通勤地獄から解放されたい! 「優等車両」の活用がサラリーマンの未来を変えるかもしれないって、マジ?

追加料金で快適

京王ライナー(画像:写真AC)

京王ライナー(画像:写真AC)

 京都と大阪の間は距離はそれほど長くないが、混雑することがある。

 JR西日本は新快速にAシートを、京阪電鉄は特急にプレミアムカーを、阪急電鉄は特急にPRiVACEをそれぞれ導入している。どの列車も1編成に1両しかないが、追加料金が安いため、ラッシュ時には混み合うことが多い。

 京阪間でも、ターミナルの場所が違うため、目的に合わせて列車を使い分けることができる。ビジネス利用の筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)としては、質のよいシートやコンセント、Wi-Fiがあれば仕事がしやすく、効率も上がる。

 もちろん、仕事の前後にリラックスするのにも最適だ。こうした優等車両は、鉄道会社にとっても追加料金が得られるのでメリットがある。

 ということで、今回は、この優等列車の可能性について考えてみよう。

さまざまな優等通勤車両

拝島ライナー(画像:写真AC)

拝島ライナー(画像:写真AC)

 優等通勤車両といっても、いくつかのタイプがある。ここで簡単にその種類を紹介する。

●特急編成活用型
 これは、JR各社で運行される特急型車両1編成全体を有料の通勤ライナーとして使う方法だ。特急の運行の合間にも使えるため、鉄道会社にとって効率がいい(例:京阪電鉄のライナー、JR東海のホームライナーなど)。

●ロング/クロス可変型
 これも1編成全体を有料の通勤ライナーとして使うタイプだが、昼間は無料のロングシート通勤車として運行し、ラッシュ時にはクロスシートに切り替えて有料ライナーとして運行する方法だ(例:京王電鉄の京王ライナー、西武鉄道の拝島ライナー、東武鉄道のTJライナーなど)。

●特別車両追加型
 これは、通常の通勤列車に有料の優等車両を1両か2両追加して運行するタイプだ。これにより、無料で乗りたい人と、有料でもゆったりと過ごしたい人のニーズを両立させることができる(例:京阪電鉄のプレミアムカー、JR西日本のAシート、阪急電鉄のPRiVACEなど)。

●時間限定有料型
 特に車両の仕様は変わらないが、時間帯によってシートを有料にする方法だ。対象列車の一部を有料エリアにし、その有料エリア内の座席を指定席として提供するサービスである(例:JR西日本のうれしートなど)。

新幹線通勤支援の波

TJライナー(画像:写真AC)

TJライナー(画像:写真AC)

 現在、埼玉県の熊谷市や本庄市などの郊外都市では、新幹線通勤を支援するために補助金を出す地方自治体がある。これらの地域はJR高崎線の沿線で、籠原駅(熊谷市)始発の列車も多く、在来線の普通列車でも都心通勤が可能だ。

 しかし、ラッシュ時には東京駅まで70分以上かかる。この点、新幹線を利用すれば所要時間が半分になり、座席も快適である。新幹線通勤の補助金は、地元の若者の都会への転出を防ぎ、環境のよい田舎エリアに子育て世代の移住・定住を促進することを目指している。この制度の主な対象は、東京方面に通勤する新卒者や若い転入者である。

 少子高齢化が進むなか、税収の減少は地方自治体の大きな問題となっている。限られた住民に選ばれるために、税金を使って新幹線通勤の補助を行っているのだ。特に子育て中の若い親にとって、これは魅力的な制度だ。

 筆者は、快適な通勤環境を実現するための追加料金を企業が負担する可能性について調査したことがある。しかし、良質な労働者の確保が重要だと理解されているにもかかわらず、

・財政的な負担
・公平性の確保

が難しいという意見が多かった。優等車両が走っている路線の労働者だけを支援するわけにはいかないという点が問題視された。

優先座席確保の新政策

500円(画像:写真AC)

500円(画像:写真AC)

 こうなると、利用者にはポケットマネーでの支払いを求めるか、自治体の人口増加や活性化、集客力アップを掲げて税金で追加料金を補助する必要がある。例えば、JR東日本のグリーン車では、ICカードを利用すると50kmまで750円、100kmまで1000円、101km以上で1550円の追加運賃がかかるため、エリアによっては検討の余地がある。

 しかし、1回400円から500円程度の追加料金で乗れる多くの優等通勤車両に関しては、地方自治体の活性化を図るための先行投資と考えられる。人口維持や増加の政策という観点からも、必要な先行投資だといえる。

 また、賛否両論があることを前提にすると、遠方の地方自治体が有料通勤列車の座席を一定数確保する政策も考えられる。例えば、ターミナル駅から近い駅の利用者が多く、遠方の駅まで帰宅したい人がチケットを購入できない場合もある。

 座席の獲得は自由競争が基本であるため、通勤補助をしなくても、特定の列車の座席を自治体が有料で確保し、そのエリアのユーザーが優先的に利用できるようにする方策も可能だ。

通勤地獄からの脱出法

オンライン会議のイメージ(画像:写真AC)

オンライン会議のイメージ(画像:写真AC)

 コロナ禍以降、オンライン会議が増え、場所を選ばずに仕事をするライフスタイルが定着してきた。

 筆者も駅のテレワークボックスを利用するが、混雑状況を見ると、ターミナル駅周辺の人気は高い。これが動いている列車のなかにもあればいいのにと思うことがよくある。仕事に集中できる場所を求める人は多いのだ。もし優等通勤車両にテレワークボックスや個室的なテレワークエリアがあれば、新しい展開があるのではないか。

 コロナ禍による定期券収入の減少や、少子高齢化による経営改善が見込めない現状では、鉄道事業者には優等通勤車両自体の付加価値を検討してほしい。先行投資とその回収策を考える必要がある。

 優等通勤車両は、追加料金を得るためのさまざまな可能性がある。地方自治体にもメリットが生まれるし、地方自治体と鉄道事業者が協力して、例えば車両の追加導入に公的支援を行うことも考えられる。

 通勤地獄から解放されることは、労働者の夢だ。優等通勤列車の社会的活用について、みんなで考えてみよう。

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