熱中症警戒アラートが響く夏! 子どもを車に乗せるとき、早めにエンジンをかけるべき理由

気温上昇と熱中症急増

真夏の自動車に乗る女の子(画像:写真AC)

真夏の自動車に乗る女の子(画像:写真AC)

 近年、地球温暖化の影響で、2011年から2020年の世界の平均気温は18世紀後半の産業革命期に比べて1.09度上昇した。このことは「IPCC AR6 WG1報告書 政策決定者向け要約」に記載されている。

 国内では、気候変動の影響で毎年熱中症で緊急搬送される人の数が数万人を超え、死亡者数も高い水準で推移している。その対策として、2020年には関東甲信地方のみを対象に施行された「熱中症警戒アラート」が、2021年には全国に拡大された。このアラートが発表されると、外出を控えるように推奨される。

 しかし、子育て中は外出を控えることが難しい場合もある。例えば、子どもが予防接種を受けるためには、病院が開いている日中に出向かなければならない。このとき、たとえアラートが発表されていても、外出は避けられないのだ。

 高温の中で外出する際、特に子どもをクルマに乗せる場合には注意が必要だ。車内の温度が上昇することで、チャイルドシートのシート部分やベルトの金属部分が高温になり、やけどの危険があるからだ。

 乳幼児は自分で温度を確認できず、熱いと感じても言葉で伝えることが難しい。そのため、大人が事前に何らかの対策を講じて、子どもがやけどをするのを防ぐ必要がある。

では、どのような対策を採れば子どものやけどを回避できるのだろうか。1児の母でもある筆者(小島聖夏、フリーライター)が自身の経験をもとに考察していく。

送迎バスも1時間で40度超

カーエアコンを操作する様子(画像:写真AC)

カーエアコンを操作する様子(画像:写真AC)

 日本自動車連盟(JAF)ではさまざまなユーザーテストが行われており、2012年8月に「真夏の車内温度」についてのテストが実施された。天候は晴れで、気温は35度だった。

 その結果、窓を閉め切った黒色の車両では、エアコンを停止してからわずか15分で「熱中症指数」が危険レベルに達し、車内温度はエンジン停止後30分で約45度に達した。その後も温度は上昇を続け、3時間後には55度を超えたという。

 また、2023年8月にも「真夏の温度?車両の大きさによって差はあるのか」というユーザーテストが行われた。このテストでは送迎用バスとミニバンが使用され、車内温度はどちらも1時間後に40度を超え、3時間後には48度まで上昇した。

 さらに、赤外線サーモグラフィーを用いた送迎用バスの室内温度の測定結果もあり、外気温が37.7度のとき、車内温度は48.0度だった。このときの内装部分の温度は次のとおりだった。

・ダッシュボード:57.8度
・座席の手すり:53.8度
・座席の背もたれ:47.7度

これらの結果から、チャイルドシートのシート部分やベルトの金具も同様の高温になっていると考えられる。

 この高温を回避するためには、早めにエンジンをかけて車内温度を下げておくことが重要だ。こうすることで、車内やチャイルドシートの温度を下げ、子どもがやけどをするのを未然に防ぐことができる。

低温やけどの実態

チャイルドシートに座る乳幼児(画像:写真AC)

チャイルドシートに座る乳幼児(画像:写真AC)

 一般的にやけどは、沸騰したお湯やアイロンなどの高温のものに触れることで起こると思われがちだ。しかし、人は45度以上の温度に触れるとやけどをする可能性がある。特に44度から50度程度のものに長時間触れていると、やけどをする危険性がある。これは

「低温やけど」

と呼ばれ、時間がたってから痛みや水ぶくれが現れることが多い。さらに、子どもや皮膚の弱い人は熱を感じにくい42度からやけどの症状が出る可能性があるため、肌に触れるものの温度には十分に注意する必要がある。

 そのため、チャイルドシートのシート部分などの温度が下がっているか確認せずに子どもを乗せてしまうと、やけどをする危険性がある。また、チャイルドシートには金属が使われていることもあり、想像以上に温度が高くなっていることがある。

 子どもは予期しない行動をすることがあるため、親は子どもの顔や身体、手や足が届く部分の温度を直接触れて確認することが大切だ。

子育て世帯への警鐘

チャイルドシート用日よけカバー(画像:ダイソー)

チャイルドシート用日よけカバー(画像:ダイソー)

 とはいえ、クルマに乗るときは急いでいることが多い。エンジンをかけておく以外に、他に何か方法があるだろうか。

 前述のJAFの「真夏の車内温度」に関するユーザーテストでは、サンシェードを使った車両や窓を開けて風通しをよくした車両でも車内温度の変化について実験されていた。しかし、いずれも温度制御効果が低く、車内温度の上昇を防げないという結果だった。このため、駐車時に何らかの工夫をしても、真夏の車内温度を大幅に下げるのは難しいと考えられる。

 筆者も以前、チャイルドシートにタオルをかけて温度の上昇を防ごうとしたことがあるが、真夏には期待したほどの効果が得られなかった。ただ、チャイルドシート用の日よけカバーなど、しっかりした商品を使えば、ある程度の対策にはなるかもしれない。

 ちなみに、夏の暑い日に知人の小学生の子どもをクルマに乗せたとき、シートベルトを自分でつけるよう促したが、その子が「なんかピリピリする」といったことがある。近くに行って確認すると、高温のままのシートベルトの金具部分が足に当たっていた。今なら乗せる前に熱さを確認するが、そのときは知識が不足していたためそれをしていなかった。

 このように、車内で子どもがやけどをする可能性があることは、一般的にはあまり知られていない。このとき、知人の子どもがやけどすることはなかったが、今思うとゾッとする体験だ。

 国土交通省のウェブサイト「自動車安全総合情報のチャイルドシート」のページには、「取付け時の注意点」があり、「着座時のやけどに注意する」という項目もある。炎天下で駐車しているときには、各部に触れてやけどしないことを確認してから使用するよう書かれている。しかし、この注意点が子育て世帯にしっかり周知されているのかは疑問だ。

 これからも温暖化の影響で、気温の高い日が多くなるかもしれない。チャイルドシートやクルマを購入する際には、車内温度だけでなく、子どもがやけどをしてしまう恐れのあるものにも細心の注意を払うことが、親としての務めではないだろうか。

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