サラリーマンの8割が「管理職拒否」ってマジ? 部下のメンタル問題で、もはや“心理カウンセラー”化しているトホホ現実

管理職になりたくない若者が多い

管理職(画像:写真AC)

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 近年、若い世代のなかで「管理職」になりたくないという人が増えている――。

 日本能率協会マネジメントセンターが2023年4月に実施した管理職に関するアンケート調査では、

「約77.3%」

が「管理職になりたくない」と回答した。この調査は、企業規模300人以上の管理職(課長・部長・本部長層)と一般社員を対象に行われ、有効回答は管理職1072人、一般社員1116人だった。

 管理職になりたくない理由のなかで最も多かったのは

「自分は管理職に向いていないから」(46.6%)

だった。厚生労働省の調査によれば、従業員に対する比率は

・部長:約3%
・課長:約7%

と、合計しても管理職になれるのは10%程度にすぎない。なりたくないのなら、別にならなくてもよいのかもしれない。しかし、本当にそんなに嫌な仕事なのだろうか。

管理職は「組織の成果に責任を持つ者」

 そもそも管理職の役割とは何か。

 経営学者のピーター・ドラッカーは「マネジメント」概念の創設者といわれており、彼は管理職を

「組織の成果に責任を持つ者」

と定義している。極端にいえば、どのような手段を使うかは重要ではなく、最終的に自分の管轄する組織が求められる成果を実現できればよいということだ。

 実際、多くの経営者は管理職に対して

「どんな方法でもよいから、結果を出してほしい」

と望んでいる。つまり、自分の管轄の仕事や組織のメンバーをうまくやりくりし、会社からの要望や自らの役割を果たせれば、それで問題はないのだ。

成果さえ出せば職務内容は柔軟に変えてもよい

管理職(画像:写真AC)

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 多くの人は管理職という言葉を聞くと、部下の行動や思考を日々観察してチェックし、問題が起こりそうなときには環境を整えたり人間関係を調整したり、動機付けを行ったりするイメージを持っている。

 特に近年はメンタルヘルスの問題も増えているため、まるで“心理カウンセラー”のように部下を細やかにケアしなければならないという印象があり、ある意味

「面倒くさい業務」

だと思われがちだ。

 しかし前述のとおり、管理職は成果を出せばいいので、これらの業務をすべて自分でやる必要はない。もし今の一般的な管理職的な業務が自分に合わないと感じるなら、自分の性格や能力に合った管理職の仕事に変えてしまってもよいのだ。

自由に何をしたって構わない

 管理職は、自分の管轄するチームのメンバーに対して、どんな仕事をさせるかを決める権限を持っている。つまり、自分を含め

「誰に何をさせるのか」

がマネジメントの要点だといえる。

「管理職は孤独だ」
「ひとりで抱え込む」

などと考える必要はなく、部下でも上司でも、周囲の誰でも使って自分がすべきマネジメントを実現すればよい。

 メンバーの立場ではそうはいかない。やりたくないことでも業務命令があればやらなければならない。メンバーは行動を指示されるが、管理職は求められる成果はあるものの、どう行動するかは

「自由」

なのである。

チームでマネジメントを行えばよい

管理職(画像:写真AC)

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 例えば、自分は部下のモチベーションを高めるのが得意でも、ネガティブなフィードバックが苦手なら、その部分をメンバーのなかで

「最も適性のある人」

に任せてもいい。

 また、自分のプレーヤーとしての業務が忙しく、部下からの情報収集やモニタリングができない場合は、無理に抱え込むよりもチームを小分けにし、担当者を付けて1on1ミーティングを行ってもらい、間接的に情報を集める方法もある。

 さらに、マネジメントのなかで、ピープルマネジメント(動機付けや育成、評価など)は自分が担当し、タスクマネジメント(仕事の進捗管理など)は別のメンバーに任せることもできる。管理職の仕事は

「分業できる要素」

が多いのだ。

孤軍奮闘する必要はない

 管理職になると、

「リスペクトされなければならない」
「部下の前できちんとしなければ」

と気を張ってしまうことがある。特に最初に管理職になったときは、余計に肩に力が入ってしまう。

 しかし、今どきの管理職は、ただひとりで陣頭指揮をとり、チームを引っ張るような“けん引型”のリーダーだけではない。

 孤軍奮闘しようとすると、情報が不足して最適な判断ができなかったり、誤った方針を打ち出したりしてしまう可能性がある。だからこそ、現場の最前線の状況を知る部下からの情報や提案を集めながら、チーム全員でビジョンや方針を作っていくことが重要だ。そのまとめ役が、今どきの管理職の役割なのではないか。

徐々に後進の育成をしたくなる

管理職(画像:写真AC)

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 多くの人が管理職になりたくないと思っているのは、実にもったいないことだ。なりたくてもなれない人も多いのだから、もし管理職になるチャンスがあったら、その貴重な機会を生かすべきだろう。

 発達心理学は、人間の発達過程を研究する心理学の一分野だ。特に、個人の生涯にわたる心理的、社会的、認知的な成長と変化を探る。この分野を通じてわかるように、人は年を重ねるにつれて

「後進の育成をしたくなる」

ものだ。中高年がキャリアコンサルタントなどの資格を取得しようとするのも、その影響だろう。特に自動車業界のような製造業では、長期的な人材育成が管理職に求められることが多い。

 チャンスを自分から逃しておいて、中高年になってから「やっぱり管理職をやってみたい」と思っても、手遅れになることもある。自分に向いているかどうかや、やりたいかどうかを考えすぎず、

「まずは試してみる」

という姿勢が大切だ。

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