都野塚也)

 高速道路は、初めての路線が開通してから半世紀以上が経過した。

 日本で最初の高速道路は、1963(昭和38)年に初めて開通した名神高速道路で、1965年には全線が開通した。その後、1968年に初めて開通した東名高速道路も、1969年に全線が開通した。この2路線は、計画から建設が順調に進んだことに加え、沿道の人口が多かったため、優先的に建設されて開通に至った。

 その後、各地方の主要な路線や、主要路線同士をつなぐ路線が次々と開通し、多様な目的で新しい路線が誕生してきた。私自身、高速道路を利用するようになったのは1990年代からだが、その頃に比べると、路線の数はもちろん、路線同士をつなぐジャンクション(JCT)の数も劇的に増えた印象がある。

 年々広がる高速道路ネットワーク。しかし、高速道路の無料化に関しては、

・名神開通から「25年」
・東名開通から「23年」

という約束があったにもかかわらず、いまだに有料のままである。これは一体どういうことなのだろうか。

10回延長された無料化計画

延長化のイメージ(画像:写真AC)

延長化のイメージ(画像:写真AC)

 当初、高速道路は借金で建設され、その返済が完了した後に無料化される予定だった。しかし、計画通りには進まず、無料化の時期は何度も延長されてきた。国土交通省によると、これまでに10回もの計画延長が行われたという。

 その背景には、日本の高速道路の料金制度

「料金プール制」

が関係している。この制度では、1路線ごとに料金の収支を分けるのではなく、高速道路全体で収支を管理する。これにより、例えば名神や東名で得た収入を他の路線の建設費用に充てることができ、現在の広大な高速道路ネットワークが築かれた。

 しかし、当初の計画では借金返済が予定通り進むはずだったが、実際には返済が遅れ、逆に高速道路の借金は年々膨らんでいった。そのため、無料化は何度も延期されることとなった。

 また、小泉政権時代には「日本道路公団」の慢性的な借金問題が取り上げられ、2005年には高速道路事業が民営化され、NEXCOが誕生することとなった。

料化は2115年まで延長決定

無料化時期のイメージ(画像:写真AC)

無料化時期のイメージ(画像:写真AC)

 現在予定されている高速道路の無料化の時期について、2023年に、これまでの2065年までの方針が50年延長され、91年後の

「2115年」

まで引き延ばすことが決定された。ちなみに、2115年というと、人気マンガ・アニメのドラえもんが2112年9月3日生まれのため、

「ドラえもんが生まれてから3年後」

となる。実にシュールだ。つまり、今の私たちが生きているうちには、無料化は実現しないのだ。

 無料化されれば、利用者にとってはうれしいことだが、その一方で弊害もあるのは事実だ。私たちが作り上げてきた負債を未来の人々に負わせるのはどうかとも思う。無料化への道のりは長く険しいのだ。

無料化社会実験、政権交代で終息

富士吉田線も無料化実験対象(画像:都野塚也)

富士吉田線も無料化実験対象(画像:都野塚也)

 2010(平成22)年度に、高速道路が無料となる社会実験が行われた。

 この実験は、民主党が以前から掲げていた高速道路無料化のマニフェストに基づいて実施されたもので、2009年に政権を獲得した後にスタートした。民主党は2003年から

「地方を活性化するとともに、流通コストの削減を図る」

を目的として、高速道路の無料化を提案していた。

 その実験は2010年6月28日に開始され、地域経済への影響や渋滞、環境への効果を調査することが目的だった。当初、

・37路線50区間
・合計1626km

が対象となり、これはNEXCO3社が管轄する高速道路全体の約18%に相当する距離だった。

 2011年2月には翌年度の計画案も発表されたが、同年3月11日に東日本大震災が発生したことを受け、復旧・復興のための資金が必要となり、2011年6月20日に無料化実験は一時的に凍結された。

 その後、2012年の総選挙で民主党が大敗し、自民党が政権を再び握ったため、この無料化社会実験は実質的に終了した。

高速道路無料化の成果と課題

メリット・デメリットのイメージ(画像:写真AC)

メリット・デメリットのイメージ(画像:写真AC)

 民主党の高速道路無料化計画は、途中で中断されたが、その実施を通じて、高速道路を無料で通行できることのメリットとデメリットが明確になった点では一定の成果があった。ここでは、具体的なメリットとデメリットを見ていこう。

●メリット
・流通コストの削減
・地域経済の活性化
・サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の充実

 流通コストの削減と地域経済の活性化は、民主党の目指していた最大の目的でもあり、流通業者の支出を抑えると同時に、商品の販売価格の引き下げにもつながる。高速道路が無料になることで、長距離ドライブをする人々が増え、その結果として地域への支出が増えると考えられる。これにより、SAやPAにも立ち寄る機会が増え、これらの施設が充実することにもつながる。

●デメリット
・渋滞の増加
・高速道路の維持費確保
・他の公共交通への影響

 デメリットの最も大きな懸念は、やはり渋滞の問題だ。実際、無料化社会実験が行われた路線では、交通量が

「1.5~2倍」

に増加した。社会実験は一部区間に限定されていたが、全路線・全区間で無料化が進むと、渋滞の増加は予想以上に深刻なものになるだろう。

 また、高速道路の通行料を無料にすることにより、これまで通行料で賄っていた高速道路の維持費をどのように確保するかも大きな課題となる。高速道路の維持にはかなりの費用がかかるため、他の財源を充てるのは現実的に難しい。

 さらに、高速道路が無料になると、鉄道や飛行機、バス、フェリーなどの公共交通の利用者が減少することが予想される。これにより、公共交通の本数が減ったり、廃止されたりする可能性がある。車を運転できる人や車を所有している人には影響が少ないが、車を運転できない人や車を所有できない人にとっては、大きな問題となる。

 高速道路の無料化にはメリットとデメリットがともに存在しており、無料化を進めるためには、デメリットを解消するか、少なくとも軽減するための政策が求められる。

避けられぬ老朽化問題

老朽化が進む首都高6号線(画像:写真AC)

老朽化が進む首都高6号線(画像:写真AC)

 高速道路は誕生から50年以上がたち、現在新たな深刻な問題が浮上している。それが、高速道路の老朽化だ。高速道路は毎日休むことなく稼働しているため、路面や施設が年々劣化し、修繕や改築が必要となっている。

 老朽化は各路線で進行しており、特に古く開通した路線では、工事の回数や期間が増えてきている。近年では、NEXCOが事前に工事の区間や期間を発表し、利用者に迂回や利用時間帯の変更を案内している。

 老朽化による工事費用は予想以上に高額で、2022年12月には、

・首都高:約3000億円
・NEXCO:約1兆円

の追加費用が必要だと発表された。このような老朽化問題も、高速道路無料化延長の一因となっているが、既存の高速道路を安全に利用し続けるためには避けられない課題である。

期限延長の先に待つ現実

歴史ある東名高速道路(画像:都野塚也)

歴史ある東名高速道路(画像:都野塚也)

 これまで書いてきたように、無料化は厳しい現状にあるといわざるを得ない。しかし、もともと決めた政策を先延ばしにするわけにはいかない。今後は、さまざまな角度からの検討や方針が求められる。例えば、

・有料制度の見直し
・永久有料化

などが考えられる。現在の利用者がより高速道路を使いやすくするために、そして未来につなげるために、適切な政策が必要だ。

 これまで、高速道路の無料化は期限延長を繰り返してきたが、今後はしっかりとした議論を行い、より良い高速道路事業が展開されることを期待したい。

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