船井電機破産の衝撃! アマゾンに採用された同社「電動アシスト自転車」の今後は大丈夫なのか?

イベント出展6日後の破産

船井電機本社(画像:船井電機)

船井電機本社(画像:船井電機)

 液晶テレビなどの家電メーカーとして広く知られる船井電機が、2024年10月15日から18日まで千葉県の幕張メッセで開催された「ジャパンモビリティショービズウィーク2024」にトレーラー付き電動アシスト自転車「RIJDEN(ライデン)」を出展した。ライデンは、船井電機がラストマイル配送の課題を解決するために自社開発した製品で、通販大手のアマゾンジャパンに採用され、2024年10月から納入を始めた。

 しかし、ショー終了からわずか6日後の10月24日、船井電機は突然破産を申請し、従業員全員の解雇を発表するという青天のへきれきともいえる事態に至った。

 本稿では、船井電機の電動モビリティ事業が破産後にどのように継承される可能性があるかを考察する。

破産で揺らぐ「ライデン」供給網

船井電機の本社位置(画像:OpenStreetMap)

船井電機の本社位置(画像:OpenStreetMap)

 ライデンは、ラストマイル配送向けに大型トレーラーを備えた電動アシスト自転車で、都市部での効率的な配送手段として注目を集めた。従来の配送車に比べて静かで、狭いエリアでもスムーズに配送できる点が評価されていた。製品名はオランダ語で「乗る」という意味で、乗る楽しさや利便性を提供するという思いが込められている。

 ライデンには、アマゾンジャパンが採用した電動アシスト自転車「ACTIO G41」と、特定小型原動機付自転車「COPIA G51」の2種類があり、どちらも運転免許は不要だ。G41は大容量トレーラーを含めた積載容量が1130L/100Kgで、航続距離は40Km、最高速度は24Km/hとなっている。一方、G51はフル電動仕様で、後輪にインホイールモーターを搭載しているが、トレーラーはなく、積載容量は100L/30Kg、航続距離は50Km、最高速度は20Km/hだ。

 さらに、船井電機が出展する直前の2024年10月8~9日には、アマゾンがテネシー州ナッシュビルで開催した「Delivering The Future 2024」で、物流・ロボット分野の最新技術としてライデンが紹介された。このイベントでは、米リヴィアン製の電動配送車に搭載予定の新AI技術「Vision-Assisted Package Retrieval(VAPR)」と並んで紹介され、ライデンがアマゾンの重要なプロジェクトの一環であることが強調された。

 なお、VAPRは電動配送車の荷台にある荷物のQRコードをカメラやセンサーで認識し、配送先近くで荷下ろしすべき荷物には「緑色の丸」、それ以外には「赤色のバツ」を投影して識別するシステムである。

 しかしながら、船井電機による突然の破産発表によって、ライデン事業の存続は極めて不透明な情勢となっている。アマゾンジャパンが、今後どのようにライデンの供給を確保するかが焦点となる。

 アマゾンジャパンは2023年から、リヤカー付きの電動アシスト自転車を使った配達サービスを一部地域で始めた。2024年10月にはライデンを数百台導入し、すでに33都道府県で稼働している。これは、アマゾンが「日本国内でのラストワンマイル配送とドライバーの働き方に関わる施策」を拡大するために追加で250億円を投資する一環で、都市部など

「過密エリアでの配送負担」

を減らす効果が期待されている。

 ライデン以外でも、アマゾンと船井電機は協力関係がある。船井電機は2019年からアマゾンの「Fire TV」を搭載した液晶テレビの製造を担当しており、強固なパートナーシップを築いてきた。アマゾンジャパンによるライデンの採用も、こうした関係が背景にある。

 しかし、突然破産を発表したことで、ライデン事業の今後は不透明な状況だ。今後、アマゾンジャパンがどのようにライデンの供給を確保するかが注目されている。

電動配送バイクの行方

アマゾンジャパンが昨年に導入したシゲオー製リヤカー付き電動アシスト自転車(画像:アマゾンジャパン)

アマゾンジャパンが昨年に導入したシゲオー製リヤカー付き電動アシスト自転車(画像:アマゾンジャパン)

 船井電機が破産したことで、アマゾンジャパン向けに納入中のライデンの今後がどうなるか、他の企業に引き継がれる可能性を考えてみよう。

 事業継承先としてまず考えられるのが、東京都北区に本社を置くシゲオーだ。アマゾンジャパンが2023年初めて導入したリヤカー付き電動アシスト自転車を製作した実績があり、その際のプレスリリースにもシゲオー製の電動アシスト自転車にリヤカーが接続された写真が掲載されていた。ただし、シゲオーは従業員数が45人と小規模なため、船井電機からライデン事業を引き継ぐのは難しいと考えられる。

 他の候補としては、ライデンにドライブトレインやバッテリーを供給しているシマノ、電動モビリティ分野での提携を強化しているカワサキモータースやパナソニックサイクルテック、さらにホダカと提携して電動アシスト自転車を開発しているジャトコなどが挙げられる。

 どの企業が引き継ぐにせよ、アマゾンジャパンのラストマイル配送の画期的な取り組みをさらに広げていくためには、円滑に事業が継承され、ライデンの供給が維持・継続されることが望ましい。

広がる破産の波紋

船井電機のウェブサイト(画像:船井電機)

船井電機のウェブサイト(画像:船井電機)

 船井電機の新事業だったライデンは、都市型配送の持続可能なソリューションとして注目され、物流業界の環境負荷を減らす画期的な取り組みだ。

 電動アシスト自転車のノウハウを持つ大手モビリティ企業が事業を引き継げば、都市での新しい配送スタイルが広がり、ライデンが日本発のサステナブルなモビリティモデルとして進化し、広く認知されることが期待される。

 船井電機の破産という予想外の事態でライデン事業の将来は不透明だが、他企業による継承の行方を見守りつつ、今後もライデンが活躍する姿を期待したい。

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