軽スーパーハイトワゴンに「SUV風」デザインが続々と登場している根本理由

秋の新作続々、魅力あふれるデザイン

デリ丸。コレクション(画像:三菱自動車)

デリ丸。コレクション(画像:三菱自動車)

 ホンダは2024年8月22日に、「N-BOX(エヌボックス)」に新しいグレード「N-BOX JOY(エヌボックス ジョイ)」を追加し、2024年秋に発売予定であると発表した。同日に公式ウェブサイトに特設サイトを開設し、純正アクセサリーなどを先行公開した。

 これに先立って、スズキは2023年11月にモデルチェンジを実施した新型スペーシアの「スペーシアギア」のティーザーサイト(製品やサービスの発売に先立って公開されるウェブサイト)を2024年7月24日に公開し、予約注文の受付を開始している。

 両モデルとも9月から順次販売開始となる見通しで、いずれもアウトドアテイストの仕上がりとなっており、従来のモデルとの差別化が図られている。

 本稿では、次々と登場する軽スーパーハイトワゴンにスポーツタイプ多目的車(SUV)テイストを加えたアウトドアモデルの魅力について詳しく掘り下げていく。

アウトドアブームの継続

N-BOX JOYのインテリア(画像:ホンダ)

N-BOX JOYのインテリア(画像:ホンダ)

 アウトドアテイストの「軽スーパーハイトワゴン」として真っ先に挙げられるのが、三菱自動車のデリカミニだ。2023年5月の発売前日までに予約が1万6000台に達し、その後も月販計画の2500台を超える3000台以上を常に売り上げている。好調な販売を維持しているのだ。

 フロントマスクを犬動物(犬)に見立てた「デリ丸。」というキャラクターで、テレビCMに登場し人気を博している。この成功に影響を受けて、ホンダやスズキもアウトドアテイストの新モデルを次々と投入している。

 アウトドアユースといえば、キャンプなどの野外レジャーが思い浮かぶが、コロナ禍を経てもアウトドア人気は依然として健在なのだろうか。デジタルマーケティング事業を展開するクロスマーケティンググループが、全国47都道府県に住む20歳から69歳までの男女5000人を対象に行った「アウトドアに関する調査(2024年)」によれば、キャンプ人口は2年前とほぼ変わらないという。

 過去に宿泊または日帰りでキャンプやバーベキューを行った人の割合は43%で、2022年の50%と比較しても大きな変化はない。最近3年以内および1年以内の実施率にも大きな変化は見られず、特に20~30代の比率が高いことがわかった。

 これらのデータから、近年のアウトドアブームがアウトドアテイストの軽自動車需要を支えているといえるだろう。

防災意識が後押し

スズキ・スペーシアギア(画像:スズキ)

スズキ・スペーシアギア(画像:スズキ)

 では、各社が続々と発表しているアウトドアテイストの「軽スーパーハイトワゴン」の魅力について見てみる。

 まず注目すべきは、広々とした車室空間だ。キャンプなどのアウトドアグッズを楽に積み込むことができるのが大きなセールスポイントとなっている。大きな開口部と低い地上高により、荷物の積み下ろしも簡単だ。また、防汚タイプのラゲッジフロアや撥水(はっすい)加工が施されたシート生地のおかげで、ぬれた荷物や泥のついたものを気にせずに扱えるのも便利だ。

 さらに、キャンプ目的地までの山道などでの走行を考慮して、車高が高めに設定されている。デリカミニの4WDモデルは、最低地上高が約160mmに設定されており、悪路や駐車場の段差を乗り越えやすくなっている。このような高めの車高が「軽自動車のSUV」と呼ばれるゆえんだ。

 また、最近高まっている防災意識も、この種の車の購入需要を押し上げる要因となっている。気象庁が2024年8月8日に発表した「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」によって、防災意識が一段と高まっている。災害時には車中泊がしやすく、冠水や悪路での走破性も高く、避難時に多くの荷物を積める点が購入の動機として考えられるだろう。

 最後に、アウトドアテイスト特有の外観デザインや、メタリックカラーを中心とした多彩なボディカラーもポイントだ。これにより、街中でもアウトドアでもおしゃれに楽しむことができる。

 これらの要素から、アウトドアテイストの「軽スーパーハイトワゴン」の人気はますます高まると考えられる。

新モデルで競争激化

キャンプ・バーベキュー実施率(画像:クロスマーケティンググループ)

キャンプ・バーベキュー実施率(画像:クロスマーケティンググループ)

 軽スーパーハイトワゴン市場では、ホンダのN-BOX、スズキのスペーシア、ダイハツのタントが激しい販売競争を繰り広げている。

 2024年7月の販売台数ランキングでは、N-BOXが1位、スペーシアが2位、タントが3位となっているが、上位3車種の販売台数の差はわずか4000台未満と非常に接近している。

 今後、N-BOXとスペーシアにはアウトドアテイストを取り入れた「N-BOX JOY」と「スペーシアギア」が新たに投入される予定だ。

「三つどもえの戦い」

がどのように展開されていくのか、今後の動向に注目したい。

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